ベルリン発の都市農業スタートアップInfarmは2月26日、JR東日本、紀ノ国屋、そして食品流通会社のムロオと連携し、日本での都市農業の拡大を推進していくことを発表した。
JR東日本とのパートナーシップを通じて、同社の子会社である紀ノ国屋の東京都内のいずれかの店舗で、今年の夏より、Infarmのプラットフォームを使い生産された収穫物を日本の消費者に提供していく。ムロオとの連携では、2021年以降、Infarmの日本全国への段階的な展開を目指す。
2013年に設立されたInfarmは、全体で毎月25万以上の植物を収穫する、同社いわく世界最大の都市農業プラットフォームの1つ。現時点では、デンマーク、フランス、ドイツ、ルクセンブルク、英国、米国、スイスで事業を展開。合計で600以上のモジュール式栽培ユニットを店舗や流通センターで展開している。2019年6月にはAtomicoがリードしたシリーズBラウンドを発表した同社は、累計で1億ドル(約110億円)以上を調達している。
「Farming-as-a-Service」とも呼ぶことのできる、InfarmのBtoBtoCのビジネスモデル。提供するモジュール式ユニットは、スーパーやレストランの中に設置することができ、顧客は自ら収穫し、新鮮な野菜を購入できる。垂直農業のため比較的場所をとらないほか、従来の大規模農業と比較し、水の使用量は約95%、肥料は約75%、輸送コストは約90%削減することに成功しているという。
IoTや機械学習、クラウドの技術を使い、遠隔地より管理・操作ができ、かつ、人里離れた倉庫ではなく人々が住むエリアで展開できることがInfarmの強みだ。
Infarmの共同創業者でCEOのErez Galonska(エレズ・ガロンスカ)氏はTechCrunch Japanの取材に対し、「東京は日本で最も密度の高い都市で、解決しなければならない課題がある。廃棄物、農薬の使用、など」と話す。Galonskaは「加えて、日本人の野菜摂取量は多いため、市場も大きい」と説明。そして、多くの農家は高齢なため、「若い世代に最新技術を使った農業を知ってもらい興味を持って欲しい」(Galonska氏)
ローカライズという観点では、日本で例えばジェノベーゼバジルを販売しても需要があるかわからないため、水菜なのか紫蘇なのか、今年の夏、都内の紀ノ国屋での提供開始に向けて農産物を選定中だ。Galonskaいわく、ムロオとの連携では、流通センターを農産物の栽培・収穫の場にし、そこから都内のスーパーに供給していく。
Infarmは2020年、まずは紀ノ国屋いずれかの店舗での提供を開始し、2021年には都内での拡大を目指す予定だ。