カリフォルニア州が刑事司法システムのデータ欠落を埋める法案を可決

カリフォルニア州議会は、刑事司法データ法案AB 1331を可決した。刑事司法記録の質を高め、裁判所が研究者に情報を提供する道筋をつけるものだ。同法案はカリフォルニア州のGavin Newsom(ギャビン・ニューサム)知事が署名すれば成立する。

Robert Bonta(ロバート・ボンタ)議員が起案したこの法案は、犯罪歴記録の「正確性と信頼性を損なっている」データの穴を埋めることを目的としていると、AB 1331の概況報告書に書かれている。

例えば司法省の推計によると、犯罪記録の60%は判事の裁定や量刑といった裁判結果情報が欠落している。このことが無実の人を犯罪者にする可能性がある。さらに裁判前リスク評価には時宜を得た正確な情報が必要であり、わずかな情報の欠落が無実の罪を生んだり、有罪の可能性の高い人物を解放してしまう恐れがある。

カリフォルニア州にはデータ収集の基準がほとんどなく、刑事司法の現状は「著しく分散化」されており、それぞれの組織が自身のデータ収集にのみ責任を持っている、と超党派の刑事司法データ分析団体、Measures for JusticeのMikaela Rabinowitz(ミカエラ・ラビノウィッツ)氏がTechCrunchに話した。このためカリフォルニア州司法府はこれらのシステムを横断して人物を正確に追跡することが困難になっている。

これに対処すべく、AB 1331は法執行機関および裁判所に対して明確なデータ収集・報告義務を課すことを目指している。この法律は法執行機関が容疑者について適切な判断を下し、裁判所はMeasures for Justiceのような組織にデータを提供することを可能にするために考えられている。Measures for Justiceは、国民が刑事司法データを評価し理解する方法を変えようとしている団体だ。

2016年にカリフォルニア州はOpenJustice Data法を制定し、これが一般市民が利用できる刑事司法データプラットフォームの構築へと繋がった。このインタラクティブ・プラットフォームはカリフォルニア州司法府の陣頭指揮によって開発されたもので、同州の1000を超える法執行機関のデータを、たとえばサンフランシスコ警察とロサンゼルス警察のデータを並べて比較するといったことができるようになった。

OpenJusticeプラットフォームは、正しい方向への大きな一歩だったが、十分ではなかった。AB 1331は、今も残る人とプロセス両方に関するデータの欠落を埋めようとしている。

「目に見えないものを変えることはできないし、優れた意思決定はデータと事実がなければ始まらない」とMeasures for JusticeのAmy Bach(エイミー・バック)代表がTechCrunchに話した。「優れた意思決定を行うためには地域や州レベルで優れたデータ処理を行い、外部の研究者が利用できるデータを増やす必要がある。これは実に大きな一歩だ。カリフォルニア州は、最近刑事司法システムを改善する法律を制定したフロリダ州コネチカット州などの先進的な州に仲間入りすることになった」

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国全体の刑事司法改革が最近転換点を迎えている。今年3月、フロリダ州はデータ収集と一般市民による報告プロセスの包括的標準を制定する法律を可決した。コネチカット州は過去数年の間に、死刑を廃止し、少量の大麻を解禁し、恩赦と仮釈放の方法を改定した。そして コロラド州は刑務所の収容人数データを公開した。カリフォルニア州は刑事司法システムのデータギャップを埋めようとする最新の州となった。

「これは極めて大きいフロンティアだと私は思っている」とラビノウィッツ氏は言った。「刑事司法はデータ利用に関して他の公共システムと比べてはるかに遅れている。質の高いデータに必要なテクノロジーについても、意思決定のための研究に関してもそうだ。教育や公衆衛生より大幅に遅れてることは間違いない。刑事司法が重要な政策、政治問題になるにつれ、情報に基づく刑事司法判断に必要なデータを取得することへの関心はますます高まっている」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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