SpaceXのStarshipのプロトタイプMk1は、米国時間11月20日、テキサスでの初期テスト中に爆発をともなう失敗に見舞われた。動画を見れば実際に何が起こったかを確認できるだろう。基本的には極低温テスト中に蓋が吹き飛んだというもの。これは機体が実際の使用環境で遭遇するような極低温に耐えられるかを確認するための標準的なテストだ。SpaceXに限らず、ロケットを製造する場合には、このような初期段階でのテストを地上で、制御された比較的安全な条件で行うのが普通だ。その理由は、まさにこういうことが起こりうるからだ。そうは言っても、これがSpaceXの楽観的なスケジュールを遅らせる可能性があることは否定できない。
計画の次のステップとしては、SpaceXがStarship Mk1から学んだことを糧として、次の世代のプロトタイプ宇宙船、Starship Mk3に進むことだと考えられる。「ちょっと待って、Mk2を飛ばしてない?」と思うかもしれない。そんなことはない。SpaceXは、フロリダの別の施設で今回破壊されたMk1と並行して、すでにMk2を製造中なのだ。
SpaceXのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、YouTuber(ユーチューバー)のEveryday Astronaut(エブリデイ・アストロノート)氏が、Starshipのテストの次のステップに関してTwitterで質問したのに対し、SpaceXはMk3に向けて前進する、Mk1の価値は主に「製造上の先駆者」となることだったとし、「実際に飛ばす機体の設計はまったく異なる」とすぐに答えている。
これはこれまでとは異なった見解であり、今まで議論されてきたStarshipの開発に関する話とは違っている。これまでの話では、Startship Mk1と同Mk2は、高高度テスト飛行用の機体として設計されたものであり、先の尖っていないスケールダウンされたデモ機「Starhopper」(スターホッパー)の成功に続くべきものだった。Starhopperは、1基のRaptor(ラプター)エンジンを搭載したもので、SpaceXのテキサスのサイトで、何回か低高度の上昇と着地を繰り返した。
ただし宇宙開発事業は、特に打ち上げについてはスケジュールが流動的なものになりがちだ。またSpaceXは、その野心的な目標のほとんどについて非常に楽観的なスケジュールを設定している。それについては、マスク氏と、SpaceXの社長兼COOであるGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏が公言してはばからない。それでも同社は、来年早々にもStarshipのプロトタイプによって軌道飛行を実現することを目指していると述べていた。この不都合なテスト結果が、そのスケジュールに影響するかどうかは、これからじっくりと見定める必要があるだろう。
SpaceXは、本日のテストに関して次のような声明を発表した。
今日のテストの目的は、システムを最大限に加圧することだったため、このような結果をまったく予期していなかったわけではありません。負傷者はいませんでした。また、これは深刻な後退につながるものでもありません。
イーロン(Elon)がツイートした通り、Mk1は製造のための貴重な先駆者として機能しましたが、実際に飛ばす機体の設計はまったく異なるものになります。同じ設計のテスト機は飛ばさないという決定はすでになされており、チームはすでに軌道周回用に設計したMk3の製造に集中しています。
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(翻訳:Fumihiko Shibata)