国内外のプロフォトグラファーが登録するデータベース&撮影予約サービス「AMI」などを運営する、撮影サービスのスタートアップ、aMiは3月15日、メルカリ、マネックスベンチャーズ、その他エンジェル投資家を引受先とした第三者割当増資等により、シードラウンドでの資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は総額数千万円規模。同時に会社名をFamarryからaMiに変更したことも発表している。
aMiの創業者・藤井悠夏氏はリクルート出身。ゼクシィで営業に携わった後、退職してベトナムのホーチミンとシンガポールでそれぞれ2年弱、ウェディング事業の立ち上げに関わっていた。両都市で盛んだったのが「フォトウェディング」。海外で前撮りするカップルも多く、断崖の上などの絶景やパリのルーブル美術館が夜ライトアップされたタイミングで撮影するといったケースもあるそうだ。
そのフォトウェディングの舞台として日本の人気も高まる中、海外のウェディング撮影希望者と日本のフォトグラファーをマッチングする場や集客ツールがない、と藤井氏が気づいたことが同社立ち上げのきっかけだった。開発が始まったのは2014年末のこと。日本に帰国した藤井氏はエンジェル投資家らから投資を受け、まずはフォトグラファーを登録するデータベースを準備し、2015年初夏にはウェディング撮影予約サービス「Famarry(ファマリー)」ベータ版を、同年9月には正式版をリリースした。
その後、フォトグラファー向け管理ツールのリリース、企業向け撮影サービス提供開始を経て、2017年2月にプロフォトグラファー検索と撮影予約ができるサービス、AMIとしてローンチ。同年7月には家族写真の撮影予約サービス「emily(エミリィ)」もローンチしている。
現在は、AMIを軸にフォトグラファーの空き時間の管理やマッチング支援を行い、Famarryとemilyとの連携によって、ニーズが高く件数の多いウェディング写真や家族写真の撮影の仕事を紹介。撮影を希望するユーザーには、従来のスタジオ撮影などよりはリーズナブルな価格で、プロによる撮影サービスを提供している。
今回の調達資金の使途について、藤井氏は「撮影依頼件数をさらに引き上げることを目指し、ユーザー向けのマーケティングを強化する」と話している。「現在、フォトグラファーの登録数は国内外合わせて700名を超えた。撮影のキャパシティーは充実してきたし、システム構築もある程度行ってきたので、これからはフォトグラファーにより多くの仕事を紹介できる体制を用意したい」(藤井氏)
また、フォトグラファーにとってよりスムーズなマッチングができる環境も整えたい、とも藤井氏は述べた。「請求・決済などの事務作業や、撮影データの納品など、フォトグラファーにとって面倒な手間を軽減するための機能強化を考えている。フォトグラファーが多く登録してくれることで、撮影サービスの質も上がり、結果的にはユーザーも増えて満足度が上がると考えている」(藤井氏)。今後は評価システムを導入し、より評判のよいフォトグラファーがきちんと評価、利用されるような仕組み作りも検討している。
今回のラウンドでリード投資家となるメルカリについては、「スキルを広くマッチングするメルカリアッテを提供する彼らにとって、撮影だけに特化してマーケットを開拓し、そこに最適化したサービスを提供する我々のやっていることを評価してもらえたと考えている」と藤井氏は話す。
また「aMiのマッチングサービスはフォトグラファー視点。フォトグラファーにとって、登録していれば仕事が増えるという状態を作りたい。(ユーザー規模の大きな)メルカリと提携することで、仕事が増えれば」と藤井氏は、提携が実現した場合のシナジーにも期待を込める。
藤井氏は「ユーザーにとって良い撮影体験は、フォトグラファーの質で決まる」と話す。同社によれば国内の撮影市場は約1兆円。そのうちのほとんどはBtoBのビジネスである。収益を上げているのは大手フォトスタジオやエージェント、結婚式場などの既存プレイヤー。例えば結婚式の撮影費用で20〜30万円が式場から請求されても、フォトグラファーの手元にはその1割程度が支払われるだけ、というケースも多く、「フォトグラファーにとってはもちろん、ユーザーにとってもアンハッピー」と藤井氏は言う。
「インターネットの力で双方を直接マッチングできれば、フォトグラファーは収入が上がり、ユーザーは満足のいく撮影体験を得ることができる。現状では、子どもの七五三など、家族の節目の写真は大手のフォトスタジオでの撮影が多いが、ネットなら出張撮影の依頼も安くすることが可能。七五三ならお参りのところから撮影してくれるなど、自然な表情の写真も撮れる。私たちは同じ価格で良い撮影体験を提供できていると自負している」(藤井氏)
Instagramの影響もあり、日本でもユーザーの写真に対するこだわりは上がってきている、と藤井氏は言う。「ただ、フォトグラファーに撮影してもらう文化、ということではまだ日本は遅れている。一方、撮影文化が進んだ欧米や東南アジアでも、まだマッチングサービスが台頭している、というほどではない」(藤井氏)
aMiが提供する各サービスには、海外ユーザーもいる。日本人が海外で撮影したい、というアウトバウンドでも、海外からのユーザーが日本で撮影したい、というインバウンドでもマッチングが可能だ。特にアジア圏に関しては、はじめから英語でもサイトを用意していたので、「海外進出というよりは最初から利用があった」と藤井氏は話す。フォトグラファーの派遣を行うサービス自体は、GMOグループが提供する「出張撮影サービス by GMO」やPIXTAの「fotowa」などもあるが、国内外での撮影に対応しているのはaMiの強みと言えるだろう。
「東南アジアについては、タイからの問い合わせが増えている。富良野のラベンダー畑や渋谷のスクランブル交差点など、日本人にもよく知られたスポットだけでなく、山口県や青森県など日本人は知らない土地での撮影についても問い合わせがある」(藤井氏)
一方、日本人の方もInstagramで話題の海外のスポットで撮影したい、という傾向はあるそうだ。「ニューヨークなどからトレンドが始まった、新生児をアーティスティックに撮影する“NEW BORN”フォトなども日本に入ってきているし、今後さまざまなシチュエーションでフォトグラファーに撮影してもらうことは、さらに増えると思う」(藤井氏)
ウェディング、家族といったC向けだけでなく、企業の利用についても藤井氏はニーズを感じている。「UBER EATS、Airbnbなどのサービスの広がりで、レストランの料理や貸し出す部屋の写真などをより良く撮りたい、ということも増えている。Wantedlyなどの採用サイトやメディア取材で掲載する企業や人の写真も同様だ。そうしたネット上のサービスを提供する企業との連携も進めたい」と藤井氏は語っていた。