【編集部注】執筆者のMona Bijoor氏は、衣類のオンライン卸市場JOORの創設者兼CEO。
ベンチャーキャピタルによる投資額の観点から言えば、まだニューヨークはシリコンバレーには及ばない。ベイエリアの企業による調達額は、世界中のベンチャーキャピタルによる投資額の約15%にあたり、サンノゼとロサンゼルスを含めると、2015年の全民間企業による総調達額の3分の1にまで達する。
対照的に、サンフランシスコの8倍もの人口を誇り、世界最大級の銀行がその本社を置くニューヨークに位置する企業の調達額は、5%でしか無い。しかし、資金の調達額は諸刃の剣でもあるようだ。
世界の誰もがうらやむような企業で給料の良い仕事につける可能性がありながら、サンフランシスコ市民の半数近くは、街が誤った方向へ向かっていると考えている。その多くが正式な形で公開書簡を提出し、その中で良い仕事についたとしても家賃すら払えないような現状を踏まえ、テック業界に蔓延しているバブルが少しだけ萎むのも悪くないのではないかと述べている。
一方で、ニューヨークは急成長の真っ只中にいる。家賃は一般的に言って決して安くはないものの、それでもサンフランシスコに比べるとずっと安い。また、多くの人が現市長は前市長よりビジネスを優遇しないだろうと考えているが、そんな中でも求人数や給与はニューヨーク史上最も早いスピードで増加している。以下が、ニューヨークが起業に最適な街である(更に今後良くなっていく一方である)と、私が自信をもっている3つの理由だ。
ハイフンテック
前述のとおり、純粋な調達額としてはシリコンバレーに及ばないものの、市場シェアという意味では、ニューヨークは現在急成長を遂げている。その背景には、ニューヨークが自らを、いわゆる「ハイフンテック(Hyphen Tech)」の首都と名付けたブランディングの成功にある。ハイフンテックとは、スタートアップというカテゴリー下にある膨大な数のサブカテゴリーを指し、他の業界と手を組んで事業を行う事を特徴とする。フィンテックや、ファッションテック、メディアテックはそのほんの一例だ。
ニューヨーク市内に溢れるようなエネルギーは、他の街では味わえない。
多様性
ニューヨークのテック業界が持つもう一つの大きな特長は、その多様性にある。完璧とは到底いえないものの、ニューヨークにある企業は、シリコンバレーにある企業にくらべてずっと多様性に富んでおり、ニューヨークのテック企業で働く社員の40%が女性で、20%が有色人種である。これは、単純に市民が多様性に富んでいるいうわけではなく、ひとつにはニューヨークのテック企業では西海岸に比べて、様々な職種の人材が求められるということが挙げられる。また、雇用の多様性は配当金支払にも影響を及ぼす可能性がある。マッキンゼーの調査によると、多様性のある企業は、一旦上場すると業界標準を大きくこえる売上を記録する可能性が35%高いのだ。
エネルギー
ニューヨーク市内に溢れるようなエネルギーは、他の街では味わえない。街自体が、クリエイティブな人達や、自由な考えを持つ人達、はたまた現体制に不満を抱く人達が自由に生きていくための燃料として機能しており、素晴らしい企業をつくるのに必要な力を与えている。ニューヨークは、学生人口や文化的イベントの数、外国人コミュニティのサイズにおいて全米一であり、どのような人材でも惹きつける力をもっている。(開発者は現在特にその数が増えている)
また、海外発で活躍中のスタートアップのほとんどが、ニューヨークに全米もしくは北米本社をおいており、国際的なバックグラウンドや視野を持つ優秀な人材が街に流れ込んでいる。豊富な人材とアイディアが、シリコンバレーにはないエネルギーを生み出し、そのエネルギーがイノベーションを促進するとともに、週60時間の労働をこなすためのやる気を与えてくれる。
欧州からニューヨークへの最初の入植者は、オランダ東インド会社からの偵察者たちだった。その後アメリカ革命中には、その主要港またビジネス街としての魅力から、イギリスがあらゆる手段を尽くしてニューヨークをまもろうとした。また、ニューヨーク出身でアメリカ合衆国建国の父とされるメンバーの中でも最も有名な、Alexander Hamilton氏は、アメリカで最初の銀行家でもあった。ニューヨークで生み出されたお金によって、パナマ運河がつくられ、マーシャル・プランが実施されたのだ。テックコミュニティが成長するにつれて、急成長を遂げる企業のインキュベーターとしてのニューヨークの力が、そのうちサンフランシスコと肩を並べる可能性もある。
前市長のMichael Bloomberg氏による、ニューヨークに新設される工業学校が、設立から30年の間に400もの企業を新たに生み出すことができるだろうという予測は非現実的ではなく、ニューヨークの学生人口が、ボストンの総人口よりも多いというのは言うまでもない。その一方で、ニューヨークの地下鉄に乗ったことがある人であれば誰でも、ニューヨーカーが待ち時間の有効活用の仕方を熟知していることを知っているだろう。
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