世界最大の大学組織カリフォルニア州立大学(California State University)は、その傑出して有望なパイロットコースにより、MOOC(Massive Online Open Learning, 大規模オンラインオープン学習)への実験的進出を精力的に拡大しつつある。近く同大学機構は、電気工学コースの反転(flipped)バージョンを提供する大学を、これまでより11増やす。これらの大学の学生たちは自宅でハーバードやMITの講義を視聴でき、また問題を自分で解く体験もする。その対象校の一つであるサンノゼ州立大学(San Jose State University)のパイロットでは、反転クラスにおける履修試験合格率が46%という異例の高率になった。これを見て学長のMohammad Qayoumiは、パイロットを終えて正式コースにしてもよい、と考えるまでになった。
その初等電気回路のコースは、ハーバードとMITのオンラインコースedXから提供された。edXは、大学内部の(正規の学生のための)授業方法論ではなく、無料の一般社会教育としてのMOOCの試みだ。
本誌がこれまで書いてきたように、オンライン教育への取り組みは大学の形を急速に変えつつある。その変容のペースは、教育学者たちによる研究を困難にするほどに速い。edXの理事長Anant Agarwal自身が、その状況を見て“とても信じられない”と言った。
サンノゼのedXコースの例は、大学が退屈で古い講義型の授業から対話的な授業に切り替えたときに経験する結果と同じものだ。たとえばカリフォルニア大学ロサンゼルス校の生物化学のクラスの実験では、講義を捨てた結果、履修証明合格率が約18%上がった。
しかし、一度かぎりの実験における好結果は、それを本番化大規模化した場合の現実を反映しないことが多い。進取の気性に富んだパイロット事業が、あまり熱心でない教師と学生たちによる多人数の一般授業に移されると、良い結果をもたらさないこともありえる。
そこでサンノゼ州立大学は、MOOCのトレーニングセンター、Center for Excellence in Adaptive and Blended Learning(適応型混成学習高度化センター)を設置した。好むと好まざるとに関わらず、MOOCは普及していく。しかも、正しい形のオンライン教育は、今急騰している学生と大学の債務を抑制するための、唯一の方法だ。edXの発表の席でカリフォルニア州副知事のGavin Newsomは、こう言った: “率直に言って、これまでのような形の教育予算をこれからも維持していくことは、とうてい不可能だ”。教育をめぐる巨額な債務は、大学と学生だけでなく、行政にとっても、限界を超えた重荷になっている。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))