またビッグテックCEOたちの重要な公聴会が開かれるようだ。
米国上院通商委員会は、米国時間9月29日、Twitter(ツイッター)のJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏、Facebook(フェイスブック)のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏、 Alphabet(アルファベット)のCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏の召喚計画を進めることを決議した(Reuters記事)。ソーシャルメディアの最高責任者を召喚するというこの異例の決定には、米国の近代史上最も物議をかもしている選挙を目前に控える時期に、また1つ政治的に不安定なイベントを追加した。
この公聴会の目玉は、利用者が制作したコンテンツに責任を負わずに済むようオンライン・プラットフォームを保護する極めて重要な法律Communications Decency Act(通信品位法)第230条(EFF記事)だ。
この問題を知らない人にはつまらない話に聞こえるだろうが、この法律は、政治的にもテック産業の観点からも、爆発的な影響力を有する。法的保護の小さな変更にも見えるこの問題が、今後に大きな動揺を与える恐れ(未訳記事)がある。
同委員会の議長Roger Wicker(ロジャー・ウィッカー)氏は、米国人が「これらの企業のトップからそのコンテンツのモデレーション業務に関して十分な説明を受ける」ためには、この公聴会の開催が「必須」だと訴える。
驚くべきことに、これらのCEOの召喚は全員一致で採択された。当初は反対していた民主党の重鎮Maria Cantwell(マリア・キャントウェル)氏も、ビッグテック企業の召喚に賛成票を投じている。
キャントウェル氏は当初(The Hill記事)、召喚状を発行する考えについて、プラットフォームから偽情報と嫌がらせを排除する各企業の「努力を萎縮させる」ものとして「異常」な措置と断じていた。
上院通称委員会には、共和党からはウィッカー氏の他、Ted Cruz(テッド・クルーズ)氏、John Thune(ジョン・スーン)氏、Rick Scott(リック・スコット)氏が参加している。民主党議員からは、キャントウェル氏をはじめ、Amy Klobuchar(エイミー・クロブシャー)氏、Brian Schatz(ブライアン・シャーツ)氏、Kyrsten Sinema(キルステン・シネマ)氏が加わっている。
第230条はどうなるのか?
第230条は一般に、FacebookのアカウントやコメントからYelp(イェルプ)やAmazon(アマゾン)のレビューに至るまで、ソーシャルなインターネットを可能にする法的基盤だと考えられている。短い条文(EFF記事)だが、2020年になってから、ビッグテック企業の勢力抑制に(少なくとも抑制するとの脅しのために)政治家たちがこれを利用しようと飛びつき、論争の的になってきた。
共和党は、反保守への偏向(フェイスブックなどのプラットフォームに遍在する右傾コンテンツ(Twitter投稿)が日常的に繰り返している右派の決まり文句)を黙認しているソーシャルメディア企業を懲らしめる手段として第230条の廃止を目指している。
注目すべきは、トランプ大統領と司法長官のWilliam Barr(ウィリアム・バー)氏が第230条の攻撃に特に熱心な点だ。2020年の初め、トランプ大統領は自らの偽情報を弁護しようと、この条項を危険にさらす大統領令を発してTwitterに喧嘩を売った(未訳記事)。この大統領令にはほとんど効力はないものの、トランプの第230条への執着には、バー氏の司法省と議会の共和党議員を熱烈な追随を促す意図があった。さらに大統領令は、FCC(米連邦通信委員会)も丸め込んだ。
2020年6月、米司法省は同条項の効力を弱めようと「具体的な修正案」の原案を打ち出し、これはプラットフォームから児童虐待などの「違法コンテンツ」を排除する取り組みだと主張した。2020年10月に、バー長官はこの提案を含む法案を議会に提出(CNBC記事)している。
民主党も最近まで第230条追究の考えを温めてきた(未訳記事)が、理由は異なる(Bloomberg記事)。右派の不満はもっぱら政治による検閲にあるが、民主党議員は第230条を、ソーシャルプラットフォームでいまも盛んにはびこる偽情報や有害コンテンツに対する責任をプラットフォームに持たせるための手段として期待している。
第230条に狙いを定めた法案
共和党のLindsey Graham(リンゼイ・グラハム)上院議員が提出したEARN IT法案が、おそらく第230条を標的にした法案の中で最も有名なものだろう。この法案をトーンダウンさせたもの(The Verge記事)が委員会に提出(司法委員会サイト)されたが、上院本会議にはまだかけられていない。
2020年6月、ともに召喚状を発行する通商委員会のメンバー、ジョン・スーン氏とブライアン・シャーツ氏の両上院議員は、PACT法案として知られる(未訳記事)2党合同の第230条修正案を提出した。おもにモデレーションの透明化に重点を置いている。
事態をさらに複雑にしているのが、もうひとつのグラハム氏が提出した第230条に関する法案(上院委員会サイト)だ。これは今月、トランプが共和党に「今すぐ第230条を廃止しろ」と命じた数時間後(Politico記事)に提出された。こちらについては2党合同ではない。
次なる注目のビッグテック公聴会で何が起きようが、またこれら第230条関連の法案がどう動こうが、まだ明確な内容は見えないものの、ビッグテック企業に与えられた決定的な法的保護を、両党ともがなんとかしたいと躍起になっていることは確かだ。
ハッキリしているのは、このような基本法をいじくれば、今私たちが慣れ親しんでいるインターネットに連鎖的な大影響がもたらされるということだ。仮に修正するにしても、軽々に取り扱うべきではない。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:通信品位法第230条、ドナルド・トランプ、SNS
画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch
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(翻訳:金井哲夫)