バイデン政権がサイバーセキュリティ・ドリームチームを結成

Joe Biden(ジョー・バイデン)米大統領は、初代国家サイバーディレクターを含む米政府のサイバーセキュリティ上級職に、元国家安全保障局(NSA)のベテラン2名を指名した。

米国時間4月12日に発表された今回の人事は、2021年初め、2度にわたり外国政府とつながりがあるサイバー攻撃が発覚した後でのことだ。ロシアのスパイ活動によって米国の大手ソフトウェア企業であるSolarWindsの技術にバックドアが仕込まれ、少なくとも9つの連邦政府機関にハッキングされた事件や、中国政府に支援を受けたハッカーに関連してMicrosoft Exchangeサーバーが大量に悪用された事件などが2021年起こっている。

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オバマ政権下の元NSA職員で、アメリカサイバー軍(U.S. Cyber Command)の立ち上げに貢献したJen Easterly(ジェン・イースターリー)氏が、国土安全保障省傘下のサイバーセキュリティ諮問機関であるサイバーセキュリティ・インフラストラクチャー安全保障局(CISA: Cybersecurity and Infrastructure Security Agency)の新責任者に起用された。CISAは、トランプ大統領が2018年に同機関の責任者に任命したChris Krebs(クリス・クレブス)前長官を、選挙ハッキングに関するトランプ大統領の虚偽の主張に異議を唱えたとして2020年11月に解任して以来、半年間責任者が不在だった。

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またバイデン大統領は、2020年末に米議会が新設したホワイトハウス内に置かれる国家サイバー長官に、元NSA副長官のJohn “Chris” Inglis(ジョン・クリス・イングリス)氏を指名した。これは、民間機関の防衛・サイバーセキュリティ予算を監督する役割を担う新しい役職だ。

イングリス氏は、2021年1月に米国家安全保障会議(National Security Council)のサイバーセキュリティ担当国家安全保障副補佐官に任命されたAnne Neuberger(アン・ニューバーガー)氏と緊密に連携することが期待されている。ニューバーガー氏は元NSAの幹部であり、初代サイバーセキュリティ・ディレクターとして、SolarWindsに対するサイバー攻撃やExchangeサーバーのハッキングに関する政府の対応を指揮する役割を担っていた。

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バイデン大統領はさらに、米国土安全保障省(DHS)の戦略・政策・計画担当次官に、オバマ政権下でサイバーセキュリティ政策を担当していたRob Silvers(ロブ・シルバーズ)氏を指名した。シルバーズ氏は最近、CISAのトップ候補としても名前が挙がっていた

イースターリー氏とシルバーズ氏の役職は、いずれも上院の承認が必要だ。これらの人事については、The Washington Post(ワシントン・ポスト)が最初に報じた

CISAの元ディレクターであるクレブス氏は、今回の人事を「見事な人選」と称賛した。サイバーセキュリティテクノロジー企業CrowdStrikeの元幹部でSilverado Policy Acceleratorの会長であるDmitri Alperovitch(ドミトリ・アルペロビッチ)氏は、今回の人事を「サイバー分野におけるドリームチーム」と称した。アルペロビッチ氏は、ツイートで次のように述べている。「(バイデン)政権は、アン・ ニューバーガー氏と並んでサイバー・オペレーション、政策、戦略を担当するのに、これ以上有能で経験豊富な3人を選ぶことはできませんでした」。

ニューバーガー氏の後任には、ホワイトハウスのサイバーセキュリティ担当だったRob Joyce(ロブ・ジョイス)氏が就任する。ジョイス氏は、2021年初めにロンドンの米国大使館での勤務から復帰し、NSAの新しいサイバーセキュリティ・ディレクターを務めている。

先週、ホワイトハウスは米国議会に対して、国土安全保障省の防衛力強化とサイバーセキュリティ人材の雇用拡大のため、2022年の新規予算として1億1000万ドル(約120億3000万円)を要求した。CISAは2020年、何人かの幹部がトランプ政権に解雇されたり、民間企業に移ったりして、幹部職員が流出していた。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:ジョー・バイデンアメリカ米国家安全保障局 / NSA

画像クレジット:Bronte Wittpenn/Bloomberg / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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