フランスでは1月だけで5社のユニコーン誕生、その5社目は企業支出管理プラットフォームSpendesk

フィンテックのスタートアップSpendeskがシリーズCラウンドのエクステンションを発表した。Tiger Globalが1億1400万ドル(約130億8800万円)を投資する。今回の資金調達ラウンドを受けて、同社は評価額が11億4000万ドル(約1308億7200万円)に達したと述べた。

つまり、Spendeskはフランスのテックエコシステムにおけるユニコーンの仲間入りをしたわけだ。フランスではここ数カ月、資金調達のニュースが加速している。2022年1月だけで、スタートアップ5社がユニコーンのステータスに到達したと発表した。PayFitAnkorstoreQontoExotec、そしてこのSpendeskだ。

整備品のスマートフォンや電子機器を販売するeコマースマーケットプレイスのBack Marketも大型の資金調達ラウンドを実施し、評価額は57億ドル(約6540億円)となった。

Spendeskに話を戻そう。同社はオールインワンの企業支出管理プラットフォームをヨーロッパの中規模企業向けに提供している。もともとはオンライン決済用のバーチャルカードを手がけていたが、企業の支出に関するあらゆる事柄を扱えるようにプロダクトを拡張した。

Spendeskを利用している顧客は従業員用の物理カードを注文できる。従業員はこのプラットフォームで未処理の請求書の支払い、経費報告書の提出、予算管理、支出報告書の作成ができる。Spendeskは1つのサービスであらゆることをできるようにすることで、会計や承認全般をシンプルにし、自由にお金を動かせるようにしたいと考えている。

Spendeskは同社プラットフォームを「7in1の支出管理ソリューション」と定義している。つまりSpendeskは従業員用のデビットカードを注文するだけのプロダクトではないということだ。

共同創業者でCEOのRodolphe Ardant(ロドルフ・アルダン)氏は筆者に対し「我々は最初からこのゴールを考えていました。このプラットフォーム、この運用システムで、支出を管理できるようにしたかったのです。プロダクトに取り組み始めた時点で、それぞれのユースケースを考えてそれに合うワークフローを設計しました」と述べた。

特に、Spendeskはきちんとした社内プロセスの確立に役立つ。チームの予算を決め、高額支出の際の複雑な承認ワークフローを構築し、VAT差し引きのような面倒なタスクを自動化できる。

「我々は中規模のクライアントをターゲットにしています。従業員数が50〜1000人の企業です。これより大規模な企業も小規模な企業も、少数ながらクライアントになっています」とアルダン氏はいう。

現在、同社には3500社のクライアントがいる。そのおよそ半数はフランスの企業で、それ以外の大半はドイツと英国の企業だ。2021年だけで、クライアントはSpendeskを通じて30億ユーロ(約3930億円)の支払いを処理した。

Spendeskは財務スタックの中心となる位置づけであるため、一方では銀行、もう一方ではERPプロダクトというように、他の財務ツールと完全に連携する必要がある。

同社は現在、XeroやDatevなどヨーロッパの企業でよく使われている会計ツールの多くに対応している。取引のバッチを書き出して、SageやCegidなどの会計ソフトウェアソリューションに読み込むこともできる。

Spendeskは銀行口座との統合の自動化にも取り組んでいる。これは複数の銀行口座がある企業には特に便利だ。例えばドイツの業者に支払いをする際に、ドイツの銀行口座とSpendeskアカウントの間の振替を自動で実行するルールを設定するといったことが考えられる。

画像クレジット:Spendesk

ヨーロッパにおける支出管理

ヨーロッパにおける支出管理ソリューションはSpendeskだけではない。最近47億ドル(約5381億5000万円)の評価額に達したPleoや、2021年に1億8000万ドル(約206億1000万円)を調達して豊富な資金を有するSoldoなどの競合がある、

米国でも同様に、BrexRampなどの企業が高い評価額に達している。ただしSpendeskは自社が米国のスタートアップと同じ位置づけであるとは考えていない。

アルダン氏は筆者に対し「米国市場では支出管理業界と呼ぶようなものではありません。コーポレートカード業界です。BrexやRampなどのプレイヤーは自社を決済手段と位置づけています。ヨーロッパの企業文化はクレジットではなく引き落としの文化です。我々は決済手段ではなくプロセスを提供しています」と述べた。

プロダクトの位置づけに若干の違いがあるため、ヨーロッパの支出管理スアートアップが米国に進出して成功するか、その逆はどうか、興味を持って見ていきたい。

ビジネスモデルについても、Spendeskは自社を継続サブスクリプションのSaaS企業であると考えている。同社は売上の具体的な数字を共有していない。アルダン氏はSpendeskの売上について「毎年、2倍以上になっている」とだけ述べた。

今回の資金調達ラウンドで、Spendeskは今後2年間で従業員数を3倍にする計画だ。2023年末までに従業員数を1000人にすることを予定している。

画像クレジット:Spendesk

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(文:Romain Dillet、翻訳:Kaori Koyama)

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TechCrunch Japan

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