サーバーを粘液に漬け込んで地球を救うSubmerの新材料技術

デジタル技術は今や世界経済の中枢神経系であり、その機能を、世界中の企業の稼働を維持するために大量の電力を猛スピードで消費する、巨大なデータセンターに依存している。

データセンターの稼働を維持するだけでなく、すべてのデータを収める膨大な数のサーバーを空調の効いた環境に置いて効果的に運用するためには、巨額の冷暖房費用を必要とする。

企業が自分たちのエネルギー消費を意識してその炭素排出量を減らそうとすると、もっと少ないエネルギーでサーバーを動かす方法を見つけなければならない。そこに、Submerが登場する。

このスペインの企業は、サーバーを保存し冷却する新しい方法を開発した。基本的にそれは、サーバーを同社の創業者たちが設計した環境親和性の良い粘液に漬け込み、それらを特製の容器に保存する。同社の創業者たちによると、この方法はエネルギー消費をを50%減らし、水の使用量を99%、スペースの使用量を85%減らす。

Submerのお話は、実は拒否から始まる。同社を創業したPol Valls氏は元プログラマーでエンジニア、そして彼の義兄弟のDaniel Pope氏は、のちにTelefonicaに売ったデータセンターを経営していた。

4年前に二人は、データセンターをもっと効率的に動かすための方法についてブレーンストーミングを開始した。彼らは、自分たちのさまざまな人脈を辿って、エンジニアや材料科学の技術者の話を聞き、無毒で不燃性で生分解性の素材を開発した。そして、その粘液を収めたコンテナにサーバーを沈めれば、もっと効率的に運転できると考えた。

自分たちの名案に感動した二人は、このアイデアをY Combinatorに売り込んだ。しかし選考の最終ラウンドまでは行ったが、結局、YCの早期アクセラレーター事業に入れなかった。

Valls氏はこう言う: 「当時はクレイジーなアイデア以外には何もなくて、クラスには入れなかったが、面接には通ったんだ」。

二人は、退職した熱力学工学の技術者の協力を求め、最初のプロトタイプを三つ開発した。そして6回の試行ののち、実際に商品になりそうな製品に到達した。

液体でサーバーを冷却するというコンセプトは、Submerの独占ではない。Microsoftは最近、スコットランドの海岸で行った実験の結果を公表したが、そこでは海水にサーバーを沈め、自然環境を利用してハードウェアを冷却し保存した。

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Valls氏によれば、Microsoftのやり方はおもしろいけど、データセンターの新しいインフラストラクチャ技術が対応すべき重要な問題を解決していない。

まず、コンピューティングはリアルタイムの作動を必要とするアプリケーションになるべく近いところで行われる必要がある。5Gのネットワーキング技術も、スマートカーも、そのほかのイノベーションも、すべてそうだ。

Valls氏によると、「ハイパースケールの連中やデータセンターは今、インフラストラクチャを都市の中心に移動して通信の遅延を減らそうとしている。遅延は、計算とそのユーザーがそれぞれどこにあるかに依存する。低遅延のアプリケーションは、計算が都市の中心に近いことを今後ますます必要とするだろう」。

Submerの方式には十分な説得力があるので、同社はスウェーデンのインパクト投資企業Norrsken VC(NPO Norrsken Foundationの投資部門)とJane Street Capitalの引退した共同創業者Tim Reynolds氏がリードするグループから、およそ1200万ドルの資金を調達できた。なおNorrskenは、ヨーロッパのフィンテックユニコーンKlarnaの共同創業者の一人が創立し、金融のインクルージョンと持続可能な開発において国連の持続可能な開発という目標を推進する技術とサービスにフォーカスしている。

そのNorrsken VCの投資マネージャーAlexander Danielsson氏はこう言っている: 「データセンターは人類の進歩の原動力だ。コア・インフラストラクチャとしての彼らの役割は今やこれまで以上に明白であり、AIやIoTのような新興技術がコンピューティングのニーズを増大し続けている。しかしながら、その業界の環境フットプリントは、人びとが不安を抱くほどの大きさで成長している」。そこでDanielsson氏は、Submerのソリューションに期待している。

強力な説得力は業界の規模にもある。Global Market Insightsのデータによると、データセンターの市場は近く250億ドルに達する。

画像クレジット: Submer

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

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