本日、中小企業向けのバックオフィスサービスBizerを提供するビズグラウンドがセールスフォース・ベンチャーズとインキュベイトファンドより1億円を調達したことを発表した。Bizerは総務、人事労務、経理の担当者がいない規模の小さい企業でも、バックオフィス業務を簡単に進めるためのサービスを提供している。会社運営に必要な業務を分かりやすくタスク化したり、必要な項目を入力するだけで役所への提出書類を作成したりすることができる。また、Bizerに登録している士業の専門家に会社の経理や労務などに関する相談や業務を依頼することも可能だ。今回、ビズグラウンドのCEOである畠山友一氏に資金調達までの経緯とこれからの事業計画について聞いた。
今回の資金調達の目的は「他のプレイヤーを巻き込み、法人向けプラットフォームとして確立するためです」と畠山氏は話す。Bizerの主要機能である「ダンドリ」は、会社運営で発生する各業務のタスクを洗い出し、労務などの専門家でなくても手順に従うだけで業務をこなすことを支援するサービスだが、タスクの中にはBizerだけで完結しないものもある。例えば、新規に従業員を雇用した場合、社会保険などの手続きに必要な資料作成、そして名刺作成やメールアカウントの開設などのタスクを提示する所までBizerで担うことができる。しかし、もし名刺が必要な場合は、外部の印刷業者などに発注する必要がある。そこでBizerはそのような業務を依頼できる外部サービスと提携し、会社運営に関わる作業をワンストップで完結できるプラットフォームを目指すという。
Bizerは2014年5月からサービスの提供を開始し、Bizerで行える業務も会社設立、従業員の労務管理からオフィス移転まで多岐に渡るようになり、提携する外部サービスも30社を超えた。Bizerの会員はディスカウント価格で、オフィスを移転する際の不動産仲介や従業員向けの生命保険といった多様なサービスを利用できるという。このような提携サービス先を充実させること、そして現在のクライアント数を600社から1万社に押し上げることが目標だと畠山氏は言う。
そのために今後はシステムの開発体制の強化とマーケティングに力を入れていくという。特に会社設立サービスを浸透させたい考えだ。現在人々の働き方は多様化し、フリーランスで働く人が増えている。今後はそのような人たちの事業が成長し、法人を立ち上げる人も増えると畠山氏は見込んでいる。Bizerはこれまで積極的にイベントに参加し、口コミで認知度を高めてきたが、今後もマーケティング施策を講じてリーチを広げる考えだ。
また今日からBizerのインターフェイスを大幅にリニューアルしたそうだ。「クライアントは様々な用途でBizerを利用しに訪れるため、Bizerでできることがひと目で分かるようなデザインに変更しました」と畠山氏は説明する。業務のために「ダンドリ」機能を利用している人や、利用可能な提携サービスを探しにきている人、弁護士や税理士に相談しにきている人とBizerを訪れる目的は一通りではない。それらの人が目的のものをすぐに見つけることができること、そして他の機能も一覧で分かるインターフェイスにしたという。また今回、30日間の無料トライアルを提供しBizerを試すきっかけにしてほしいと話す。
今回資金調達先の一社にセールスフォースを選んだ理由について畠山氏は「セールスフォースはB2BのSaaSとして今の地位を築いた実績があるからです」と説明する。必ずしもBizerにもあてはまるというわけではないが、今後Bizerのグロースの過程で直面する課題を解決するための糸口を見つける助けになると考えているという。また、Bizerは中小企業向けのサービスを提供し、セールスフォースは基本的には大手企業を対象としている。互いがリーチできていない企業をカバーしていることで、ゆくゆくは互いに協力できることが増えるだろうと話す。
医療の分野では、複数の医師に「セカンドオピニオン」を仰ぐことが普及してきたが、士業の相談をする際には、紹介された人や最初の人の提案を鵜呑みにしがちだ。特にスタートアップはそもそも相談する人がおらず、従業員が増えた場合の就業規則やサービスの利用規約の制定などがずさんになりがちだと畠山氏は指摘する。それぞれの士業を担う人の専門分野や実績を透明化することで、適切なアドバイスが得られ各企業が事業に集中できるようにすること、そして意欲のある人が簡単に起業できる環境を整えていきたいと話す。