[筆者: Harry-Stebbings](ベンチャーキャピタルに関するポッドキャストThe Twenty Minute VCのファウンダーでホスト。)
最近のインタビューで、“ビッグデータはいよいよこれからが本番だ”、と語ったFirstMark CapitalのMatt Turckによると、2010年にはシリーズA市場のわずか2.5%にすぎなかったビッグデータへの投資が、今ではVCたちの投資全体の7.5を超えている。そもそも、ビッグデータ分析という業態は、今どんな段階にあるのか? そして最近のAI熱は、ビッグデータと密接な関係があるのか?
エコシステムの成熟
ビッグデータのこれまでの進化には、三つの段階がある。まず、その形成期は、LinkedIn, Facebook, Googleなど少数の大手インターネット企業が支配した。彼らのもとに大量のデータセットが集まり、彼らにはレガシーのインフラストラクチャがないから身軽で、しかも優秀な技術者がたくさん集まった。彼らは、これからの世界が必要とする技術を作っていった。
そして次の第二の段階では、これら大手インターネット企業の技術者たちがスピンオフして自分のスタートアップを作り始めた。彼ら未来のユニコーン(10億ドル企業)候補たちは、彼らと同じくレガシーのインフラストラクチャのない企業を顧客にしていった。Turckはこう言う: “レガシーのインフラストラクチャがないことこそが、彼らのイノベーションの基盤だった”。そして彼らにとってイノベーションの最先端といえば、ビッグデータスタートアップの初期の顧客になることだった。
そして、今現在の第三段階が、大きな課題をもたらしている。さまざまな企業がビッグデータ技術に関心を持ち、採用を始めているが、それ自体はまだ、ごくごく初期的な段階なのだ。
第二段階のときと違って、今の企業は多くがレガシーのインフラストラクチャを抱えているから、ビッグデータ革命によって失うものも多い。彼らの既存のインフラストラクチャは、企業の現状をまがりなりにも支えているから、ビッグデータにとって大きなハードルになる。ビッグデータには、彼らの経営の核であるレガシーのインフラストラクチャを捨ててもよいほどの価値があることを、どうやって説得すべきか?
Turckは語る: “これからのスタートアップの仕事は、データによって企業経営がよりスマートになることを、顧客に理解してもらうことだ”。また、“大企業が率先してビッグデータ分析を試行的に導入していくこと、スタートアップがそこから食い込んでいくことも重要だ”。
AI
AIの最近の進歩と、それに対する関心の高まりは、ビッグデータがなければありえなかった。Turckは極論する: “AIはビッグデータの子どもだ”。たとえば深層学習(deep learning)のアルゴリズムが作られたのは数十年前だが、それが今や、大量のデータ集合を扱う実用技術になり、コストも実用レベルまで下がってきている”。だから、“AIが可利用性の高い実用技術へと開花結実してきたのも、ビッグデータのおかげだ”。
ビッグデータエコシステムの成熟と進化がこれからも続けば、AIがビッグデータのアプリケーション層の成長を導く触媒になるだろう。でも、ビッグデータは、今はまだまだ初期的な段階だから、今後のアプリケーションの多様化とともに、ビジネス機会としてのビッグデータはますます大きくなっていくだろう。