サンフランシスコの科学博物館「エクスプロラトリアム」は、精神障害と同性愛も探求する

新装なったサンフランシスコのおしゃれな3億ドルのサイエンス・ミュージアムは、子供たちに「何が正常か?」を問う大胆な行動に出た。エクスプロラトリアムの海岸沿いの一室に、光の屈析とレーザー光線の展示の間に隠れるように、精神医療に関する20世紀の地味な展示がある。精神相談の診断書には、今日では極めて正常であると考えられる行動(同性愛を含む)のために、収容されたり薬漬けにされた不幸な人々の治療について詳しく記されている。「正常とは変化し続ける景観」であると、共同キュレーターのPamela Winfreyが説明する。彼女は子供にも大人にも、人々の慣習を定めるために医療科学がどう役立ってきたかを理解してほしいと言う。

中でも最も興味をそそりかつ議論を呼ぶ人物が「Frank C」で、彼は医者たちが当時「同性愛パニック」と呼んでいたとされる理由で収容された。1942年に兵役を終えた後、彼はあるレストランの外で暴れだした。医者には「私は自分がキングスカウンティー病院にいることを知っている。私は病気ではない。フルトン通りで興奮してゴミをまき散らした。カッとなった。爆発した。怒っていた。バージニアのレストランで皿を割った・・・誰かが私を殺そうとしていると思った」などと話した。

彼の行動に対する治療は、こう説明されている「医師は彼が自身の潜在的同性愛要求を恐れていることを疑った。当時、このいわゆる「同性愛パニック」は妄想症を引き起こすと信じられていた・・・彼は静寂な環境下で薬物による治療を受けた」。

科学的に何が正常かの基準は、長い間精神科診断のバイブル、『精神障害の診断と統計の手引き』(DSM)によって規定されていた。賛否を呼んだ同書の第5版では、アスペルガー障害が新たな包括カテゴリー「自閉症スペクトラム障害」に編入された。「性同一障害」は現在「性別異和感」とされ「個人が体験あるいは表現する性と与えられた性との間に著しい不一致による精神的苦痛」を指す。

“Changing The Face Of What Is Normal”[何が正常であるかの形勢を変える]の展示でもう一つ重要なポイントは、精神障害はありふれていると共に、その多くが一過性であることだとWinfreyは主張する。例えば統合失調症のような疾患は、必ずしも患者を社会的に活動不能にするものではない。そして恐らく最も重要なのは、殆どの人々はいずれ精神障害を体験するか、精神障害患者と近しくなるということだ。「この展示は、こうした敏感な主題に安全な形で触れることのできる一つの方法」だと彼女は説明する。インターネット活動家、Aaron Swartzの自殺から間もない今、精神障害はタイムリーであり考えさせられる話題だ。

このミュージアム自体の影響力は軽視できない。国を代表する科学博物館として、全米の展示物の表舞台となっている。当局によると、同館はサンフランシシコ湾地区最大の教員開発組織であり、移動展示は1.8億人以上が閲覧している。

望まれるのは、エクスプロラトリアムのDennis Bartels館長も言うように、「実際に自分で考える人々」を生み出すことだ。

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(翻訳:Nob Takahashi)


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TechCrunch Japan

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