編集部記:Joe McCannは、NodeSourceの共同ファウンダーでCEOだ。彼は、ハッカーで職人だ。ものを作ったり、壊したりする。ウェブ、モバイル、ソフトウェア開発において13年以上の経験を持つ。
私たちが生きる世界の全てのものは、何らかのパッケージの中にまとめられた状態になっている。テレビのチャンネルはスポート番組のESPNとアニメ番組のNickelodeonがパッケージになっているし、健康保険は雇用者が提供するパッケージの中にある。教育も、大学や学位に包まれて提供される。私たちは、パッケージ化された商品やサービスに囲まれすぎていて、それらを本来の単独の状態で得ることでもたらされる、柔軟性や価値を忘れてしまっている。
企業がパッケージを作るのにはいくつか理由がある。一つは、企業は顧客に彼らが欲しくもないものを売るために、本当に顧客が欲しいものと組み合わせて販売するためだ。例えば、アルバムの中に一曲しか良い曲はないが、その曲のためにアルバムを購入するといったことだ。まとめて販売するのが理にかなっていることもある。単独の商品やサービスを販売するための料金やその他の取引コストが高くなり、採算が取れない場合だ。
取引の流れがインターネットベースのテクノロジーで効率的になるほど、無意味な抱き合わせは消滅し、顧客は好きな物だけを選択できる柔軟性が生まれる。どの業界でも、このような既成概念を覆すサービスが増えている。エンターテイメントから、仕事の仕方から、法人向けテクノロジーといった全ての分野でそれは始まっているのだ。
アラカルトでの提供が進む
テレビを例にとってみよう。ケーブルテレビの様々な番組が詰まったパッケージを購入する代わりに、私たちは見たいチャネルや見たい番組だけ、更には見たい特定の番組の回だけを選ぶことができるようになった。今年は、インターネットにサブスクライブした視聴者が、ケーブルテレビにサブスクライブした視聴者を上回る重要な分岐点の年になる。このことは、パッケージかアラカルトかを選べる場合、コンシューマーは好きなものだけを購入できるアラカルトプランを選択するということを示唆している。
既存の組み合わせを解くことは、私たち個人への影響も大きい。例えば、健康保険だ。今まで職を失うということは、健康保険を失うことを意味していた。しかし今、医療保険が雇用主と紐づくあり方を解体するトレンドが生まれているのは周知の事実だ。このことは、雇用主がカスタマーなのではなく、病を患う全ての人がカスタマーになることを意味する。それを受け、ヘルスケアはカスタマーサービスであるという意識に変わってきている。個人は選択する自由と、それに伴い多くの選択肢 を手にいれた。
高等教育はどうだろうか。教育機関は異なるサービスをまとめて提供してきた。例えば、それは授業や寮生活、アスリート教育といったことだが、それらをひとまとめにした学費は高額だった。アラカルトの教育が可能になれば、一般的にとても高額な大学教育を選ばずとも教育が受けられるようになる。学科プログラムの費用の全てを賄えなくとも、必要な高等教育を受けることができるようになるのだ。Khan AcademyやGeneral Assemblyの学生はコースごとに受講することができる。ハーバード大学やエール大学もオンライン修了書の提供を始めた。教育水準の高い教育機関も小分けの教育を提供することで得られる価値に気がついていることを示唆している。
総合的なサービスからマイクロサービスへー小さい方が良い
既存のひとまとめのものを小分けにすることは、テック業界に変革をもたらしている。既存の統一された巨大なものをイノベーションが起こしやすい簡単に扱える大きさのユニットに分ける動きが加速している。マクロレベルでは、テクノロジー企業の荷解きが始まった。eBayとPayPalは友好的に別れ、Dellは大胆な施策を打つために身軽なプライベート企業となった。一方Symantecは、2つのプライベート企業に分社した。
大規模な会社を小分けにする作業は、社内の小さいレベルでの既存のあり方を見直す作業を促進する。特に年季の入ったコードの重たいソフトウェア設計によって発生する問題の解決へと向かうだろう。かつては主力技術だったとしても、メンテナンスするのが困難ということは、 その企業が技術的な負債を積み上げてきたということに他ならない。才能ある開発者の仕事を阻み、結果的に革新を起こすことから遠ざかっている。
巨大企業にとって既存のものを紐解く施策を行うことが変化を呼び込み、停滞から脱することにつながる。身軽な競合他社と張り合うのにも役立つだろう。革新的なスタートアップは、旧来の技術に固執することで積み上がる技術的な負債やそれに伴う官僚的な開発プロセスに縛られることはないのだ。
旧来の技術から脱却することで、企業に才能ある人材を引き寄せて留めることにもつながるだろう。多くの開発者は、何百万行にも及ぶコードで構成されたJavaのアプリをメンテナンスすることは好まない。Javaや.Netといった過去の技術に依存している企業にとってこのようなことは良くある話だ。対してPaypalは、2014年だけで、400人ものJavaScript開発者を採用したが、一人も技術的な負債に苛まれることはなかった。
全ての企業がテクノロジー企業になる
モノリス的な構造を解くことで、実際に多くのメリットが得られるのは明白だ。それはどの業界にもあてはまる。コンシューマーにとってパッケージを解くことは、柔軟性と選択肢をもたらすことを意味する。自分が欲しい商品やサービスだけを購入することができるからだ。企業にとって既存の方法を解くことは、イノベーションを起こすのに重要な施策となる。
今の時代、全ての企業がテクノロジー企業であると言っても過言ではない。どのようなビジネスであろうと、テクノロジーはあなたのビジネス、あるいは競合他社のいずれかに利益をもたらすことになる。広範な総合サービスや旧来に技術から離れることで、企業はスタートアップのような軽快さと柔軟さを取り戻すことにつながるだろう。
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