チャットボットに心を打ち明けるなんて気持ちが悪いと感じるかもしれないが、Claudia(クラウディア)とCarolina(キャロライナ)のRecchi(レッキ)の姉妹は、それこそ米国中の大学生がいま必要としているものだと考えた。
姉妹は、2017年、脱落の恐れが中程度から高程度の大学生が学校に留まれるよう支援し、大学の定着率を高めるための企業EdSights(エドサイツ)を共同で創設した。
EdSightsは、学校のマスコットに見せかけたチャットボットを使っている。学生に個人的な質問やメッセージを送り、自身の最大のストレスを理解させる。そして彼らを、経済、食事、メンタルヘルスを支援する大学の制度につなげてゆく。
パンデミックによって何百万人もの学生がキャンパスから離れて家で勉強している今、学生たちをつなぎとめる新しい方法を模索する大学から、姉妹は急成長のヒントを得た。
またパンデミックによって、学生たちは、以前にも増して正直な気持ちを返すようになった。
「世界中が大変なことになって、人々は職を失い、家計はなんとかギリギリの状態。今は、学校は緊急の問題ではない」とある学生は書いていた。「それでも、成績は成績。この先どうなるのか不透明な状態のまま、成績が私たちの将をが決められてしまう」
別の学生は「仕事場が閉鎖されて収入が途絶えた」と書いている。また、「外に出られないから、生活のいろいろなことから気を紛らすことができない」と訴える学生もいる。
チャットボットの他に、どれだけの学生がどのような問題に悩んでいるか、その割合を管理者に示すダッシュボードもEdSightsは提供している。同社は、退学の恐れが高い学生とその最大の問題に関する情報を扱っているため、プラットフォームではプライバシーが重要になる。EdSightsでは、米国家族教育権とプライバシー法(FERPA)とEU一般データ保護規則(GDPR)に準拠し、第三者に情報を見せたり売ったりはしないと話している。学生には、自身の記録の修正要求と、全記録を取得する権利が与えられる。
「秋に学生が戻って来ないのではないかと、大学側は明らかに恐れています」と姉妹は言う。「そこで、学生と確実につながり、大学に来ないまでも、大学とつながっているという感覚を学生に持たせたいと考えているのです」
同社は、1年をかけて顧客を16件まで増やした。その中には、ベイカー大学、ミズーリ・ウェスタン州立大学、ベテル大学、カルバー=ストックトン大学、ウェストミンスター大学などが含まれている。年間経常収益は前月比で平均68パーセントずつ増加し、2月に比べて収益は2倍になった。
大学がEdSightsに支払う利用料は、学生1人あたり15ドルから25ドル。ほとんどの大学が、全学生を含めている。
「以前は、1年生にだけ適用できるか、第一期生だけを含めることができるか、特別な支援が必要な学生にだけ使えるか、と聞いてくる大学が多くありました」とキャロライナ・レッキ氏。「今は、4年間をとおして学生に適用したいというだけでなく、大学院生にも使いたいと申し出てくる学校もあります。大学院はやったことがないので、新しい試みです」
この新たな情勢に乗った姉妹は、大勢の有名投資家から160万ドル(約1億7000万円)のベンチャー投資を調達した。このラウンドに参加した投資家には、Lakehouse VC(レイクハウスVC)、Kairos VC(カイロスVC)、The Fund(ザ・ファンド)などが含まれる。
またこの投資には、Warby Parker(ワービーパーカー)、Harry’s(ハリーズ)、Allbirds(オールバーズ)、Bonobos(ボノボス)、Rent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)の創設者たちも加わった。
EdSightsの創設者姉妹は、歴史的に専門教育関連企業の条件規定書だけを受け付け、この分野には懐疑的だった専門分野を持たない投資家たちの興味を集めた理由のひとつとして、COVID-19があると話している。実際、彼女たちはいくつもの投資の申し出を断わることになったわけで、他の投資家たちが資金調達シーン全体を覆っていると主張する萎縮効果には、大きな差があった。
EdSightsが今回調達した資金は、一般の人々が教育とテクノロジーの交差点について考える際に、パンデミックによってどれほど細やかな事情を踏まえるようになったかを示す、新たなデータポイントとなった。
パンデミックの間、数百万人の学生を遠隔支援できるのはチャットボットだけかも知れない。それがいつになろうと学校が再開し始めたとき、このテクノロジーが世界にとって必要なものになるかどうかを証明するのは、EdSightsだ。
画像クレジット:nonchai
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(翻訳:金井哲夫)00