[筆者: Eric Kim, Chi-Hua Chien]
編集者注記: Eric KimとChi-Hua Chienは、Goodwater Capitalの協同ファウンダ。ここは、消費者向けのテクノロジで世界を変えようとする起業家を支援する、起業初期段階のVC企業だ。
一般消費者を対象とするインターネットスタートアップは、資金調達や評価額において長年のブームを経験してきたが、インターネットの巨人たちによる戦略的投資や買収という最近のトレンドはやや風向きが違う。
GoogleのリードによるMagic Leapへの5億4200万ドルのラウンドや、TencentのKoudaiへの3億5000万ドルの投資、AlibabaのTangoへの2億1500万ドルの投資など、このような投資は、後期段階の消費者スタートアップの、資金調達に関する考え方を変えた。何が、このようなおびただしい数の戦略的投資に彼らを駆り立てているのか? それは、単純に、キャッシュだ。
キャッシュ10億ドルクラブ
キャッシュバランス(キャッシュ+短期投資+長期投資)が10億ドルを超える消費者インターネット企業を下表のように列挙してみると、意外なことが分かる。
- この、キャッシュ10億ドルクラブのメンバー企業27社で、バランスシートのキャッシュの総額は2680億ドルになる。
- 半分以上(14社)がアジアの企業で、キャッシュ総額の約1/3(930億ドル)を占め、残る13社の合衆国企業が1750億ドルを占める。
- インターネット企業ではないがこのところますます消費者インターネットに熱心なAppleとMicrosoftとSamsungをこの表に加えると3370億ドルのキャッシュが新たに加わる。
27社の消費者インターネット企業と3社のOS/デバイスメーカー(Apple、Microsoft、Samsung)を合わせて、およそ6050億ドルの戦力が、サイドラインに並んで機会を伺っている。この巨額なバランスシートは、2015年から2016年にかけて、消費者インターネットへのきわめて活発な投資やM&Aを、激しく競い合うだろう。
しかし忘れてならないのは、キャッシュとその国籍だ。合衆国の消費者インターネット企業のキャッシュバランスの67%は、海外の子会社が保有している。AppleとMicrosoftを加えると72%になる。つまり、合衆国企業の300億ドルあまりのキャッシュは、簡単に合衆国国内の投資や買収に動員することができない。
だとするとオファーはアジアから?
一方、太平洋の向こうのアジアのテク企業は、合衆国の成長企業に積極的に投資している。AlibabaのLyftへの2億5000万ドルのラウンドや、TencentからSnapchatへの6000万ドルの支援に見られるように。
最近の初期段階投資、Rakuten/PocketMathやTencent/AltspaceVRの例に見られるのは、アジアの戦略的投資家たちが、リスクの多い合衆国企業に対して積極的であることだ。全地球規模のテク企業の勢力地図は今大きく変わりつつあるから、ここに挙げた例はこれからの大きな動向の氷山の一角にすぎない。キャッシュバランスを詳細に分析してみると、アジアのインターネット企業による合衆国企業への戦略的投資は総額が1730億ドル、これに対して合衆国企業からは1220億ドルにとどまる。
なお、ここで注目すべきは、一部の合衆国企業が社債の巧妙な発行によって自社の海外資金にうまくアクセスしている(AppleとeBayの税金戦略を比較せよ)のに対し、アジアの企業には合衆国への投資に関して、あくまでも自己のサイズという制約があることだ。とはいえ、合衆国のスタートアップは今後、アジアからの戦略的投資に関してより熟知した方がよいだろう。その一部はすでに、シリコンバレーにオフィスを構えている。(以上の分析はAppleとMicrosoftとSamsungを含んでいる)。
分析した30社は多くがイノベーションの活発な企業だが、しかしそれと同時に、イノベーションの芽を外から買うことにも熱心だった(Google + Nest、Facebook + WhatsApp、Apple + Beats、Rakuten + Viber、Yahoo + Tumblr、Tencent + Riot Games、Baidu + 91 Wireless)など。
急速に成長する消費者向けのWebやモバイル企業を抱えている起業家は、独立を維持したいという欲求と、新たな技術や顧客を今すぐ欲しいという需要のある市場の現実を、両天秤にかける必要がある。次の大きな戦略的買収の機会が、アジアからやってきてもおかしくない時代なのだから。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))