eコマース企業が自宅隔離にともなうオンライン買い物ブームを活用し、物理的な小売店舗が再開することで盛り上がりを見せる中、より多くの企業が注目しているのが、オンライン店舗の機能性を高め、買い物客の体験を向上させるにはどうすればよいのかということだ。そこに登場したのが、ロサンゼルスを拠点とするスタートアップのNacelle(ナセル)だ。同社は急成長している「ヘッドレス」eコマーススペースに参入する。
このスタートアップは自分自身をeコマースのためのJAMstack(JavaScript、API、Markupを組み合わせた新しいウェブアプリケーションアーキテクチャ)と呼び、オンラインストアフロントに対して優れたパフォーマンスとスケーラビリティを提供する開発者プラットフォームを開発している。Nacelleは、これまでにIndex VenturesとAccompliceの主導で約480万ドル(約5億2000万円)を調達した。同社の他のエンジェル投資家には、Shopify(ショッピファイ)のJamie Sutton(ジェイミー・サットン)氏、Klaviyo(クラビヨ)のCEOであるAndrew Bialecki(アンドリュー・ビアレッキ)氏そしてAttentiveのCEOであるBrian Long(ブライアン・ロング)氏などが含まれている。
Nacelleはヘッドレス構造を採用したいeコマースブランドのための、より簡単な方法を構築した。ヘッドレスウェブアプリとは、本質的にはサイトのフロントエンドがバックエンドインフラストラクチャから切り離されていることを意味している。そのため、コンテンツをユーザーに届けるためには、専用のフレームワークに完全に頼ることになる。サイトをヘッドレス化することには、パフォーマンスの向上、スケーラビリティの向上、ホスティングコストの削減、開発者エクスペリエンスの合理化などの、いくつかの顕著な利点がある。eコマースサイトの場合、ストアフロントの動作やヘッドレスCMSが動的な在庫やユーザーのショッピングカートの取り扱いに対応する必要があるため、注意すべき複雑さもある程度含まれている。
「私たちは、非常に動的な要件を、JAMstackが提供する通常は静的なシステムとどのように組み合わせるかを自問しました。そうして出来上がったのがNacelleだったのです」とTechCrunchに語ったのはCEOのBrian Anderson(ブライアン・アンダーソン)氏だ。
アンダーソン氏は以前、カスタムストアフロントを開発するShopify Plusの顧客向けの技術代理店を経営していた。このベンチャーが現在の会社の初期顧客の多くになった。Nacelleは最近、同スタートアップの初のマーケティング担当副社長としてKelsey Burnes(ケルシー・バーンズ)氏を採用した。彼女はeコマースプラグインプラットフォームのNosto(ノスト)からやってきた人物だ。
アンダーソン氏はNacelleのプラットフォームの利点を立て続けに説明したが、多くはレイテンシ(待ち時間)の削減の結果であり、その結果でより多くのユーザーが購入を行い、より多くの支払いをするのだと語った。このスタートアップは特にモバイルストアフロントに重点を置いている。アンダーソン氏によれば、ほとんどのデスクトップストアフロントがモバイル版のストアフロントを大幅に上回る性能を提供しているが、モバイル上でNacelleがロード時間を高速化することで、この問題を克服することができると述べている。
同社は当然のことながら、D2Cブランドをかなり重視している。Nacelleの初期の顧客には、D2C寝具のスタートアップであるBoll & Branch(ボール&ブランチ)、心地良いものマーケットプレイスであるBarefoot Dreams(ベアフット・ドリームス)、ファッションブランドのSomething Navy(サムシング・ネイビー)などがある。Nacelleの全体機能のほとんどは、この夏の後半にリリースされる。2020年5月にNacelleを使った男性用トイレタリーのスタートアップであるBallsy(ボルジー)の運用が始まり、コンバージョン数が28%増加したといわれている。
Nacelleだけが、このスペースの新参者というわけではない。2020年5月にCommerce Layer(コマース・レイヤー)が、Benchmarkから600万ドル(約6億5000万円)の資金を調達したと発表した(未訳記事)。