ソシャゲのノウハウで毎月200%成長、住まいのまとめサイト「iemo」が資金調達

住まいに特化したまとめサイトとして2013年12月にローンチした「iemo(イエモ)」。当初は投稿された写真をスクラップするユーザー向け機能が中心だったが、このたび建築家やリフォーム業者、インテリアメーカーといった事業者向けの「ビジネスアカウント」を開設。無料でiemoに自社の写真を掲載できるようにした。今後はiemoでユーザーと事業者が交流できるソーシャル機能を拡充し、両者のマッチングによって収益を得る狙いだ。

iemoは住まいや暮らしに関する2万点以上の写真の中から、気に入ったものをクリッピングしたり、まとめ記事を作成できるサイト。まとめ記事は「マスキングテープでリメイク10選」「狭い空間を克服するレイアウトアイディア」など2500本以上が投稿されている。同じような記事は他のサイトでもありそうだが、記事を投稿できるのは審査を通過した「インテリアリテラシーの高い」ユーザーに限定しているのがポイントだという。iemo共同代表取締役CEOの村田マリは、「主婦層に刺さるインテリア雑誌のリプレイスを狙っているので品質管理に力を入れている」と話す。

事業者のスマホ対応を後押し、ユーザーとのマッチングで収益化へ

9日に開設したビジネスアカウントは、建築家やリフォーム業者、メーカーなどが施工事例やプロダクトの写真をiemoに無料で投稿できるようにするもの。現時点では国内外の約30社が登録。事業者は、自ら投稿した写真がクリッピングされたり、まとめ記事の一部として使われることで、ユーザーへの露出機会が増えることになる。また、写真を投稿するだけで、iemoが対応するスマホやタブレット、PCに最適化したポートフォリオ写真ページを作れることもメリットなのだという。

村田マリによれば、住宅業界はスマホへの最適化が遅れていて、「PCサイトだけはかろうじて作っている」という状況。ビジネスアカウントを作れば、事業者の写真を含むまとめ記事を通じて、スマホでリフォームに関する情報を収集する30〜40代の潜在顧客獲得につながると見ている。「住まいに関するサイトの集客方法といえば、大手であればテレビCMを展開したり、ネットではキーワード広告を打つ程度。iemoのビジネスアカウントはベンチャーならではのスマホドリブンな集客方法」。今後は地域内で事業者を検索したり、ユーザーが資料請求できる仕組みを整え、事業者からマッチングに応じた手数料を徴収するモデルを構築していく。

iemoのユーザーやPV数は非公表だが、ユーザーの97%は女性で、全体のアクセスの90%がスマホ経由。2013年12月の正式ローンチ以降、PVは毎月200%の成長を続けているのだという。PVの稼ぎ頭はまとめ記事だが、成長の背景にはiemo創業前に手がけていたソーシャルゲーム(ソシャゲ)事業での経験がある。村田マリは以前、バーチャル空間でレストランを経営する育成ゲームを運営していて、そのターゲット層はiemoと同じ25〜40歳の共働きや専業の主婦層。「育児の合間や就寝前など、彼女たちが行動するタイミングはわかっている」。そう語る村田マリも、一児の母である。

iemoにおけるKPIの見方もソシャゲの経験が生きているそうだ。例えば、平日と週末、昼と深夜、長期休暇などさまざまな時間帯でのアクティブ率を分析し、どんな内容の記事を投稿するとソーシャルでシェアされやすいかといったデータを収集。反応が悪い場合は、タイトルやサムネイル画像を「30分で4回入れ替えることもある」のだとか。詳しい手法については教えてくれなかったが、「ソシャゲと同様に、初速を見るのがポイント」と語っている。

ソシャゲの経験を生かしたメディア運営を後押しすべく、iemoは9日、2007年に検索エンジンやソシャゲの開発を手がけるフォリフを創業し、国内ベンチャーキャピタル3社からも資金調達を実施したことのある熊谷祐二を共同代表取締役COOに迎えている。村田マリは引き続き、拠点を置くシンガポールで経営に携わり、主にコンテンツの品質強化を担当。熊谷祐二は東京で技術開発と経営、財務面を担当する。このタイミングで、B Dash Venturesから資金調達を実施したことも発表(調達額は非公表)している。

(敬称略)

熊谷祐二(左)と村田マリ(右)


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TechCrunch Japan

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