テスラが10テラワット時の生産を目指すタブレス構造バッテリーの概要を公開

Tesla(テスラ)が自社で設定した年間10〜20テラワット時のバッテリー生産という野心的なゴールに到達するためには、バッテリーと生産方法を進化させる必要がある。

米国時間9月22日のTeslaバッテリーイベントで、同社はCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏がやり遂げると主張する一連のイノベーションを発表した。すべては、新構造のバッテリーから始まる。

この発表の中で、同社は新しいセルのデザインも公表している。新しい80ミリ長と呼ばれるもので、セルのエネルギー密度は5倍、出力は6倍となり、走行距離は16%伸びるという。

「私たちはこのセルの生産を、我々の10ギガワット試験製造工場で間もなく開始します」と、Teslaのパワートレーンおよびエネルギー工学上級副社長であるDrew Baglino(ドリュー・バグリーノ)氏はいう。

ただし、この新しいセルの製造システムは、まだ稼働していない。試験製造工場で「まもなく取りかかる」段階だとマスク氏は念を押した。

従来のバッテリーは、陽極、陰極、セパレーターの3つの要素で構成されている。この基本構造に加えて、セルのエネルギーを外部電源につなぐためのタブがある。大きなフォーマットのリチウムイオンセルでは、セル内のフォイルとタブは「フォイル・トゥー・タブ」溶接によって接続されている。

リチウムイオンは、陽極から陰極へセパレーターを通して移動し、バッテリーの充放電を行う。この方式は何十年も前から変わらず、変わった部分といえばほとんどが素材科学に関連するものと、バッテリーのサイズぐらいなものだ。

従来型のリチウムイオン・バッテリーと、その要素である陽極、陰極、セパレーターを示した図。(画像クレジット:Tesla)

出力と密度を高めたことで、熱の問題が引き起こされたとバグリーノ氏は言う。

「そこが、我々のチームが克服目標に定めた課題です」とバグリーノ氏。「私たちは、この等式から熱を取り除くタブレス構造を思いつきました。これでコストは格段に下がり、製造工程もうんとシンプルになります」。

Teslaは従来のフォイルにレーザーでパターンを焼き付け、「Shingled Spiral(シングルド・スパイラル)」を通して活性物質の中で数多くの接続を可能にする。この新デザインは製造を単純化し、部品点数を減らし、電気の通り道も短くできる。そのようにしてTeslaは、主張どおり発熱を抑えているとバグリーノ氏は話していた。

「円筒形にして電極を排除したことで、巻きとコーティングの工程が劇的に簡単になり、発熱対策と性能の面で高い性能を発揮します」とバグリーノ氏。

マスク氏も同意している。「タブがあることで大変な苦労を背負ってきた」とイベントで話していた。

電子の移動距離が短くなってセルの熱問題は縮小し、大型のタブレスセルでも電子の通り道は短くなると、マスク氏はいう。彼は、セルが大きくなっても、小さなタブ付きのセルよりも重量出力比は優れていると説明していた。

「とても難しい仕事です」とマスク氏。「誰もやったことがない。だから、タブレスセルなんてものをどうやって作り、実際に使えるものにして、トップキャップに接続するのか、それを考え出すために、Teslaのエンジニアは本当に大変な苦労を強いられることになります」。

これは、世界を再生可能エネルギーに大きく近づけようとするTeslaの冒険の旅の中で、電気貯蔵技術向上のための数あるステップの第一歩だ。

「数多くの試行錯誤をすることになりますが、ここまでたどり着けたことを大変に嬉しく思います」とバグリーノ氏は話していた。

関連記事
イーロン・マスク氏がバッテリーの技術革新でテスラの電気自動車が約260万円になると発言
未来のテスラ車のバッテリーは車体と一体構造で剛性、効率、安全性、コストを改善
イーロン・マスクが2021年後半発売のフラッグシップセダンTesla Model S Plaidを公表

カテゴリー:モビリティ

タグ:Tesla バッテリー

原文へ

(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。