スペイン企業主導の培養肉研究Meat4Allに欧州連合が3.3億円拠出

欧州の研究・開発資金を支える枠組みHorizon 2020にスペインのバイオテック企業が主導する培養肉研究プログラムが選ばれ、270万ユーロ(約3億3000万円)が贈られた。「Meat4All」という名称の共同プロジェクトは、欧州の公的資金が注入される初の培養肉研究となる。これは、欧州の議員たちが培養肉に「事実上」コミットしていることを示しているものと受け取れる。

欧州委員長のUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)氏は、グリーン・ディールを欧州圏の主要施策としていた。長期的には2050年までに欧州を「クライメート・ニュートラル(温室効果ガスの実質排出量がゼロのこと)」にすることを目指している。しかし、現在展開されている工場式の畜産は温室効果ガスをかなり排出している。つまり、欧州の食品生産方法や食品について見直さなければならない。再生可能エネルギーへの投資の増大や、建物の断熱(こちらも欧州委員会が約束しているものだ)だけでは環境問題の目標達成は難しい。だからこそ、代替肉(人工培養肉あるいは植物ベースのプロテイン)をめぐってイノベーションを起こそうとしている欧州内の企業にとって成長チャンスがある。

Meat4Allプロジェクトには8月初めにHorizon 2020の助成金が贈られた。しかしいま発表されたばかりだ。豚を屠殺しない細胞ベースのEthicameatというプロダクトを2017年から生産しているサン・セバスティアン拠点のBioTech Foods(バイオテック・フーズ)がコンソーシアムを率いている。

バイオテックのサプライヤーであるフランス企業のOrganotechnie(オルガノテクニー)も参加している。

プロジェクトの目的は「競争力があり持続可能、そして消費者重視の動物プロテイン代替源の工業化と商業化」であり、培養肉生産を増やすテクノロジーにも焦点を当てている。またマーケット浸透、培養肉をさらにマーケットに投入するための安全評価なども含まれる。

BioTech FoodsのCEO、Iñigo Charola(イニーゴ・カローラ)氏は声明文で次のようにコメントした。「我々のMeat4Allプロジェクトが欧州連合からの支援を得たことは、BioTech Foodsのチーム全体、そして当社のパートナーOrganotechnieにとって非常に嬉しいものです。欧州が培養肉に積極的に関わるのは今回が初めてになります。培養肉は私たちの将来の食糧として重要なものとなり、それはいま機関も認めるところとなっています」。

コンソーシアムの主目的には、キログラムからトンまで対応できる培養肉生産の拡大、大量生産時の栄養価の維持、動物血清からの培養細胞分離方法の獲得、遺伝子組み換えされていない動物細胞の使用などがある。

そのほかにも、競争力のあるプロダクトの開発、マーケット需要を探るための味覚試験の実施などもある。

「このテクノロジーをさらに発展させることでMeat4Allは新たな開発部門を創造するでしょう。競争力を育成し、欧州域内での成長の創造により欧州の産業がマーケットの有望性を生かすことができます」「肉加工業界に供給するのに必要な生産能力を確保することが課題となります」とプレスリリースに書いている。

カテゴリー:フードテック
タグ:Meat4All

画像クレジット: ROBYN BECK/AFP/Getty Images) / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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