デジタルと人間の間の絶妙なバランスを求められている、アドビやセールスフォース

今週ラスベガスで開催されたAdobe Summit会場の長いホールを歩いて、マーケティングとデータ統合の話を聞きながら、私はブランドとその顧客の間に起きる明らかな断絶について考えていた。膨大な量のデータや、それをまとめるための増え続けるツールセット、そして最適な顧客体験を作り上げたいという情熱。私たちはスリリングな消費者体験のための準備を整えてきたと思うかもしれないが、一方で肝心なときにかならずしもその効果が得られるわけではないということも知っている。

たぶんその問題の一部は、データベース内にあるデータが、顧客に直接向き合う従業員たちの行動に必ずしも結び付けられていないからだ。多くの場合、顧客体験はスムーズには進まない。データがあるソースから別のソースに渡されることもなく、やっと誰かにたどりついたと思っても、相手は必ずしも事情がよくわかっているわけでもなければ、気持ちのいい対応をしてもらえるとも限らない。

言い換えれば、私のデータがボットから人間の顧客担当者にスムーズに渡され、2回も3回も同じ情報を要求されなかったとしたら、感動してちょっとショックさえ受けるだろうということだ。

こうした話はおそらくAdobe(アドビ)やSalesforce(セールスフォース)のようなマーケティングオートメーションベンダーが聞きたいものではないだろう。しかしこれは、満足している顧客の話よりもはるかにありふれたものなのだ。現在のツールのゴールが、システムを接続するためのAPIを提供することであることは、私も理解している。それはさまざまなチャンネルから、リアルタイムでデータをストリーミングする。インテリジェント分析を適用することによってそのデータをより良く理解することができる。そしてある程度までそれは実現されていて、私たちを真に喜ばせようとしているブランドも存在しているのだ。

だがブランドは、現実世界で起こることよりもデジタル世界で起こることの方をはるかに上手にコントロールできるため、ここに断絶が起きる可能性がある。ブランドが、デジタルの世界で顧客と対話する際には、詳細レベルまで知ることが可能で、間違いや矛盾を可能な限り早く修正しようとしている。問題は人間とのやりとりに切り替わったとき、店舗のPOSレジやオフィス、その他のチャンネルで人間が人間と直接対話を行うときに、そうしたデータが有用でなかったり、アクセスすることさえできなかったりすることだ。

それに対する答は、私たちにさらなるデジタルツールやハイテクを与えることではなく、人間対人間のコミュニケーションを改善するための努力を行うことであり、そしておそらく人間の従業員たちを、眼の前に立つ顧客に対応するために本当に理解する必要のある種類の情報で、武装することなのだ。

もしブランドたちが、こうした人間との接触ポイントを正しく掴むことができるなら、ブランドに対するより多くの忠実な顧客を得ることができるだろう。それは究極の目標である。だが今は注力する点がよりテクノロジーとデジタル領域に偏っているように思える。それでは必ずしも望ましい結果が得られるとは限らない。

これは、Adobe、Salesforce、あるいはこうした問題を解決しようとしているテクノロジーベンダのせいではないが、人間関係の側面は、現在考えられているよりもはるかに強力な焦点になる必要がある。結局、世界中のすべてのデータをつぎ込もうとも、顧客に対応するのが乱暴だったり無知な従業員では、ブランドを守ることはできない。そして、どんなに洗練されたマーケティングテクノロジーを使っていようとも、たった1回の悪い顧客体験がブランドを長期にわたって悩まし続けることになる可能性があるのだ。

[原文へ]

(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。