ジェンダー差別疑惑を払拭、アップルが配偶者とティーンエージャーのための「Apple Card Family」を発表

Apple(アップル)は金融サービス巨人としての地位を徐々に確立しつつある。ユーザーの支払いカードを保管するデジタル・ウォレットを作り、独自のApple Card(アップル・カード)を2019年に提供開始した。米国時間4月20日の発表イベントで、Appleはその物語に新たな章を書き加えた。Apple Card Family(アップル・カード・ファミリー)は、パートナーや配偶者が共同でカードを保有し、13歳以上の家族にもApple Cardを使わせることができる。

Apple Card Familyは5月にまず米国でスタートし、ユーザーは最新バージョンのiOSにアップデートした後使えるようになる、とAppleが本日発表した。

発表のタイミングは興味深い。先月Appleおよび提携先のGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)は、Apple Cardの利用限度額などにおけるジェンダー差別疑惑を払拭したApple Cardが発行されて以来続いていた捜査の結果だ。

裁定の中で規制当局は、Appleの疑いは晴れたものの、この事例は信用度スコアにおける地域固有のジェンダーその他の差別、中でも配偶者とパートナーに関わる問題を浮き彫りにするものであると指摘した。

その意味で、この日の発表は驚きではないとする向きもあり、遅すぎたという人もいるだろう。

このサービスの発表は、問題を解決してそのストーリーを強調し、公正に行動する意志を、規制当局が察知するより早く正式に発表しようというAppleの努力を感じさせる。

「[Apple Card発行]当初に私たちが気づいたことの1つが、この業界では1枚のクレジットカードに2人の利用者がいる時の信用度スコア計算に公正さが欠けていることでした」とCEO Tim Cook(ティム・クック)氏が本日語った。「1人が良い信用履歴の恩恵に預かっているのに、もう1人は違う。私たちはこのしくみを再発明したかったのです」

(ちなみにこれは、別のレベルでも驚きではなかった。iOS 14.5のデベロッパー・プレビューは、AppleがApple Cardの複数ユーザーサポートを準備していることを暴露していた。成人の共同名義や家族が利用するための基盤づくりだ)

Cook氏が説明したように、配偶者やパートナーは利用限度額の共有と統合が可能になり、アカウントに関して同等の権利を持つ。「信用度の平等」構築のためだ。

「このソリューションは財政の公正化を後押しするものであり、ゲーム・チェンジャーです」と同氏は言った。実際、パートナーの1人に未払い負債があったり、債務不履行があったり、収益力に違いがあるような場合、そもそもパートナー同士が実際に財産を共有していれば、新しいしくみは収益力を高い側から他方に移す手段になる。これは理にかなったものであり、正直なところ遅すぎたといえる。

Apple Cardを13歳以上に使わせる際、限度額を設けることが可能で、ほかにも使い方に関する制御ができる。

これまた賢明な動きであり、Appleが全ユーザーのプライバシー・コントロールとデバイス毎のペアレンタル・コントロールで自身に「責任ある」テクノロジー企業の役割を与えてきたことの延長として、さらに新たな視点を加えて教育的ツールになろうとしている。

多くの親たちが、子供達の経済感覚を養うためにテクノロジーとアプリに目を向けている今、Appleがこの取組によって自身をパートナーとして位置づけようとするのは理にかなっている。

家族がより公平な方法で財政を管理できるようにする一方で、もちろんそこにはビジネス寄りの戦略がある。これによってAppleは、Apple Cardを使う潜在ユーザーのもっともっと大きな基盤を得る。多くのユーザーがDaily Cash(ウォレットのApple Cashカードで購入した金額の3%が毎日キャッシュバックされる)などのサービスを使い、カード番号もCVVセキュリティー・コードも有効期限も署名もない安全なチタン製Apple Cardを手にするようになる。

ちなみに、現在どれだけの人数がApple Cardを使っているのか、よくわかっていない。Cook氏は、2020年3月時点で310万人以上が使っていると推定されていたApple Cardを、「史上最も成功したクレジットカード発行」とだけ言った。

カテゴリー:
タグ:

画像クレジット:Apple

[原文へ]

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。