クラウドはコンピューティングを驚くほどシンプルにした


この週末私はかなりの時間を割いて仕事場を片付け、何十年分か蓄積されていたソフトウェアを処分した。数十枚もの3.5インチフロッピーとCDを捨て、山ほどの箱とマニュアル ― 旧コンピュータ時代のがらくたども ― をリサイクルに出しながら、私は2015年のコンピューティングがいかにシンプルになったかを再認識した。

ついこの間まで、アプリストアというものはなくソフトウェアは紙の箱に入ってきた。アップグレードは自動あるいはクリックするだけではやってこなかった。その代わりに、人々は最新最高のコンピューティング環境を手に入れるために数年毎に多大な料金を払い、誰もが新しいソフトウェアを自分でインストールする痛みを経験していた。それは退屈極まりない作業だった。

嬉しいことに、ソフトウェアの使用、管理、保守、保管さえも複雑さは単純さに取って代わられた。今や、ソフトウェアの扱いは驚くほどシンプルだ。

私が日常使っているGoogle Docs、GMail、Evernote、Dropbox等多くのサービスは、すべてウェブまたはクラウドで生まれ、箱で売られたことはない。私のMacBook Airにいたっては、古い方法でインストールしようにも、ダウンロード以外にソフトウェアを追加する方法すら備えていない。今日ソフトウェアが欲しい時はアプリストアへ行くかオンラインで検索すれば、殆どの場合にまさしく探していた物が見つかり、多くの場合無料か極く低価格で手に入る。ソフトウェアに大枚をはたいていた時代とは全く対照的だ。

そしてもちろん、今や当然だと思っているクラウドサービスの美しいところは、必要な時、どのデバイスを使っている時でも、ソフトウェアがそこにあることだ。

初期のコンピューティングには、ソフトウェアのインストールという極めて慎重を要する作業が伴っていた。さらに事態を複雑化させていたのは、原本に何かあった時のために、バックアップを作らなくてはならなかったことだ。なぜなら、物理メディアの管理責任は使用者にあったからだ。しばらくすると、時間とお金を費してアップグレードのためにすべてをやり直さなくてはならなかった ― そしてその間ずっと棚にはソフトウェアの箱が積み上がり続けた。

今やクラウドが当たり前だと思っているが、30歳以上の人なら、かつてのソフトウェアはApp Storeへ行くほど簡単ではなかったことをご存じだろう。実際、大容量ディスクやグラフィカルユーザーインターフェース以前のパソコンを覚えている人なら、ソフトウェアを1~2枚の5.25インチフロッピーディスクで走らせることができたことを知っている。

そのうちソフトウェアは膨張を続け、Wordのような巨大アプリをインストールするためには、山ほどの3.5インチフロッピーが必要になった。そう、インストール作業とは面倒なディスクの交換を意味し、途中で何かが起きた時には(しょっちゅう起きた)大変だった。やがて数枚のCD、さらにはDVD1~2枚へと進化して、ずっと扱いやすくなったが、メディア効率が良くなっても、インストールの面倒がなくなることはなかった。

初期のソフトウェアには、詳しい使い方の書かれた紙のマニュアルが付いてきた。Macromdedia Directorのように複雑なソフトウェアともなると、何冊ものどでかい説明書を収納するために巨大な箱に入っていた(事務所の棚で相当のスペースを占めていた)。しかし時代が変わり、常に最新技術を求めるソフトウェア会社たちは、パッケージのサイズと中身を減らせば経費を節約できることに気付いた。紙のマニュアルは徐々にスタートガイドに置き代えられ、巨大な使用説明書はオンラインヘルプまたはPDFに形を変えていった。

時と共に、ウェブとクラウドサービスの進歩によって箱そのものが殆ど姿を消した。

ソフトウェアのインストールが安く簡単になったことで、個人ユーザーとしての私の生活は間違いなく楽になったが、職場では、古くさいエンタープライズソフトウェアと苦闘していた人々による、自宅と同じソフトウェアをオフィスでも使いたい、という極めて正当な要求に基づく一種の革命が起きた。何よりも、クラウドコンピューティングとモバイル端末があれば、我慢する必要すらない ― そしてこの力学によって職場のパワーバランスはシフトされた。誰もが簡単にソフトウェアをインストールできるようになると、IT部門が人々を支配することは難しい。

もはやソフトウェアは、IT部門だけが理解できる高価な魔法の産物ではなくなった。誰にとっても、殆どの機械オンチの人々にとっても、ソフトウェアは数クリック先にある。この使いやすさがコンピューティングを民主化した。われわれは、インストールに苦労したりアプリケーションの使い方を理解するために分厚いマニュアルを読んだりしていたあの時代から、大いなる発展を遂げたのである。

IT部門にとっても、組織内での役割は変わったものの悪いことばかりではない。彼らの生活もシンプルになった。私と同じように、彼らも社内でソフトウェアを管理することの頭痛から解放された。大企業内でのソフトウェア管理は以前より一段と複雑さを増した。

私のコンピューティングスタイルはデスクトップからモバイルとクラウドへとシフトしていったように、変化があまりにもゆっくりと起きると、ずっと前からそうだったように考えがちだ。しかし、仕事場を片付ける作業は私を原点に立ち返らせた。コンピューティングは大々的に変化を遂げ、今やはるかに単純明快になった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


投稿者:

TechCrunch Japan

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