【編集部注】著者Ajay ChopraはPinnacle Systemsを在宅で共同設立し、数十億ドル規模の株式会社に育てた。その後Trinity Venturesのベンチャーキャピタリストになった。
約13年前、私は悩ましい判断を迫られた。私の会社Pinnacle Systemsをプライベートエクイティ(PE)に売却するか、それとも他の大きな株式会社に売るか、というものだ。どちらも私の従業員を大事に扱ってくれるように感じた(確実にそうなるよう、私はかなりハードに交渉した)。そしてどちらもNASDAQでの株価よりもずいぶん高い額を提示してくれた。
初めての子どものように感じていた会社をリビングルームで育て、公開企業へとはぐくみ、私は次のステップに進む準備ができていた。私は最終的に戦略的売却を選択したが、すでにPE企業とテック企業のエグジット分野で興っていた原動力によって関心の的となったプロセスを経なければならなかった。
昔は、PEへの売却というと往々にして汚名を伴った。いい取引条件であっても、私はそのように感じた。加えて、PEへのエグジットは、しっかりとした年間売上と利益を伴っている企業のみが利用でき、これによりスタートアップがこうしたエグジットをとるというのはほとんどできなかった。今日では、PEのバイアウトは、確固たる(たまに素晴らしい)エグジットルートを提供する。また、ありふれたものになりつつあり、2017年にVCがサポートしたエグジットは18.5%にのぼった。
PE会社は幅広いテクノロジー企業に投資している。ここには、極めて評価額の高いユニコーンも含まれ、また、数年前ならPEの関心を引くことはなかったアーリー〜ミッドステージの収益をあげている会社、あげていない会社も含まれる。
さらには、ベンチャーキャピタルとPEの間にひかれていた線もぼやけつつあり、PEはどちらかというとテック企業に、レートステージVCは数十億ドル規模でレートステージにしぼった投資を展開している。ラインがぼやけるにつれ、いくつかのレートステージVCは、戦略的にPEに関係しているスタートアップに関心を示している。最近、我々のポートフォリオにある企業の一つがレートステージVCから投資を受けた。このVCは既存の株主に流動資産を提供し、また会社に投資することで過半数株を取得した。こうした手法は概してPEのバイアウトでみられる。
テック部門におけるPEのバイアウトの高まりは、ほとんどのスタートアップが最終的にIPOはしないという現実を考えた時、創業者にとって実行可能なエグジット選択肢となる(PitchBookによると、過去10年において最終的に株式公開したベンチャー企業は3%のみだった)。
IPOが現実的な長期的選択肢でない場合、残された主なエグジットオプションは通常、他企業への売却となる。しかしながら、過去数年、PEは非公開企業を積極的に買収している。ときどき、かなりの額、あるいは戦略的買収者よりも高い値段で入札している。私のポートフォリオにある一社の場合、PEが戦略的買収者に次いで高い入札額を示し、これにより入札過程において戦略的買収者からの最終価格が引き上がった。
戦略的買収者と交渉する創業者は、最良の結果を引き出すために、PEと接触すべきだ。Silver Lake、Francisco Partners、Thoma Bravo、そしてVistaはテクノロジーにフォーカスしているところで、ほかにPitchBookの年次レポートにもいくつかある。中でもVistaはかなり活発に展開していて、InfobloxやLithium、Marketoなどを含む多くのテック企業を買収している。すべてのVCや戦略的買収者が同じではないように、すべてのPEも同じではない。
数年前、PEのバイアウトは通常大きなディールのみだったとき、すでに成功している企業の強みを持ち込もうと、新たなマネジメントチームがほぼ毎回送り込まれていた。今日では、それぞれのPE会社が独自の戦略を持っているー大規模で利益をあげている企業しか買収しなかったり、また中規模の買収にフォーカスしていたり、またはアーリーステージ企業(通常利益をあげていない)のみ買収するというところもある。これにより我々は次の展開ができる。
アーリーステージのスタートアップで、事業がうまくいっていなくてもPEエグジットを模索できる
多くの読者がレートステージでのPEによる買収に馴染みがあり、逆にアーリーステージでのPEの活動の出現は目新しいものだ。これらのPEは、アーリーステージ資金を調達したものの事業拡大や次のラウンドによる資金調達で困難を抱えているスタートアップの過半数株を買収する。
バイアウト後、これらのPE企業は通常、事業展開や規模拡大のためにマーケティングやセールスのノウハウなど欠如していたもの加えることで価値を上げる。PE企業の最終目的は、自前の運営専門家を創業チームに加えたり、ときにはより強固なものにするために新たに買収した資産をすでに保有する資産と組み合わせたり、あるいは将来の可能性を切り開くために有望そうなプロダクトを倍増させたりする(一方で有望でないものは捨てる)ことで潜在的な資産の価値を増やすことにある。
一般的にはPE企業はその後、より価値を求めて買収した企業を別の企業に売る(通常、戦略的買収者に)。いくつかのケースでは、アーリーステージPE企業が、別の高級市場向けのPEバイアウト企業に売る。これらの買収のいくつかでは、創業者はその企業の少数持分を維持でき、“次のエグジット”までやり抜けることができる。
レーターステージのPEバイアウトと異なり、アーリーステージのPEバイアウトは通常、高額のエグジットとはならない;こうしたエグジットは買収による優秀な人材の獲得から予想される落胆するようなリターンや、それよりも最悪な創業停止というより、概ね創業者のハードワークに対してリターンを提供する手段となる。正しく交渉すれば、PEディールは創業者に次のエグジットに関わる機会をもたらす。
投げ出すために会社を立ち上げる創業者はいない。強い起業家はミッションを現実のものにするために、そして世界にポジティブな影響を与えるために会社を興す。Steve Jobsは「成功する起業家と、そうでない起業家を分かつ要素の半分は純粋な忍耐力だと確信している」と言った。買収は元々のゴールではなかったかもしれない。しかし、それは創業者の従来のミッション追求を刺激するかもしれない。または、新たな価値あるミッションの追求を可能にするだろう。
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(翻訳:Mizoguchi)