スタートトゥデイをリードに、ニューヨークのファッションEC「Material Wrld」が約10億円を調達

Material wlrd_top

Material Wrldは本日、日本大手ファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイニッセイ・キャピタルから総額900万ドル(日本円でおよそ10億円)を調達したことを発表した。スタートトゥデイがリード投資家を務めた。Material Wrldはアメリカでハイブランドのファッションアイテムを買い取りサービスを展開している。Material Wrldは専用のデビットカードを発行していて、買取額はユーザーのカードに入金する仕組みを取っている。Material Wrldが目指しているのは、ファッションアイテムが不要になったらすぐ捨てるのではなく、長い間使われて循環する仕組み作りだ。Material Wrldの共同ファウンダーである矢野莉恵氏に今後の展望について話を聞いた。

 

card

Trade-In Card

不要になったファッションアイテムを処分するのは手間も時間もかかる。Material Wrldでは、ネットから簡単にアイテムの引き取りと買い取りを依頼できるサービスだ。ユーザーはまずMaterial Wrldの引き取りキットを注文し、それにファッションアイテムを入れてMaterial Wrldに送付する。Material Wrldはアイテムの査定額をユーザーに提案し、ユーザーが合意したら支払う流れだ。ここまではネットのブランド品の買取サービスや物理店舗が行っているのサービスを変わらないように思うかもしれない。Material Wrldの特徴は、ファッションアイテムの買取金額は現金での支払いではなく、専用のデビットカードに入金されることだ。ユーザーはそのデビットカードを指定の店舗で使用することができる。Material Wrldが「Trade-In Card」と呼ぶこのプリペイド式のデビットカードは、オンラインバンクのDiscoverと協力して発行しているものだ。このカードは、Discoverのネットワーク上にある700店舗以上の指定ブランドやショップ、ECサイトで利用することができる。

Material Wrldは不要になったものを処分するのではなく、再利用を促したい考えだ。昨今、ファッションアイテムの低価格化が進み消費者はファッションアイテムを手に入れやすくなった。ECサイトも充実し、商品も1時間で受け取れるになってユーザーに消費を促しているが、使わなくなったものをどうするかの部分はまだ何も変わっていないと矢野氏は指摘する。Material Wrldは、まだ価値のあるアイテムをユーザーが気軽に売れる場を提供することで、他の人がそれを有効活用し、捨てられるアイテムを減らしたい考えだ。

だが、それだけではファッション業界側の意識をも変えるには足りないと矢野氏は考えている。ブランド側は偽物が横行するなどブランドのイメージに悪影響を及ぼしかねないため、中古品売買を認めるのに抵抗があるからだ。Material Wrldでは二次流通市場における商品の品質を担保し、さらに二次流通市場からファッション業界に利益が還元できる形にすることで、ファッション業界の協力も得られやすくなると考えている。実際のところユーザーはカードに200ドル分入っていると、その2.5倍ほどの金額を新たなファッションアイテムの購入に当てていることが分かってきたという。二次流通の利益が還元できることが分かれば、「Trade-In Card」の利用できるショップが増えることにつながり、ユーザーの利便性が高まるとともに、ファッションアイテムはより長い期間使われる良い循環が生まれるだろう。「CSR活動の一環で使わなくなったファッションアイテムの回収を行う企業も増えてきましたが、Material Wrldは持続可能な形でアイテムが再利用されるシステムを作ることを目指しています」と矢野氏は話す。

矢野氏は前職でCoachのデジタルマーケティングに従事していた経験を持つ。もう一人の共同ファウンダーであるJie Zhengは、Ralph LaurenでECサイトの立ち上げに携わっていた。2人はハーバードビジネススクールの同級生で、2012年にMaterial Wrldを立ち上げた。現在、買取の対象ブランドは150以上で、ユーザーの平均買い取り価格は2万円ほどだそうだ。2015年の売上は前年度の13倍になったという。

今回の資金調達では、ファッションECを運営するスタートトゥデイがリード投資家として参加している。スタートトゥデイもブランド古着の販売、買取サービス「ZOZOUSED」を展開しているため、彼らを戦略投資家として迎え、オペレーションの効率化などのノウハウを共有できることは、Material Wrldの事業展開に心強いと矢野氏は話す。

Material Wrldはブルックリンの倉庫街にオフィスを構え、チームは現在33名だという。現在は買い取った商品はMaterial Wrldが運営するECサイトThe WRLDとeBayなどを通じて販売しているが、今後は販路を統合し、さらに新品のファッションサイトも扱うECサイトへと移行する計画だという。6月を目処に開発を進めていると矢野氏は話す。

the world

ECサイト「THE WRLD」

「女性ファウンダー」「ファッションEC」「ブルックリンの倉庫」と言えば、アン・ハサウェイ主演のヒット映画「マイ・インターン」の世界そのものだ。Material Wrldでも現在インターンを含め、採用を強化しているという。ロバート・デ・ニーロでなくても応募可能だ。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。