トランプ政権がアフリカのトップテック国ナイジェリアからの移民を制限

米国のトランプ政権は1月31日、ナイジェリアからの入国を制限すると発表した。ナイジェリアの人口はアフリカで最多、そして経済規模も最大で、アフリカのテックをリードする国だ。

入国制限は、人口2億人のナイジェリアに米国への渡航を完全に制限するものではなさそうだが、エリトリア、キルギス、ミャンマーと共にナイジェリア市民への移民ビザの発給を一時停止する。

これは、米国永住を検討している市民に適用される。移住ではない人の入国や観光ビザ、ビジネスビザ、医療目的の訪問などには適用されないとされている。

タンザニアとスーダンにも制限が課された。グリーンカード抽選として知られる米国移民多様化プログラムから除外される。

このニュースは米国土安全保障長官代理のChad Wolf(チャド・ウォルフ)氏が発表し、最初にAP通信が報じた。国土安全保障省はその後、TechCrunchにウォルフ氏の発言内容と制限の要約を提供した。

同省によると制限の主な理由は、対象となった国々が「強化されたセキュリティ基準」を満たしていないことにある。

ウォルフ氏は「対象国に変化がみられる場合、入国制限は永久に課すものではない」と述べた。

トランプ政権は2017年にイスラム教徒が大半を占める国からの入国を制限した。トランプ政権がその対象国リストにナイジェリアやいくつかのアフリカの国を加えることを検討しているとの報道が先週あったが、今回の措置はそうした動きに続くものだ。

ナイジェリアの人口のおおよそ45%がイスラム教徒で、同国ではテロが繰り返されている。テロの多くが北東部でのボコハラムに関連するものだ。

ナイジェリアから米国への移民制限は特に2国間の商業テック関係に影響を及ぼすかもしれない。

USTR(米通商代表部)と米国務省の概要によると、ナイジェリアは米国にとってアフリカで2番目に大きな貿易相手であり、米国はナイジェリアにとって最大の外国投資家だ。

2国間のビジネス関係はますますテックにシフトしつつある。ナイジェリアは着実にVCやスタートアップ、創業者にとって、またシリコンバレー企業への入り口としても「アフリカの首都」に育っている。

VC会社Partechの最新のレポートで、2019年のナイジェリアのベンチャー投資額はアフリカで最多だったことが明らかになった。

投資の多くは米国からのものだ。米国はテックにおいて紛れもなくナイジェリアの強固なパートナーで、シリコンバレーはアフリカ開拓のためのゲートウェイとしてナイジェリアを選んだ。こうした関係を示す例は数多くある。

2019年6月、Mastercard(マスターカード)は、ナイジェリアに本社を置き、アフリカで広く展開しているeコマース企業Jumia(ジュミア)に5000万ドル(約54億円)を投資した。後にJumiaは主要証券取引所であるNYSEでIPOを行ったアフリカ初のテックスタートアップとなった。

8月にはJumiaの投資家の1つ、Goldman Sachs(ゴールドマンサックス)がナイジェリアのトラックロジスティックスタートアップKobo360の2000万ドル(約22億円)の投資ラウンドをリードした。

米国とラゴスにオフィスを構えるソフトウェアエンジニア企業のAndelaは米国のソースから1億ドル(約108億円)を調達し、エンジニア1000人を雇用している。

Facebook(フェイスブック)はナイジェリア出身の管理職を抱え、Ime Archibong氏もその1人だ。同社は2018年にNG_Hubと呼ばれるイノベーションラボをナイジェリアに開設した。Google(グーグル)は先週ラゴスに自前のデベロッパースペースを立ち上げた。

ナイジェリアのテックはまた、米国でサービスを展開するスタートアップの増加にも貢献している。ナイジェリアのフィンテックスタートアップFlutterwaveは米国サンフランシスコに本社を置き、ラゴスでオペレーションを展開していて、同社のクライアントはUberからCardi Bまで多岐にわたる。Flutterwaveはアフリカで操業する米国企業が支払いを受けられるようするB2Bの決済プラットフォームのためのデベロッパーチームを米国とナイジェリアの両方に置いている。

Macy’s(メイシーズ)やBest Buy(ベストバイ)、Auto Parts Warehouse(オートパーツウェアハウス)のアフリカでの販売を支えているナイジェリアのeコマース企業MallforAfrica(モールフォーアフリカ)は、米国で勉強して働いた経験を持つナイジェリア人のChris Folayan(クリス・フォラヤン)氏が率いている。同社はラゴスでナイジェリア人を、オレゴン州ポートランドの処理プラントで米国人を雇用している。

アフリカのVOD(ビデオオンデマンド)業界をリードするスタートアップであるiROKOtvはニューヨークにオフィスを構え、(Nollywoodとして知られる)ナイジェリアのコンテンツを貸したり、世界にストリーミングしたりしている。

トランプ政権の最初の入国制限と同じように、ナイジェリアに対する制限も裁判沙汰になるかもしれず、実施が遅れる可能性はある。

その前に、トランプ政権の動きはナイジェリアとの米国行政部のイニシアチブの勢いをそぐものとなるかもしれない。

トランプ大統領にアフリカ問題を担当する米国務次官補に指名されたTibor Nagy (ティボル・ナギー)氏は1月31日、2月3日に予定されている国務省主催の米国・ナイジェリアの2国間会議にナイジェリアの外務大臣Geoffrey Onyeama(ジョフリー・オニェアマ)氏を迎えるとツイートした。

このイベントのテーマは「ナイジェリア人と米国人が共有する起業家精神、独創的精神、勤勉精神を反映するイノベーションと創意工夫」だ。

画像クレジット: Saul Loeb / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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