シード期の資金調達はグローバルで行う時代になっている

CB Insightsによると、米国におけるシード期の資金調達件数は2018年に4年連続の減少となった。ディールの件数がどんどん落ち込む傾向は続いていて、その一方でディールの平均サイズは大きくなっている。これは新たな常態と言ってもいいだろう。しかし引き続き莫大な額の余剰金があり、かつてなく多くの資金がそこら中にある。

アーリーステージのスタートアップの起業を繰り返している創業者と同様、新たな起業家にとってこうした状況の変化は、どのように、どこで、誰から初期資本を調達するかに大きな影響を及ぼす。過去においては、シード期の資金調達はしばしば企業のアイデアに対して数十万ドルを投資するローカルのVCやエンジェルを探すことだった。実際の魅力や、ターゲットマーケットからのフィードバックというより、誰を知っているか、どこに立地するかという要素が大きかった。

しかし最良の投資ディールをめぐる競争が激しくなるにつれ、シリコンバレーのレガシー投資家はいま、世界中のスタートアップへの投資を模索し始めている。シリコンバレー外で操業している起業家には潜在的金鉱のようにみえるかもしれないが、創業者は投資家たちがスタートアップ、特に彼らの本拠地外のスタートアップについてどのように考えているかを理解する必要がある。

投資家が海外から問い合わせてきたときのために、起業家が知っておくべき3つのことを以下に挙げる。

チームの分散はもはや不利ではないが、マーケット近くに立地する必要がまだある

これまでの大多数の考え方は、スタートアップがうまくやっていくにはシリコンバレーか別の米国内のテックハブに立地する必要がある、というものだった。結局、投資家や才能ある人がいるのは米国なのだ。しかしながら、必ずしもそうではなくなってきている。確かに企業のビジネス面では米国に足がかりを持っておくのはまだ必須で、これは米国には多くの潜在客がいるからだ。しかしチームの分散は多くの投資家にとってもはや「リスク」ではない。

イスラエルのようなマーケットが優秀なテック人材を輩出してきたのは周知の通りだ。本部と創業者少なくとも1人(通常はCEOだ)を顧客や投資家に近い米国に置き、その一方でエンジニアリングのチームの大半をイスラエルに抱えている、多くの成功したスタートアップの例を我々は見てきた。

用心深い投資家はまだCEOを米国マーケットに置くことを企業に求めるだろうが、しかしそれはR&Dチームをスタートアップの本国に置いておけない、ということではない。これは、R&Dチームとともに本国に残る他の共同創業者やCTOがすべてをコントロールするのに必要なリーダーシップのスキルを持ち、その一方でCEOが米国の本部で事業を構築する、ということを意味している。

投資家はローカル共同投資家に頼りながら案件を探している

シリコンバレーのスタートアップの企業価値はここ数年うなぎ登りだ。ほぼ毎日のように5000万ドル超の資金調達が発表され、これに伴い企業価値も膨らんでいる。資金調達の熱狂は、資金を調達した企業だけでなく、小さなスタートアップにも大きな影響を与えている。シリコンバレーですさまじい資金獲得競争が展開され、多くのシード期の投資家は他のマーケットの過小評価されている起業を探し、資産の増大を抑えている。

最良の投資家が必ずしも大きいところは限らない

米国外のスタートアップの企業価値は概して小さく、初期に小切手を切ったりかなりの企業価値に吊り上げたりする大規模のVCファンドから圧迫されている投資家にとっては最良の機会となる。一般にレートステージの投資家はイスラエルや欧州など米国外のディールで“ギャンブル”をするが、競争によりシード期の投資家はアーリーステージの機会を探ることを余儀なくされている。

その結果、シード期のファンドは外資との共同投資にこれまでになくオープンになりつつある。上で述べたように、投資家はホームマーケット外のディールに目を向けているが、ファンドは米国外にはまだそんなに目を向けていない。選ばれたディールがいまさに始まろうとしている。海外マーケットで最良のディールを見つけるために、米国のファンドは、すでにディールを経験し地元のスタートアップ業界の裏表を知っている地元のVCとの協力を往々にして模索している。たとえ海外であっても彼らはしっかりしたプロセスを求めている。

すべての投資家が価値を付加するわけではない

創業者としては、誰から資金を調達するかは大きな問題だ。馴染みのない投資家から資金を調達するのはメリットがあるだろうか、それとも失敗の元になるだろうか。彼らはどう関わるだろうか。

スタートアップの創業者は投資家がもたらす資金以外の価値について長期的に、そして真剣に検討しなければならない。もし投資家が会社の日々の運営から除外され、会社が直面している困難に関知しないのなら、彼らを含める意味は何になるだろうか。

最近、大きなファンドによるシードレベルへの投資ラッシュが見られ、それらは長期的な価値やサポートを保障することなく多額の資金を提供している。この新たな“数撃てば当たる”的アプローチにより、こうした数十億ドル規模の投資では大型ディールのような注意を払わない。

最も良い投資家は必ずしも大規模の投資家とは限らない。その代わり、最良の投資家は事業が成長するのを実際にサポートするために常に価値を付加する。そして彼らはプレシードとシード期の企業への投資にフォーカスする。彼らは潜在的な顧客やパートナーにつなげて、新マーケットなどへのドアを開いてくれるだろうか。問題を乗り越えるとき実際にサポートしてくれる投資家は誰だろうか。誰がパートナーになるだろうか。

すべてのベンチャーキャピタルのように、シード期の投資は有意義に変化している。少なくとも投資先探しという点では、かつてローカルで、その地域だけで完結していたプロセスがいまはグローバルビジネスになっている。にもかかわらず、大半の投資家が、投資先の企業がビジョンを実行するのを真にサポートできることを確かめるために、創業者/CEOと社の本部が身近なところに存在することを求めている。

イメージクレジット: Kristin Lee / Getty Images

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【編集部注】著者のShuly GaliliはUpWestの設立パートナー。

(翻訳:Mizoguchi)

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TechCrunch Japan

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