クラスタ管理のMesosphereがデータのスケーラビリティのためにグラフデータベースのOrlyAtomicsを買収

分散プロセス(クラスタ群)の生成と、それらが適正に動くためのリソース管理をデベロッパ/アドミンに代わってやってくれるMesosphereが、分散/並列データベース技術(グラフデータベース)のOrlyAtomicsを、どうやら人材獲得を目的として買収した。OrlyAtomicsの4名の技術者は、ただちにMesosphereのチームに加わる。買収の価額などは、公表されていない。

Mesosphereは、オープンソースのMesosプロジェクトに便利なユーザインタフェイスを着せたサービスで、‘データセンターのオペレーティングシステム’を自称している。このMesosユーザインタフェイスの下では、どんなに複雑大規模なデータセンターでもまるで1台のPCのように簡単に効率的に管理できてしまうことが、メインの売りだ。一方OrlyAtomicsは、スケーラビリティのたいへん高いデータベース技術だ。クラスタ管理とデータベースでは一見互いに無関係なようだが、Mesosphereの協同ファウンダでCEOのFlorian Leibertによると、その下部構造は共通点がとても多い。

まずどちらもルーツがオープンソースで、どちらもC++で書かれている。だからOrlyAtomicsの連中はMesosphereに来たその日から一緒に仕事ができる。しかしLeibertによると、そういうレベルの互換性がすべてではない。プログラミングの技能以上に重要なのが、データ構造のスケーラビリティについて理解を共有することだ。

“大規模なシステムを管理し、大規模な分散システムの稼働状態を管理することは、言うは易く行うは難しの典型だ”、と彼は説明する。彼によると、OrlyAtomicsの連中が、これまでのMesosphereに欠けていたユニークな、そして願ってもないスキルセットを持参してくれたのだ。同社はOrlyAtomicsの知財をひとかけらも買い上げていないが、いずれにしてもオープンソースだから必要ならGitHubにアクセスすればよい。OrlyAtomicsのCEOだったPatrick Reillyは、いずれは同社の技術をMesosphereに合体させたい、と言っている。それはもちろん、データベースのプロジェクトを、という意味ではない。

“自分たちが築いてきたグラフストレージというビジョンには、今でも愛着がある。グラフデータベースによって人びとは、新しいクリエイティブなデータの利用方法に目覚めるだろう。これからはデータベースを作るのではなく、そういう機能をAPI的なプリミティブ集合として作っていく。もちろん、OrlyのオープンソースデータベースをMesosの上で動かしてみたいけどね”、とReillyは語る。

いずれにしても、Leibertによれば、Mesosphereにとって関心があるのはOrlyAtomicsの既存のプロダクトではなく、彼ら独特の技術能力と、彼らとの今後の協働関係だ。“プロダクトはそのままうちで利用できるものではない。むしろ貴重なのは、彼らがそれらを作りながら獲得した専門的知識と技術だ。それは巨大な分散システムが陥りがちな無秩序状態をすっきりまとめることに、関係がある”、とLeibertは言う。

どちらもC++で書かれているので、MesosphereとしてはOrlyAtomicsのチームがこれまでの経験から獲得した技能をMesosphereのプロダクトに持ち込んでくれることを期待している。Leibert曰く、“彼らはレイテンシを抑えスループットを上げることに邁進してきた。うちが大規模分散システムで実現したいと思っている価値も、まさにそれだ”。

Reillyのチームにとっても、魅力はそこにあった。彼曰く、“C++はパフォーマンスが高いから好きだ。Mesosに来てから最初のほんの数時間で、OrlyとMesosのコードを合体させると良さそうなところを、何箇所も見つけた。アプリケーションが何千もの専用コンテナに分散していて、それらが数十箇所ものデータセンターにまたがって動き、しかもそれらの全体がまるで一台の大きなコンピュータへと癒合しているようなMesosphereの世界は、すごくエキサイティングだ”。

LeibertがOrlyとの交渉を始めたのは4週間前だが、でも彼らは過去にすでに数週間、Mesosphereで仕事をした経験があるので、決心も早かった。Mesosphereの社員はわずか27名と少ないので、新しい社員を入れるにしても、相性がきわめて重要だった。

Mesosphereの社員たちは、一般の新入社員の場合と同じようにOrlyのチームを評価し、うまくやっていける、と判断した。

一方Reillyのチームは、Mesosphereのプロジェクトの大きさに感動し、また自分たちがそこに持ち込める貢献にもわくわくしていた。Reillyは曰く、“技術者はチャレンジすることが好きだが、大きな、そして複数のデータセンターの集まりを一台のコンピュータと見立てて、それのオペレーティングシステムを作るなんて、とてつもなくすごい。Mesosphereのコードベースを調べ始めてすぐに、そこがまるで自分の家のように感じた”。

Mesosphereから見ると、Orlyには同社の長期的な目標の実現に欠かせないものがある。“データセンターのためのオペレーティングシステム、という抽象を構築していくためには、データのコーディネーションが何よりも重要だ。彼らは、まさにそれをやっていたのだ”、とLeibertは語る。

オープンソースプロジェクトOrlyAtomicsは、ソーシャルディスカバリサイトTaggedで生まれた。後者は今、全世界に3億3000万のユーザがいるといわれる。Taggedはある時点で、データの大規模なスケーラビリティを実現するためのソリューションが必要になり、そこからOrlyAtomicsが生まれた。それはまさに、今のMesosphereが必要としているものだった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


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TechCrunch Japan

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