バブルから身を守る堀を作れ:現代の金融環境を生き抜く

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編集部注:Pravin VaziraniはMenlo Venturesのマネージング・ディレクター。クラウド、SaaS、およびEコマース分野を専門とする。現在彼の投資先および役員を務める企業は:Carbonite (NASDAQ: CARB), FiveStars, Glympse, Lumosity, Nexenta, Poshmark, Stance, The Black Tux, およびvArmour。

2週間前、NASDAQは2000年3月の史上最高値を更新した。一方、評価額10億ドル以上の「ユニコーン」非公開企業は現在50社以上ある。非公開テクノロジー企業はかつてないほど簡単に早く資金を利用できるようになった ― 評価額1億ドル以上(15年前なら「超弩級」IPOと考えられていた)の資金調達ラウンドは、今や非公開企業では当たり前になりつつある。

われわれは本当に1999年のように盛り上がっているのだろうか? これはブームなのかバブルなのか?そして何よりも大切なのは、今日の起業家がどうこれに対処すべきなのかである。

初期から成長期のIT企業に焦点を合わせた4億ドルのファンド、Menlo Ventures XIIを完了したばかりのわれわれは、そんな疑問についてしばらく考えてみた。当社の39年に及ぶ経験の中で一つ明らかな事実は、テクノロジーは循環的ビジネスであるということだ。過去の時代と比較する誘惑にかられるものの、今われわれがサイクルのどこにいるかを正確に知ることは著しく困難ないしは不可能である。現在と1990年代の間には一定の類似性もあるが、重大な違いがいくつかある。

第一に、今日のインターネットビジネスモデルは、十分な検査を受け、十分に理解されている。広告、プレミアム定期購読サービスやマーケットプレイス取引手数料等手段はどうあれ、「人数」を収益化する方法は多くの企業によって正確に示されている。

第二に、2015年のインターネットユーザー数は1999年のおよそ10倍であり、そのユーザーたちは当時よりも10倍オンラインでお金を使っている。2015年に世界で15億人いるスマートフォンユーザーはもちろん当時存在しなかった。UberやPoshmarkのような会社は1999年には生まれようもなかった。こうして、オンラインで時間もお金も費やすことに慣れたユーザーを収益化する膨大なチヤンスが生まれた。

スフレを焼く時に(オーブンが強力だというだけの理由で)いきなり260度まで温度を上げることは、質の高い商品を早く作る方法ではない。

そして、今日の急成長IT企業の評価額を高すぎると考える向きもあるかもしれないが、1999年と比べれば影が薄い。1999年のテク系IPOの年間売上中央値は1200万ドルで、評価額の対売上倍率の中央値は26.5倍だった。2014年には、年間売上9000万ドルで倍率は6.2倍だった。

しかも今は、アクセス可能なオンライン市場はずっと大きく、モバイルエコシステムは繁栄し、ビジネスモデルも確立している。われわれが向かっているのは継続するブームであり崩壊ではないという事実を裏付けている。

しかし、公開非公開を問わず株式市場が短期的にどう振舞うかを知ることは不可能だ。この内在する不確定さを踏まえると、本当の問題は企業がどうこれに対処するべきかにある。

会社の周囲に堀を作れ

注目されている私企業にとって、今日の有利な金融環境を活用することは賢明な行動である。Menlo Venturesは、Uber、MachineZone、Dropcam、Warby Parker等業界をリードする企業に投資する幸運に恵まれ、当社の初期投資より著しく高い評価額で大型調達ラウンドを成功させた。

大型の調達ラウンドを実施することは、会社を作りそれを守る効果的な方法だ。もし今日の資金環境が悪化すれば、後を追うライバルたちは資金調達が困難になる。

現状がいつまでも続くと思うな

テクノロジー界で唯一明白な事実は「変化」だ ― 今日のいわゆる「バブル」市場は一夜のうちに弾けるかもしれない。成長を加速するための選択肢は、強力な資金調達環境に基づき〈機を見て〉実行することが重要である。

しかし、将来を実現するために益々大規模で高額になるラウンドに頼る事業計画は、大惨事を意味することもある。もしあなたが自分の周囲に深い堀を作ることに固執しすぎると、自分自身がそこへ落ちてしまうかもしれない。

本末転倒の経営判断をするな

起業家は、調達できる資金の額でビジネスのやり方が決まると考えてしまうことがあまりに多い ― 本来はその逆だ。どの会社にも成長するために守るべき自然な歩調があり、それは外部の資金環境にはよらない。腕利きのエンジニアやセールスマンやマーケティング幹部を、与えられた時間に何人雇って教育できるかには限界がある ― 雇用を急ぎすぎることは、採用基準のハードルを下げることを意味する。

消費者を相手にするビジネスでは、ユーザー体験やユーザー維持などの基本的事柄に取り組むべき時期に、有料マーケティングを使った超速成長モードに入ることは長期的に有害である可能性が高い。スフレを焼く時に(オーブンが強力だというだけの理由で)いきなり260度まで温度を上げることは、質の高い商品を早く作る方法ではない。

どの会社にとっても、正しい判断は状況によってまちまちであり、特定の市場、競合状態その他無数の要因によって異なる。起業家と取締役会にとって重要なのは、常に自分たちの状況を評価し続け、マクロ環境と企業に特異な要素の両方を考慮して、長期的価値を最大化する決断を下すことだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。