米国ニューヨーク州は今週、学校における顔認識技術のいかなる実装も向こう2年間中止すると票決した。ニューヨーク州の下院と上院が米国時間7月22日に認めたこの一時停止は、今年初めに州北部の校区がこの技術を採用して親たちからの訴訟に発展した(Washington Post記事)ことに対応している。その訴訟は6月に、親たちの代理としてNew York Civil Liberties Union(ニューヨーク自由人権協会、NYCLU)が起こしたものである。州知事のAndrew Cuomo(アンドリュー・クオモ)氏がこの法案に署名すれば、学校におけるいかなる顔認識システムの使用も2022年6月1日まで凍結される。
今週初めにはカンサス州トピーカの校区(KNST記事)が「学校再開計画の一環として職員のための検温ボックスに顔認識技術を採用する」と発表した。しかしながらそのようなシステムは、新型コロナウイルスのもっとも厄介な性質であるウイルスの無症状の拡散を防ぐことができない。
新型コロナウイルスのパンデミックはまだ米国で猛威を揮っているので、学校の再開は深刻な政治問題になっている。今月初めの記者発表でホワイトハウス報道官であるKayleigh McEnany(ケイリー・マケナニー)氏は、「科学が学校再開の妨害をすべきでない」と発言した。
カンサスで提案されている顔認識技術の学校における実装に関して、デジタル人権団体のFight for the Futureの活動部長であるCaitlin Seeley George(ケイトリン・シーリー・ジョージ)氏は「顔認識は新型コロナウイルスの拡散を抑止しないし、学校がこのようなたわごとを取り上げるべきではない」と述べた。
ニューヨーク州における顔認証技術導入の一時停止は、デジタルのプライバシーを擁護する人々の大きな勝利と見なされている。彼らは、監視技術が一般市民の自由を侵すことを恐れている(South China Morning Post記事)だけでなく、テクノロジーが主張している自由や人権、プライバシーなどの目標を達成する能力が、テクノロジー自身にはないのではないかという疑念も持っている。テクノロジーの効力に関するこのような批判は、顔認識技術の高い偽陽性率(MIT Technology Preview記事)やシステム本体にコーディングされている人種的偏見を証明する研究で何度も繰り返されている。
NYCLU教育政策センターのStefanie Coyle(ステファニー・コイル)氏は「私たちは何年も前から『顔認識などのバイオメトリックの監視技術は学校にあるべきものではない』と主張してきた。州議会の今回の議決は、生徒たちをこの種の人権侵害的な監視から護るための大きな一歩だ(NYCLU記事)」と述べている。「学校は子どもたちが学習し成長するための環境であるべきであり、欠陥と人種的偏見のあるシステムがたえず生徒たちを監視しているような学校は、それを不可能にする」と続けた。
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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa)