つい先日、ヤフーが新卒一括採用を廃止し、30歳以下の応募を通年で受け付ける「ポテンシャル採用」を開始するというニュースが話題になった。学生の就職活動における新卒一括採用という慣習に一石を投じるニュースとして受け止めた人も多いだろう。近年では学生が働く前に会社での仕事を体験できるインターンシップ制度を実施する企業も増え、学生の就職活動のあり方は少しづつ変わろうとしているようだ。
このタイミングで、プロフェッショナル人材向けの転職サービス「ビズリーチ」や戦略人事クラウド「HRMOS(ハーモス)」などを手がけるビズリーチは、学生向けのキャリア支援分野に本格参入する。本日ビズリーチは学生とOB/OGとをつなぐ新サービス「ビズリーチ・キャンパス」を正式ローンチした。そしてその新サービスを加速させるため、総額11.5億円の資金調達を実施したことを発表した。
引受先は、東京理科大学インベストメント・マネジメント、グロービス・キャピタル・パートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、SBIインベストメントの5社だ。
引受先の1社、東京理科大学インベストメント・マネジメントは、東京理科大学の収益事業を統括する事業会社として2014年に設立した会社だが、今回東京理科大学は資金面のみならず、ビズリーチと連携した取り組みを実施する。具体的には、東京理科大学の就職課とビズリーチが連携し、在校生に「ビズリーチ・キャンパス」の利用促進を図るほか、ビジネスの第一線で活躍する社会人などが登壇するキャリア教育の講座を実施していくという。東京理科大学インベストメント・マネジメントにとって、ビズリーチへの投資が第1号案件となる。
OB/OGと学生をつなげる
大学生は就職活動の時期になって初めてキャリアのことを考え出し、そのため世の中にある様々な仕事を知ったり、自分の中に就業観を育てる期間が短いとビズリーチの代表取締役、南壮一郎氏は指摘する。これは仕事とのミスマッチを引き起こし、会社にとっても、学生にとっても無駄が多い。今回新たにローンチした「ビズリーチ・キャンパス」では、学生が就職活動を始める前からでも、社会人との接点を持ち、働くことについて考えるきっかけを提供することを目指していると南氏は話す。
また、これまで学生がOB/OG訪問をする際、紙の名簿でOB/OGを探したり、伝手や人脈を頼りに探したりする方法が多かった。「ビズリーチ・キャンパス」では、オンライン上で容易に学生とOB/OGが知り合う場を提供するという。
学生は「ビズリーチ・キャンパス」に登録し、同じ大学を卒業したOB/OGのプロフィールを検索することができる。社会人のプロフィールには、現在の勤め先や仕事内容を始め、在学時の専攻やサークル活動などが記載されている。学生は気になるOB/OGに訪問依頼を送り、OB/OGが承認すると、メッセージを送ることができるという仕組みだ。
最初は、OB/OGが多く登録している12大学からサービスを提供する。まずは、早稲田大学、慶應義塾大学、大阪大学、東京大学、京都大学、東京工業大学、一橋大学、名古屋大学、名古屋工業大学、九州大学、 九州工業大学、東京理科大学で展開する。OB/OGが多く集まった時点で他大学にもサービスを展開していく予定だ。
「ビズリーチ・キャンパス」は今年の7月からベータ版をローンチしていて、約9000名の学生、1万2500名以上のOB/OGが登録しているという。社会人の登録に際しては、ビズリーチが持つ転職サービスに登録している社会人に声をかけたそうだ。南氏は、社会人からは母校に恩返ししたいという声が多くあり、母校の学生からならOB/OG訪問を受けることを快く思う人が多いと話す。
また、「ビズリーチ・キャンパス」は企業側から採用情報などを学生に発信できるプラットフォームの機能も兼ねる。学生にOB/OG訪問会や交流会などのイベント情報を送ることや、その会社で働くOB/OGには企業公式に設定し、学生との接点を持つきっかけを作ることができるという。
ビズリーチ・キャンパスのビジネスモデルは、そうした企業がこのネットワークを通じて自社の情報を学生に発信したり、ブランディングを行ったりするために使用する企業スポンサーを得る形だ。現在、ビズリーチ・キャンパスに登録している企業は120社以上あるという。
南氏は、アメリカのタフツ大学の出身だが、大学には講義を聞く社会人は多く、また現役の社会人が自分の専門分野のことを大学で教える講義もあり、社会人との接点が多くあったと話す。また、在学中はウォール街やシリコンバレーの企業でインターンシップを経験した。卒業後は証券会社に勤め、ビズリーチを創業することになったが、学生時代のそういった経験がその後の人生のキャリア形成に大きく影響したと南氏は振り返る。「ビズリーチ・キャンパスでは、学生が早期から自分のキャリアについて考え、多様な選択肢や可能性を知る機会を提供したい」と南氏は話している。