プッシュ通知は次世代のプラットホームだ…pullからpushに変わるネットインタフェイス

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[筆者: Anish Acharya]
編集者注記: Anish Acharyaは(自分宛ての)メッセージ集積アプリSnowballの協同ファウンダでCEO。

世の中がWebからモバイルへ移行していくに伴い、人びとがモバイルのプロダクトやサービスを発見する方法や、日々のデジタル人生の役に立つものを見つけたりアクセスしたりするための方法について、われわれは真剣に考えざるをえなくなっている。

Webサービスに関しては(主にGoogleの)検索が長年、アクセスと発見のための拠点だった。このモデルはいわゆるプル(pull)型で、必要に応じて人間ユーザがWebサイト上に情報を見つけなければならない。FacebookやAmazonのような全カテゴリ型*の巨大サービスがトラフィックと売上の多くを専有している状態では、このモデルが十分に有効だった。Googleは情報の配布チャネルの多くを専有することによって、嬉々として利益を貪った。モバイルの世界も、最初はプル型で始まった。発見とアクセスはその大半を、アプリストアと大量の“アプリ網”の組み合わせが提供した。〔*: category killer, 特定のカテゴリーに限定されない 〕

しかしいくつかの重要なトレンドがこのモデルを失敗に追い込み、状況は変わり始めた。その最大の要因は、今人びとが利用でき、日常的にアクセスしている情報の量だ。一台の携帯電話やスマートフォンの上に何百ものアプリがあり、そのうちよく利用するものはそんなに多くなくても、その中にはもはや、全カテゴリ型と呼べるものはない。むしろ消費者は、いろんなアプリを取っ替え引っ替えしながら使わなければならない。

しかし、さらに重要なトレンドは、インターネットの利用や参加がプル型ではなく、通知(notifications, ノーティフィケーション)をベースとするプッシュ(push)型になってきたことだ。広大なアプリ網を自分で嗅ぎまわることは少なくなり、むしろユーザに通知をくれるアプリに、ユーザの関心と参加性(とお金)が向かうようになった。ただし、通知をやりすぎると、嫌われてアンインストールされるのだが。

このトレンドの延長線を未来へと引くと、未来のモバイルデバイスのアクセスと発見は通知がベースになる。スマートフォンとインターネットを介するすべての対話的行為は、通知がその出発点(ないし“フロントドア”…玄関ドア)になる。

この変化を加速している重要なトレンドがいくつかある。上述のような情報の量の爆発的な増大によって、ユーザがそれらをプルして適切な情報を見つけるのはほとんど無理になりつつあり、そのためプッシュ通知の量が急激に増えている。弊社Snowballのデータでは、一台のAndroidスマートフォンに一日にやってくる通知は、60件を超えている。

そしてそれとともに、通知がより豊かなコンテンツやアクションをユーザに届けるようになっている。今ではiOSでもAndroidでも、ユーザが通知パネル上からいろんなアクションにアクセス〜参加する形が増えている。そうなると、自機上にあるアプリにすら行かない。従来のようにメールを貯めこむよりは、iMesageで即、通知に応答した方が簡単だ。スマートウォッチなどのインターネット接続型デバイスが普及すれば、さらにこういう、“アプリ要らず”の軽快な対話が増える。そこでアプリのオペレータはこれまでのようにアプリのDAU(daily active users)ではなく、ユーザのタッチポイント(コンタクトポイント)を重視するようになっている。〔*: アクションといっても、主に広告への応答。〕

eコマースなどの商用サービスも、その“フロントドア”はWebからモバイルアプリの通知へと変わりつつある。そこに、今後の大きな商業ビジネスの機会がある。通知が、次世代型モバイル企業のユーザエンゲージメント(ユーザの参加性)と売上の源泉になる。

Facebookがメッセンジャー(Messenger)を商用のプラットホームにしようとしているのも、以上のようなことと関係がある。このことに関し、Benedict Evansが良い記事を書いている。

メッセージングから始めるのは、論理的にも妥当だ。Snowballのデータによると、通知の60%以上がソーシャルメッセージだ(1日にほぼ40件)。Facebook Messengerは、通知パネルを取り込む気か?

うち(Snowball)のデータによると、通知の60%が上で述べたようにソーシャルメッセージだが、一人のユーザが毎週、平均5.5個のメッセージングアプリで対話をしている(メールを除く)。5つ以上のメッセージングアプリを使ってる、とは言っても、FacebookとWhatsAppが全体の79%と、圧倒的にダントツだ。異様な高さだね。

通知は、将来のアプリケーションのメインのインタフェイスになる。だからFacebookは果敢にも、それを手に入れたのだ。どんな企業でも、モバイルの上での成功はそこで交わされるソーシャルメッセージの重視にかかっている。通知の圧倒的な量が、ソーシャルメッセージなのだから。今目の前で起きているのは、(通知機能を介しての)OSの収益化に向けての第一歩が始まっていることと、新しい重要な流通チャネルの勃興だ。アプリもプラットホームも、そのことを真剣に考えるべきだ。

【原著者注記】

*Snowballのユーザデータが必ずしも全体を表しているわけではないが、一人のユーザが使用しているメッセージングアプリの数(週平均5.5個)は、実態とそう遠くないと思う。ほとんどのユーザが毎週、複数のメッセージアプリを使っている。分析対象となったSnowballのユーザは数十万人、メッセージの数は数百万だ。

Radu Bercan / Shutterstock.com

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

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