編集部注:Alex FreedlandはMirantisの共同ファウンダー・会長でOpenStack Foundationのボードメンバー。
Nebulaのサービス終了にまつわる最近のニュースは、OpenStack市場の現状が原因でOpenStackスタートアップが苦戦しているという憶測を呼んだ。中にはOpenStackドリームは「生命維持」状態だと主張する記事さえある。
これは真実にほど遠い。現実はと言えば、オープンソースの世界で勝つためには、現在のテクノロジーに投資している多くのVCが知っているものとは大幅に異なる戦略が必要だということだ。
2011年の夏、Mirantisはオープンソース基盤技術のコンサルタントを行う150人のIT企業だった。
われわれは仕事で何回かOpenStackと遭遇し、それを支えるコミュニティーの勢いを見て全面参加する決断を下した。事業を早期に立ち上げるために、われわれはCloudscalingのRandy Biasに連絡を取った。CloudscalingはOpenStackサービスのスタートアップで、OpenStackディストリビューションを作るためのシリーズAラウンドを終えたばかりだった。
「われわれは資金を調達し、今は自分たちの製品を作ることがすべてだ」と彼は言った。「InternapのためにOpenStackをデプロイする商談がある ― 君のところにわが社の下請けをする人員はいるか?」
これはわれわれにとって初めての純粋なOpenStackプロジェクであり、こうしてサービスに焦中することによって、Randyが当初Cloudscalingで目指していたOpenStack製品会社へとわれわれが成長するための基盤づくりとなった。
しかしRandyにとって、VCラウンドを立ち上げることは全く異なる旅の始まりだった。投資家たちにガイダンスに従い、Randyは好調だった数百万ドルのクラウドコンサルタント事業を解体し、Cloudscaling OpenStackを開発した。それはサービスに飢えたOpenStack市場を満足させるには、まだ早すぎる不完全な製品だった。
3年後、RandyはRed Hatが1億ドル近くをeNovanceに支払うのを見た。eNovanceは2011年のCloudscalingと殆ど変わらない規模のOpenStackコンサルタント会社だった。昨年会社を売り、EMC Corporationという静かな海で船の上陸に成功したRandyに心から称賛の拍手を送りたい。
CloudscalingとNebulaはどこで道を誤ったのだろう?彼らは間違った脚本を使ったのだ。典型的なIPベース企業の脚本はこんな具合に進む。
- 一人の天才エンジニアが、差別化できるテクノロジーを作る。ファウンダーとセールスチームが山ほどの契約を取ってきてテクノロジーを実証する
- 会社は、既存流通チャネルを持つ企業に数百万ドルで売られる、あるいは、
- IPOのために大きな調達ラウンドを何度も行って自ら流通チャネルを構築する。
この脚本はイノベーション市場で通用する。VCたちは差別化テクノロジーを部分所有することで、そのテクノロジーに需要が起きた時それをテコに収益化する。
オープンソースエコシステム市場は、挙動が異なるため全く異なる脚本が必要になる。そこでは差別化要因は自分たちが作るテクノロジーの中にはない。それはいつの間にか長い時間をかけて徐々に蓄積された専門技術の中にある。成功した新規参入者はみな(Red Hat、Cloudera、Hortonworks等)同じ脚本に沿っている。こんな具合に進む:
- エコシステムの周辺でサービス契約を販売し、顧客分析データを取得する
- 自分のビジネスが依存しているコードベースに直接寄与することによって、対応する上流コミュニティーへの影響力拡大に注力する(OpenStackでは、誰が貢献して誰が貢献していないかを、Stackalyticsで容易に見ることができる
- 教育プログラムを提供する
- テクノロジーの商品パッケージを追加する
- オプション:そのテクノロジーの上流あるいは周辺に付加価値を構築する
オープンソース企業の設立には、卓越した運用能力と持久力が必要であり、VMwareを倒すビジョンを持った天才ハッカーだけでは足りない。イノベーション脚本で会社を運営するスタートアップとVCは失敗し、専門知識に集中する ― 即ちオープンソース脚本 ― スタートアップやVCが成功する。これが、OpenStack分野でわれわれが目撃したことだ。
迫り来るOpenStackの死というニュースは、大きな見出しにはなるがそこにはエコシステムの現状理解が欠けている。真実を見れば、企業の売上や顧客満足度は着実に伸びている。Red Hat、Mirantis、HP、IBM、Huawei、およびCiscoは、それぞれ独自バージョンのOpenStackを販売して成功を収めている。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)