Googleは、インターネットのツボをよく知ってる企業だ。同社は、無味乾燥な技術試験をおもしろくする方法を思いついた。放送電波周波数帯のホワイトスペースの実用試験、という問題の技術で、ロンドン動物園からミーアキャットやカワウソやガラパゴス大亀の生態をYouTubeへライブでストリーミングすることにしたのだ。
スペクトル(割り当て周波数帯)は、どう転んでも無味な話題だ。ホワイトスペースとなると、さらにニッチだ。各スペクトルの間に干渉防止用に設ける無使用の周波数領域のことを、ホワイトスペースと呼ぶ。
テレビがデジタルになってからは電波の干渉という問題はほとんどなくなり、業界の各方面からホワイトスペースを使わせろという声がわき起こってきた。インターネットの接続性を広げたいGoogleも、当然その一員だ。ホワイトスペースを使えれば、長距離かつ広域で建物の壁などに妨害されないWiFiを提供できる。Googleは昨年、南アフリカでホワイトスペースの実験試験を行い、10の学校をそのWiFiブロードバンドでインターネットに接続した。
合衆国では2008年にFCCが無使用ホワイトスペースの利用を認めた。イギリスでは政府がホワイトスペースをテレビ局のライセンスから外そうとしているが、まだそれは試行段階だ。Googleが行う動物園からのライブストリーミングも、試行の一環である。イギリスでは、そのほかの試行もいろいろ行われている(後述)。
イギリスの情報通信庁(Ofcom)によると、ホワイトスペースにはいろいろな利用形態がありえる。僻地におけるインターネット接続も、その一つだ。そのほか、WiFi的サービス、ワイヤレスのビデオストリーミング、マシンツーマシン(物のインターネット、IoT)専用の第二インターネット、などなどの候補案がある。
今イギリスではホワイトスペースの実用試験が7つ行われていて、今後もっと増える予定だ。ロンドン動物園とGoogleが行う試験は、今後の絶滅危惧種動物の保護活動への応用が検討されるらしい。またGoogleにとっては、かわいい動物をインターネットにストリーミングすることに、マーケティング的な価値がある。
イギリスの規制当局はホワイトスペースの利用開始を2015年と構想している。それまでに、“実用試験を完了し、政策方針を確定する”つもりだ。でもこれまでは、2013年の供用開始が可能とされていた。2年も遅れた理由は、もっとたくさんのミーアキャットをストリーミングしてからでないと商用利用はできない、と当局が判断したからだ。いや本誌の理解では、当局よりもむしろ、業界側が、もっと多くの可能性を追究したいと望んだのだ。
動物の生態のライブウォッチ以外では、オックスフォードで洪水防止への応用試験、スコットランドでスマートシティ(屋内屋外をインターネットでカバーする)の試験、同じくスコットランドでボートやフェリーの船上でのインターネット接続試験、などが行われている。
これまで行われた実用試験の一覧資料が、ここにある。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))