バイオテック分野のアクセラレーターPetriが米ボストンで始動

バイオテクノロジーやヘルスケア、材料科学、製造業の分野で新しいイノベーションの柱になりつつある中、米国のリサーチハブの1つであるボストンで、新技術の商業化段階にある企業を支援するアクセラレーターのPetri(ペトリ)が活動を開始した。

ボストン拠点のベンチャーキャピタルのPillar支援の下、Petriは3年間で1500万ドル(約16億円)の資金拠出枠を持っており、企業が食品、ヘルスケア、工業用化学物質、新素材の分野にバイオテクノロジーを応用し、さらに製品を市場に投入するのを支援する。

「潮目が変わりつつある。バイオテクノロジーが人間の健康に関わる分野に影響を及ぼすだけではなく、食品、農業、化学物質、素材にも影響を与えるようになる」とPetriの共同創業者であるTony Kulesa(トニー・クレサ)氏は言う。「我々が触れるものはすべてバイオロジー(生物学)の要素を持っている」。

Pillarはすでに、ボストンを拠点とする大学で研究された新しいバイオテクノロジーを活用する複数の会社に投資している。ボストン拠点の大学には、ボストン大学、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)などが含まれる。

Pillarの投資先であるAsimov,ioは、最終的に産業用の新しいゲノムを設計するという目標を掲げており、ボストン大学とMITの卒業生が共同で創業した。計算生物学のためのテクノロジーの実現に取り組んでいるPathAiも、共同創業者の一人がMITの卒業生だ。また、ハーバード大学のGeorge Church(ジョージ・チャーチ)氏は、ヘルスケアと製造業における最先端の遺伝子工学応用で多くのバイオテクノロジー企業の発展を手助けしてきた。

クレサ氏はMITで講師として7年間過ごし、彼の言葉を借りれば、エンジニアリングが生物学をどのように変えてきたかを目の当たりにした。「はっきりわかったのは、MITのテクノロジーを世の中に出していく必要があるということだ」。

Petriにマネージングディレクターとして加入したシリアルアントレプレナーのBrian Baynes(ブライアン・べインズ)氏は次の4社スタートアップを創業した。動物栄養のスタートアップであるMidori Health、マイクロバイオーム(生物内に存在する微生物・細菌群)をコントロールすることでヘルスケアに役立てるKaleido Biosciences、タンパク質工学および合成生物学の会社であるCelexion、合成生物学ツールキットを開発販売する会社でGinkgo Bioworksに売却されたCodon Devices。

クレサ氏とべインズ氏は、アクセラレータープログラムの参加企業が増えてきたら、1つのコホート(プログラムに同時期に参加するグループ)に10〜20社の企業を入れること考えている。プログラムに参加すると、少なくとも25万0000ドル(約2700万円)の出資が受けられ、またPetriにあるラボスペースとオフィススペースも利用できる。

さらに参加企業には、Ginkgo Bioworks(Petriと同じビルに入っている)などの企業、Petriが確保した著名なアドバイザー、Petriの「共同創業者」と呼ばれるライフサイエンス業界の経営者などとのパートナーシップの可能性もある。

共同創業者全体でPetriの数十%の株式を保有している。共同創業者の中には以下のメンバーがいる。Ginkgo BioworksのReshma Shetty(リシュマ・シェティ)氏、Twist BioscienceのEmily Leproust(エミリー・ルプルスト)氏、Exact SciencesおよびCytycに在籍していたことがあるStan Lapidus(スタン・ラピダス)氏、Insitroの共同創業者兼最高経営責任者であるDaphne Koller(ダフニー・コーラー)氏、Asimovの創業者であるAlec Nielsen(アレック・ニールセン)氏、研究者からはMITのChris Voigt(クリス・ボイト)氏、ハーバードのビース研究所からPam Silver(パム・シルバー)氏とGeorge Church(ジョージ・チャーチ)氏だ。

遺伝子組み換え生物は、食物から燃料、化学まで、幅広く利用されている。遺伝子組み換え大豆製品を使用するImpossible Foodsなどの企業は、代替タンパク質の開発・販売のために数億ドルを調達した。遺伝子組み換え生物を使った化学物質の製造業者であるSolugenは、数千万ドルを調達して独自技術を商品化した。また、Ginkgo Bioworksは5億ドル(約540億円)近くを調達し、生物学をビジネスに応用しようとしている。

「エンジニアリングの考え方が生物学にも及び、この分野に関心を持つ起業家の数は劇的に増加した」と、Pillarの創設パートナーであるJamie Goldstein(ジェイミー・ゴールドスタイン)氏は説明する。「従来のバイオテクノロジーとは異なり、この分野におけるアイデアは実証する前に数千万ドルまたは数億ドルといった巨額の資金を必要としないため、幅広い資金調達方法を検討することができる」。

画像クレジット:KTSDESIGN / SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。