ソフトウェア企業の使用量ベース価格モデルへの移行を支援するMetronomeが約34億円調達

多くのソフトウェア企業が使用に応じたより柔軟な価格設定モデルに移行する中、その多くが顧客に対して使用量ベースの課金を選択している。

これは顧客にとっては簡単なものだが、使用量ベースの課金を容易に行える課金システムを備えていないソフトウェア(SaaS)企業にとっては頭痛の種となっている。

そこで登場したのがMetronome(メトロノーム)だ。このスタートアップは、大規模なデータを「確実に」処理できる課金・データインフラプラットフォームを開発し、使用量ベースの企業がコードを変更することなくビジネスモデルを反復できるようにした。顧客の利用状況や課金データをリアルタイムAPIとして提供することでこれを実現している。

Dropbox(ドロップボックス)の元社員であるKevin Liu(ケビン・リュー)氏とScott Woody(スコット・ウッディ)氏は、それぞれのスタートアップを売却した後に同社で出会い、2020年にMetronomeを設立した。2人は「使用量ベースの課金を大規模に機能させるという共通の苦労を共有する」何百もの企業と話した後、このコンセプトを思いついたという。

「ソフトウェア市場で見られるこの変化は、顧客が製品から何を得ているかという価値にマッピングされています」とリュー氏は話す。「そして、これらのモデルがいかに成功するかを証明したTwilio(トゥイリオ)、Snowflake(スノウフレーク)、AWSのような企業の市場での成功によってすべてが加速しました」。

リュー氏によると、Metronomeのプロダクトにより、企業は「どんな規模や段階でも機能する課金インフラで、迅速かつ容易に新しいビジネスモデルを立ち上げ、反復し、拡張する」ことができるという。その鍵は、企業が課金の制約をめぐる設計を回避できることだという。顧客にはCockroach Labs、Starburst、Trueworkなどがいる。

Metronomeのモデルは、投資の世界で有名な人たちを惹きつけている。サンフランシスコを拠点とする同社は米国時間2月1日、Andreessen Horowitz (a16z)がリードするシリーズAラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達したと発表した。このラウンドには、Elad Gil(エラド・ギル)氏、Lachy Groo(ラッチー・グルー)氏、Databricksの共同創業者Reynold Xin(レイノルド・シン)氏とIon Stoica(イオン・ストイカ)氏、Confluentの共同創業者Neha Narkhede(ネハ・ナークヒード)氏、Snowflakeの製品担当SVPのChristian Kleinerman(クリスチャン・クラインマン)氏、Plaid共同創業者のWilliam Hockey(ウィリアム・ホッキー)氏とZach Perret(ザック・パレット)氏、HashiCorpの共同創業者でCTOのArmon Dadgar(アーモン・ダッガー)氏ら多数のエンジェル投資家に加え、シードラウンドで投資したGeneral Catalystも参加した。Metronomeは以前、General Catalystが主導したシードラウンドで500万ドル(約5億7000万円)を調達している。

A16zのゼネラルパートナーMartin Casado(マーティン・カサド)氏は、ソフトウェア業界全体が「使用量ベース価格をはじめとして、よりきめ細かく表現力のある価格モデル」に移行しつつあると考えている。

「それをサポートするシステムを構築するのは技術的に非常に難しい課題です」と、同氏は電子メールでTechCrunchに語った。「ケビンとスコットは、この問題に対する背景と理解を持ち、大手ソフトウェア会社の課金処理に必要な規模、正確さ、稼働時間をサポートできる唯一のシステムを構築しました」。

カサド氏はまた、この問題がソフトウェア会社にどのような影響を与えるか、直に目にしてきたと述べた。

「取締役として、製品のリリースから重要なGTM戦略の変更まで、あらゆるものが課金の複雑さのために失敗するのを目の当たりにしてきました。また私自身、創業者としてもこうした問題を経験しています」と語った。同氏はNicira Networksを共同で創業し、同社は2012年に12億6000万ドル(約1445億円)でVMwareに買収された。

より柔軟性を求める企業の進化は起こるべくして起こったと、リュー氏は話す。

「最初のサブスクリプション管理課金システムが登場した10〜15年前は、使用量ベースのモデルはもっと複雑でした」と同氏はTechCrunchに語った。「今日、ソフトウェア会社は、データを大規模かつリアルタイムに扱えるシステムを必要としています。これは、Metronomeの製品のかなり重要な特性です」。

従来のサブスクリプション管理システムは「まったく別の問題のために」作られたものだと、リュー氏は付け加えた。

ウッディ氏も同意見で、Metronomeは新製品を開発し、できるだけ早く市場に出したいと考えている企業を支援することができると説明した。Metronomeは、エンジニアリングチームにとって「できるだけ労力のかからない」統合モデルを開発し「非常に迅速に、中には1日で」稼働させることができる、と同氏は語った。

「我々が設計した課金システムは、ボトムアップ、セルフサービス、市場投入の動きと同様に、オーダーメイドの高度に特殊な企業契約モデルにも対応できます」とウッディ氏はTechCrunchに話した。「Metronomeは、両方の用途に同時に対応できるように設計されています」。

さらに同氏は、この製品は規模に応じた設計になっていると付け加えた。

「企業が成長すればするほど、顧客は増え、その顧客はますますサービスを利用するようになります。そして、その規模を拡大するためのアーキテクチャを当社は設計しました。レジリエンス(復元力)とセキュリティ(安全性)を中心に設計しています。当社の顧客のために構築しているのは、製品や顧客のダッシュボードを強化するのに役立つリアルタイムの真のデータソースであり、同時に他のビジネスシステムを直接統合することができます」。

Metronomeの従業員数は現在20人で、新資本の大部分は特に研究開発チームと市場投入チームの採用に充てる計画だ。

画像クレジット:Co-founders Kevin Liu and Scott Woody / Metronome

原文へ

(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。