世界中のDJたちが自分がかける音楽を買っているBeatportで、無料で聴けるのは2分間のサンプルに限られていた。そのBeatportが、無料無制限のストリーミングを開始し、販促を強化しようとしている。ダンスミュージックの無料ストリーミングサービスは今日(米国時間2/23)から、招待制の非公開ベータを始めるが、本誌TechCrunchはその前にちょいと試してみることができた。
2003年に創業されたBeatportのストアは、DJが自分が使うための電子音楽をHiFiでダウンロードできる。最近ではDJたちとそのファンのためのソーシャルネットワークにもなり、また、リミックスを作るためのステム(曲のステム==リミックスのための部材)を見つけるためのプラットホームにもなっている。電子ダンス音楽(electronic dance music, EDM)のコングロマリットSFXに2013年に買収されてから、不採算部門を切り捨てるためのレイオフを何度か行った。
今Beatportは、プロダクトの全面的なオーバーホールに力を入れている。音楽ストアBeatportはBeatport Proになり、Newsは前と同じく電子音楽の人気作家/奏者のアップデートやインタビュー、ビデオなどを提供、今準備中のShowsは、今後のコンサートの予定をスキャンしてカレンダーを作れる。
新しく始まるストリーミングサービスは、単純にBeatportと呼ばれる。初期ユーザとして招待されたい人は、ここで申し込む。
そのWebインタフェイスは、音楽を閲覧して見つけることに特化し、知ってる曲の検索や再生の機能はない。ホームページには、特集アーチスト、チャート上位者、テーマ別のプレイリスト、編集者のお気に入り、クラブミュージックの名作、などがある。お気に入りマークをつけた曲は、まとめられてあなたのプロフィールに載る。
どの曲もすぐにストリーミングされ、全曲をBeatportの埋め込みプレーヤーで聴ける。ほかのサイトへ行っても曲は鳴り続ける。ひとつの曲をかけるたびに、その曲が載っているチャートやプレイリスト、アルバムなどもキューに並ぶから、これまでのストリーミングサービスのビッグな欠点がなくなっている…そして、沈黙(音無し)の時間というものがない。
なお、Beatport Proには曲の完全なジャンル別リストがあるが、無料ストリーミングサービスではジャンル分けは簡単なものしかない。だから、DJのための選曲ツールとしてはやや使いづらいだろう。
でもBeatportは、全体としてスムーズですっきりしている。競合サイトによくある、中途半端に機能山盛りにするよりも、必要最小限主義を貫いている。意外にもv1インタフェイスで使えるし、そのジャンルもうまく捕捉する。
Beatportのカタログには、Spotifyで見つからないものもたくさんある。クレジットのはっきりしないトラックやリミックスなどもある。だからSpotifyのような完全に合法的なアプリと、SoundCloudなどのごたごたしたサービスの、法的には灰色(グレーゾーン)の、リミックスなどのロングテールの両者を、橋渡ししている。
BeatportのストリーミングサービスからBeatport Proのストアへすぐに行って、曲を買う(ダウンロードする)こともできる。つまりストリーミングサービスは、売上につなげるための陳列棚だ。無料で、しかも、広告もない。いわゆる、ロスリーダーである。今の世界でDJたちは、身銭を切って音楽を買う貴重なる少数民族だから、だいじにしてやらないと、いけないのだ。ビットレートが低い(HiFiではない)から、そのままクラブ/ディスコなどで鳴らすのには向いていない。
Beatportのサンプル〜曲発見機能を利用している電子音楽のミュージシャンはとても多い。音楽というものは、全曲聴いて感動したからお金を出して買う、というパターンが多いから、無料の場面でも、短いサンプルよりは全曲提供が正解である。Beatportの新しいストリーミングサービスは、大衆受けする必要はない。DJにとって曲を見つけるためのベストの場であれば、それで十分だ。Beatportは、スタートアップとしてはとてもうまいやり方で、「有料」と「無料」を調和させている。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))