UEIとソニーコンピュータサイエンス研究所、そしてベンチャーキャピタルWiLが“人とAIの共生環境を構築すること”を目的として設立した合弁会社ギリア。2017年11月に発足を発表した際には多くの紙面やウェブサイトを賑わせたが、それ以降、目立った報道はされていない。
ギリア代表取締役社長の清水亮氏は発足会見で、「我々はヒトとAIの共生環境を実現し、人類全てをAIで知能サイボーグ化する。それが我々のミッションだ」と語り、「文字通り誰にでもAIを作ることが出来る環境の構築が重要だ」と話した。
当日、清水氏は「GHELIA Studio」と呼ぶノンプログラマーのための人工知能育成環境を第一弾製品として発表したり、「みんなのAI」と名付けられたGHELIA Studioで様々な人が作ったAIを誰もが活用できる“AIのマーケットプレイス”の構想を披露した。
GHELIA Studioは2017年度内のサービス開始を予定していたので”現在はどうなっているのだろう”と気になっていたところ、同社は8月28日にみずほFinTech投資事業有限責任組合およびシグマクシスなどを引受先とする第三者割当増資を実施(額は非公開)したと発表し、「一般顧客向けAIサービス事業は、ユーザがAIを手軽に開発し、そのAIを流通させるサービスプラットフォームの提供を2018年内に開始する予定」だと併せて説明した。
TechCrunch Japanは取締役副社長 齋藤真氏を取材し、ギリアのこれまでと今後の戦略について話を聞いた。同氏によると2017年11月以降同社は戦略を変更し「B to CよりもB to B」に力を入れてきたという。「一般のコンシューマーにとっても面白そうなAIが作れそうだ」という自信がある一方、「いったんB to Bできちんと地固めをした上でB to Cの準備を進めていきたい」といった考えがあったそうだ。「ただ、あまりお待たせしてしまってもいけない」(齋藤氏)
清水氏は会見で「GHELIA Studioがあれば、ブラウザだけで誰でも人工知能をつくることができる」「手持ちのデータをアップロードすると、それを使ってどんなAIを作ることができるか、いくつかのAIテンプレートが提案される」と話していた。齋藤氏によると、基本的な構想は変わっていないのだという。
「個人個人がAIを作るためのツールを提供する。そこでAIを作成して、将来的にはそれを他の人に使っていただけるような形で流通させたい。それがGHELIA StudioとみんなのAIの骨子だ」(齋藤氏)
「バックオフィス側も人が集まってきた」ので「全力投球で“新しいものを作る”ほうに力を振り分けることができそうな状態になってきている。ここからもう一段加速したい」と齋藤氏は加えた。
ギリアはB to Bもこれまで以上に加速させていく。同社は5月、みずほフィナンシャルグループなどと連携し、AI、OCR(文字認識技術)、RPA(ロボットによる自動化)を活用した、手書き・非定型帳票の事務効率化ソリューションの実証実験に成功したと発表。みずほFGの子会社であるみずほ銀行の業務を皮切りに、今後、グループ各社の同種業務に対しても導入を推進し、大幅な生産性向上を目指す。
8月28日にはシグマクシスとパートナーシップ契約も締結。シグマクシスによると「最先端のAI技術力を有するギリアのサービス開発、および販売のパートナーとして、多様な業界に対するAIサービスの提供を拡大するとともに、先進テクノロジー活用の知見を蓄積し、企業のデジタル・トランスフォーメーションを、より一層強力に支援していく」のだという。
齋藤氏いわく「世の中が本当にAIを使い始めた時にどこから何から変わり始めるのかはおそらく誰にもわからない」。「それぞれの産業の中にデータとして溜まっているものは何があるのか、何がAI化していくことができそうなのか、その結果その産業がどう変わっていくのか」を知るべく「できるだけ隔てなく、いろんな産業界にAIを導入するということを体験していきたい」と語った。
「今までUEIやソニーCSLにとってあまりなじみのなかった業界にも手を出していきたい。その時にシグマクシスのようにコンサルティングに長けた会社は良いパートナーになってくれている」(齋藤氏)