短いジェットコースターのような話だった。
サンフランシスコに本社を置く電子商取引企業Brandless(ブランドレス)は、美容、パーソナルケア、日用品、ベビー、ペットといったカテゴリーの「クルエルティフリー」(動物を傷つけない)製品を製造販売していたが、2017年7月に正式オープンした後、少なくとも3年間、休業していた。
ニュースサイトProtocolで発表された声明では、Brandlessは小売り市場の「猛烈な競争」が原因だとしている。休業の影響により、同社は70名の従業員を解雇し、残る10人で未処理の注文に対処し、可能ならば在庫の販売方法を考えるという。
この会社が短命だったことは、業界ウォッチャーにはそれほどの驚きではなかった。2018年7月、Brandlessは、ソフトバンクの1000億ドル(約10兆9000億円)規模のビジョン・ファンドから2億4000万ドル(約264億円)の投資を受けたことを発表した。Brandlessの企業価値を5億ドル(約550億円)強と見積もっての契約だ。比較的幼い企業にしては、びっくりするような出来事だった。
Wagなど、さらに最近ではWeWorkのようにビジョン・ファンドが支援したいくつもの企業に共通して起きたことだが、それは経営幹部の再編を意味した。実際、昨年3月には、Ido Leffler(イド・レフラー)氏とこの会社を共同創設したCEOのTina Sharkey(ティナ・シャーキー)氏が、取締役会の共同会長となって「より集中した役割」を果たしたいと、CEOの座を降りている。
それにより、Brandlessの当時のCFOであったEvan Price(エバン・プライス)氏が暫定CEOに就任。5月には、元Walmart.comのCOO、John Rittenhouse(ジョン・リッテンハウス)氏がその座を引き継いだ。Protocolによると、彼は、もっとたくさんのBrandlessの製品を実店舗に並べる計画を立てていたが、昨年12月、密かに身を引き、Brandlessから去った(その一方で、昨年秋、シャーキー氏も取締役会から退いている)。
影響
たしかにこの展開は、すでに抜け目ない取り引きで評判が揺らいでいるソフトバンクには追い打ちとなった。だが公正を期して言うなら、Brandlessは、その多くが質の高い製品にまつわるいいストーリーを有する新規参入者で溢れるようになった業界に踏み込み、さらに、同じ価格帯のブランドに属する似たり寄ったりのテイストと品質の製品で激しい競争に捲き込まれたのだ。
2018年に発表されたソフトバンクの投資金2億4000万ドルについても言及しておくべきだろう。Brandlessに近い情報筋によると、同社に入った資金はその半分以下だったという。
昨年のThe Informationが伝えたところによれば、Brandlessが利益を生むことを熱望していたソフトバンクは、約束した資金の一部を分割で提供し、Brandlessが一定の財務目標を達成するまで資金の大半を出し惜しみしていた。
目標達成が叶わなかったため、ソフトバンクは1億ドル分の投資を取りやめた。そしてProtocolによると、プライス氏、レフラー氏、ソフトバンクの業務執行取締役Jeff Housenbold(ジェフ・ハウスンボールド)氏、ベンチャー投資会社RedpointのJeff Brody(ジェフ・ブロディー)氏、ベンチャー投資会社NEAのColin Bryant(コリン・ブライアント)氏らからなるBrandlessの取締役会は、退職金が支払える間に会社をたたむことに決めたのだという。
[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)