TikTokをはじめとするショートムービーアプリの台頭には、音楽が中心的な役割を果たしている。この人気の高まりの中で果実を収穫しようとしているのは、ショートムービープラットフォームばかりではない。音楽の著作権を持つ人たちも、ユーザーが作ったちょっとしたショートムービーに使われている無数の音楽から、利益を引き出そうとしている。
著作権のある音楽を検出するには、レコードレーベルであれパブリッシャーであれ、音響指紋と呼ばれる技術に頼らざるを得ない。現在、そのツールで先駆者的な存在は現在はApple(アップル)が所有するShazam(シャザム)だ。
北京とデュッセルドルフに拠点を置く創設5年目のスタートアップであるACRCloud(エイシーアールクラウド)は、Audible Magic(オーディブル・マジック)やNielsen(ニールセン)が所有するGracenote(グレースノート)(Nielsen記事)などと競合しながら、このサービスを提供している。同社は、数百万曲を収納する参照データベースを使い、ターゲットとする曲の「指紋」またはID(決め手となるテンポや音調などの特徴)を素早く照合できる。
ACRCloudは、提携関係が秘密であるため社名は明かせないものの、数社の西側の最大手クラスの音楽レーベルによる著作権の使用状況の監視を手伝っている。レコードレーベルは、ACRCloudの自動コンテンツ認識(Automated Content Rcognition、ACR)アルゴリズムを利用して、ラジオやテレビの番組で流される曲、YouTubeやTikTokなどのプラットフォームでユーザーが作ったコンテンツで使われている曲、またはどのようなサービスであれ、著作権者に代償を支払うべきものを監視している。
知的財産を監視するのは、パブリッシャーやレーベルばかりではない。コンプライアンス遵守の目的で、放送局やUGC(ユーザー作成コンテンツ)サービスもまた、自身のチャンネルで流される曲の監視を積極的に行っている。
生まれたばかりのショートムービー業界では、大手レーベルは天文学的な額の一律料金をUGCプラットフォームに課すのが普通になっていると、ACRCloudの共同創設者Tony Li(トニー・リー)氏は話す。そしてその料金は、実際の利用のコストに比べて不釣り合に高額だという。その経費の削減しようと中国の大手ショートムービーアプリ企業数社は、最近になって、ACRCloudの音響指紋アルゴリズムを利用してユーザーが動画に使った曲を記録するようになってきた。
その一方で、小規模な著作権所有者やレーベルは、使われている音楽に著作権があるか否かを自動的に判別するシステムを持たないため、著作権料を徴収できずにいる。
そこで役に立つのがコンテンツ識別だ。「UGCプラットフォームは、音響指紋サービスを使って著作権料報告書を作成すれば、UGCプラットフォームにも著作権所有者にも、音楽の利用状況が透明化されます」とリー氏はTechCrunchに話した。
UGCサービスは、盗用が発覚すれば莫大な罰金を課せられる。今年の初め、音楽パブリッシャーとソングライターのグループは、著作権侵害でTikTokを訴えると恐れがあると報じられた(Financial Times記事)。TikTokの親会社ByteDance(バイトダンス)が音楽のライセンシングを強化(Billboardの記事)し、ビッグレーベルに依存しないで済むよう独自のアーティストの開拓に乗り出したと聞いても別段驚くにあたらない。
もうひとつ、よく知られている音響指紋の市場事例に音楽認識がある。Shazamが先陣を切って開発した技術だ。2012年から2014年までリー氏はそこで働き、中国進出を手伝っている。Huawei(ファーウェイ)、Xiaomi(シャオミ)、Vivo(ビボ)などのスマートフォンメーカーは、ACRCloudの音楽認識技術をデバイスに組み込んでいる。
リー氏はずっと音声技術の世界にいた。中国のShazamで少しだけ働いていた以外にも、彼はファーウェイのアフリカ市場での着信音事業に携わっていたことがある。リー氏は、これまで、ACRCloudのために外部の資金を調達したことがなく、従業員はわずか10人と常に少数精鋭のチームをまとめている。
画像クレジット:ACRCloud
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(翻訳:金井哲夫)