国家安全保障局がVerizonネットワークの全通話記録を収集していたことが暴露されて以来、オバマ大統領の最も熱心な支持者たちでさえ、彼が透明な政府を目指していることへの信頼を失いつつある。忠実な民主党員でインターネットの発明者、アル・ゴア元副大統領は、NSAの大規模なスパイ計画を「不愉快なほど常軌を逸している」と指摘した。
アメリカ人は、市民を守るための必要悪を常に受け入れてきたが、政治的動機によるセキュリティー・スキャンダルの不穏な傾向が、民主主義における機密の正当性への信頼を崩壊させた。その結果、ひどく陳腐化したこの国のサイバーセキュリティー法の改訂においても、議会は十分な支持を得られていない。
秘密主義は安易なプライバシー侵害のための無制限なフリーパスではない。政府は少なくとも一定期間ごとに、善が悪を上回っていることを証明する必要がある。残念ながら、大がかりなスパイ作戦が意図した効果を上げている証明を、われわれは殆ど見せられていない。、
昨年、珍しく世界を驚かせたWall Street Journalの論説記事で、オバマ大統領はサイバーセキュリティー法改正を支持するべく、自らの論点を証明するために架空の事例に頼らざるを得なかった。
「先月私は閣僚、国土安全保障、情報、および国防省のトップらによる緊急会議を招集した・・・未確認のハッカー集団が、恐らく地球の裏側から、わが国の交通、水道その他の最重要基盤システムの殆どを運営する、民間セクター企業のコンピューターネットワークに侵入した。幸い、先月のシナリオは単なるシミュレーションだった」と彼は書いた。
しかし、メディアの自由に与える害の方が、侵入による利益なるものより大きいという証拠は数多いようだ。Wikileaksの情報源、Bradley Manningの裁判にまつわる秘密主義の程度は不可解なほどだ。殆どのジャーナリストは訴訟書類の閲覧を拒否され、テープ起こしもなく、ある政府レポートでは判事の名前すら編集されていた。
「私には理由が思いあたらない」と、イエール法学校の軍法史専門家、Eugene Fidellは言う。
Fidellは私に、悪意があるとは思わないが、関与した軍上層部は、世論の価値や記者が仕事をするために何が必要かを理解していない、とは思うと語った。「これは日々の報道活動にとって極めて有害だ」。
事例はこれだけではない。 失敗したアルカイダ爆破計画の情報を誰がリークしたかを突き止めるために、AP通信社が数週間にわたって盗聴されていたことが暴露された後、オバマ大統領はジャーナリストを保護する新しい命令を発行し、「リーク調査が原因で、政府の説明責任を維持しているジャーナリズムの調査能力が損われる可能性を憂慮している」と語った。
われわれにはこれらのスキャンダルの意図も全貌もわからないが、安全保障機構の中に、報道機関や第三者による監視を尊重しない風潮があることは明らかだ。
そして信用の失墜は、強く求められているサイバーセキュリティー改正の妨げにもなっている。国は未だに、最重要基盤(水道施設、電力システム、核施設等)を保護するための最新かつ包括的計画を持っていない。ある監査では、ポルノを見ていた従業員が、不正なソフトウェアを脆弱なミサイルサイトに誤ってダウンロードしたことが発覚した。
今年不成立となったサイバーセキュリティー法案(CISPA)がそうだったように、議会がセキュリティー改正案を通そうとするたびにプライバシー対安全保障の議論に錯乱され、また重要な保護のない一年を迎えることになる。
上院のテクノロジーおたく、Ron Wyden議員(CrunchGov Grade: A)は、国のスパイ計画に透明性の向上と監視の強化を求めたが、NSAは、無実のアメリが何人標的にされたかを推定するという彼の要求さえも拒否した。
国家の安全は重要だが、絶対ではない。もし、侵入的スパイ行為が必要であるという証拠がないのなら、その合憲性は大統領が正当化に用いた事例と同じくらい架空である。
[画像提供:Flickerユーザーのaussiegall]
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(翻訳:Nob Takahashi)