ホテルの一室を月単位で賃貸、居住シェアリングのAnyplaceが約5.7億円を調達

ホテルやサービス付き賃貸物件の一室を月単位で借りられる居住シェアリングサービス「Anyplace」を提供するAnyplaceは5月12日、シリーズAラウンドで総額530万ドル(約5.7億円)を調達したことを明らかにした。

Anyplaceにとっては昨年6月に250万ドル(約2.7億円)を調達したシードラウンドに続く資金調達。今回は不動産テック企業のGA Technologiesがリード投資家を務め、国内VCや事業会社を中心に複数の投資家が参画した。主な投資家は以下の通りだ。

  • GA Technologies
  • ジェイソン・カラカニス氏(既存投資家)
  • 本田圭佑氏(既存投資家)
  • East Ventures(既存投資家)
  • サイバーエージェント(藤田ファンド)
  • 三井住友海上キャピタル
  • デジタルベースキャピタル
  • アカツキ(Heart Driven Fund)
  • メルカリ共同創業者の富島寛氏

Anyplaceは2015年2月にCEOの内藤聡氏らが米国で創業したスタートアップ。現在は北米を中心にヨーロッパや東南アジア、ラテンアメリカなど23ヶ国70都市で事業を展開する。今後は引き続き物件数やユーザー数の拡大を目指すほか、既存ユーザーの利便性を高める仕組みづくりも強化していく方針だ。

リモートワーカーやデジタルノマドのフレキシブルな生活を支援

Anyplaceはもともとサンフランシスコ市内にあるホテルの一室を月額1600ドルで賃貸できるプラットフォームとしてスタートした。最近ではホテルに加えてコリビング物件(コワーキングスペースの賃貸物件版のような居住施設)の登録も増えてきていて、現在はAnyplace上から70都市・1万室以上の部屋を手配できるようになった。

立ち上げの背景やサービスの特徴は以前詳しく紹介した通りだけれど、掲載されている物件は家具やベットなど最低限の設備が整っているほか、水道や電気、ガス、Wi-Fiなどインフラ周りのセットアップも完了済み。清掃などのサービスもついてくるので、ユーザーにとっては通常の賃貸物件に比べて入居前後の負担が少ないのが特徴だ。

月額制なので気に入った場所が見つかれば期間を延長してそこに住み続けるのもありだし、定期的に移動しながらいろいろな土地に住んでみるのも面白いかもしれない。今はリモートワーカーやノマドワーカーなどフレキシブルな生活をしたい人たちがコアユーザーとなっていて、彼ら彼女らが長期間に渡って利用するケースが多いという。

「Airbnbなどのサービスを使っても長期滞在はできるものの、手続きのフローが面倒に感じる人も多い。Anyplaceの特徴はホテルを予約する感覚で、簡単な手続きで賃貸物件を借りれること。月貸しの居住スペースを集めたマーケットプレイスで世界的な認知を取れているものはまだないので、そこを狙っていく」(内藤氏)

内藤氏によると出張や留学の際などに短期的に使うユーザーも全体の3割ほどはいるそう。また場所は移動しないものの、自分で家具を買い揃えるのが面倒なミレニアル世代などが住居を探すために活用する例も少しずつ増えてきているそうだ。

Anyplaceはホテルやコリビング物件を保有する事業者と個人の利用者をマッチングするB2Cのマーケットプレイスのため、C2Cに比べて居住スペースのクオリティがある程度担保されていることもユーザーに刺さっているポイントとのこと。加えてスペース側、利用者側双方において審査・調査を設けることで双方が安心して使えるような仕組みを作っているという。

そのような特性がミレニアル世代やデジタルノマドなどのニーズに合致し、成長段階ではあるものの累計の滞在者数は1000人を突破した。直近では新型コロナウイルスの影響で利用者数はピーク時に比べて減少しているとのことだが(それでも賃貸のニーズはなくならないのでホテルなどに比べると影響は少ないそう)、それ以前はGMV(流通総額)も月次20%成長ペースで増加するなどサービスも軌道に乗りつつあったようだ。

特にここ1年ほどの変化としては、長期利用者が増えたことでユーザーあたりの平均滞在期間が3ヶ月から7ヶ月ほどまで伸びたそう。米国の賃貸は1年契約が多いため、まずは平均滞在期間を12ヶ月以上に伸ばすことが今後のマイルストーンの1つだ。Anyplaceが1年以上に渡って使われ続けるようなサービスになっていけば「賃貸の新しいカテゴリーを作れる」(内藤氏)という。

割引特典やコミュニティなどユーザー向けプログラム拡充へ

サービスの利便性を向上するための取り組みとして引き続きユーザーにとって魅力的なスペースを各地で開拓することに加えて、今後は既存ユーザー向けプログラムの拡充にも力を入れる。

具体的には「使えば使うほど安くなるロイヤリティプログラム」「クリーニングやジムなど提携サービスのディスカウントが受けられる特典プログラム」「ユーザー向けのオンラインコミュニティ」という3つの取り組みを本格化する予定だ。

提携サービスのディスカウントが受けられる仕組みは「Anyplace Perks」という名称でテスト的に着手済み。イメージとしては社員向けの福利厚生サービスのようなものに近く、さまざまなプレイヤーとタッグを組んでAnyplaceのユーザー向けに特別なディスカウントプランを提供する。

「引っ越した先でクリーニング店やジムを探すのはユーザーにとって面倒に感じることの1つ。引っ越すタイミングでサービスが切り替わることが多いので、その際にディスカウントを付与した上で新しい選択肢を紹介する」

「自分たちが目指しているのは単なる賃貸マーケットプレイスではなくライフスタイルを売る会社。(ユーザーが引っ越しをした場合でも)サービスを使ってもらっている限りは、ユーザーとの関係性も途切れずにずっと続いていくので、そのタッチポイントを上手く活かしながらユーザーの満足度を高めていきたい」(内藤氏)

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TechCrunch Japan

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