マイクロソフトがノキアの携帯電話事業を買うしかなかった理由

MicrosoftがNokiaの重要資産を買収したというニュースは、驚きではあったが、実はそうではないかもしれない。MicrosoftにNokiaを買うしか選択肢がなかった根本的理由は単純だ。NokiaのWindows Phoneプラットフォームの支配力が大きくなりすぎ、Microsoftはモバイル事業の制御を失うわけにはいかなかった。

なぜ、このような状況にいたったのか? MicrosoftはNokiaに、Windows Phoneを好きなように改造できる特権を与え、時と共にNokiaは最大のWindows Phoneメーカーになった。そして、事実上〈唯一の〉Windows Phoneハードウェア会社になった。これがMicrosoftのWindows Phoneを変更する権利に問題を生じさせる結果となった。もしNokiaが唯一意味のあるWindows Phone OEMであり、OSの変更もできるのであれば、Microsoftは自らのプラットフォームに対して殆ど制御が及ばないことになる。もちろん開発ツールは作っているが、ユーザー体験をコントロールすることができないなら、本当の意味で自社のモバイルOSをコントロールしていることにはならない。

これは受け入れ難かった。Microsoftは、今後も他のハードウェアメーカーがWindows Phone端末を作るのに協力したいと言っている。そしてHTCは居残るかもしれないが、Microsoftが自らの市場を独占している今、外部からの関心も限られてくるだろう。

Microsoftはそれに何十億ドルもの現金を注ぎ込み、はっきり言ってNokiaが損を出すのと共に赤字部門であり続ける可能性は高く、購入した資産がキャッシュフローをプラスにするとは考えにくい。しかし、これでMicrosoftは、制御を失うどころか、かつてない形で自らのプラットフォームを制御できるようになった。これはWindowsでは、Surfaceプロジェクトで支配を高めたにもかかわらず起きなかったことだ。

Microsoftはついこの間まで、自社のソフトウェア製品の供給経路として働くハードウェアメーカーに依存している会社だった。Surfaceは、そんな過去に対する初めての一撃だった。Nokiaの買収は、完全なる離脱だ。Windows Phoneは、もし過去の傾向が続けば、2013年第4四半期に1000万ユニットを出荷可能だろう。そして今それがMicrosoft端末になる(実際の契約は2014年にならないと締結されないが、ここでは実質的な話をしている)。

これでプラットフォーム戦争の定義が明確になった。Apple、Google、およびMicrosoftがモバイルソフトウェア、ハードウェアを内部で制御し、自社独自のサービスをモバイルユーザーに提供できる。モバイルは将来の鍵となるプラットフォームだ。このためテクノロジー業界の企業は2つの勢力に分類できる。自らのモバイルプラットフォームを持つ側と、他人のプラットフォームの上を歩かなくてはならない側だ。

ちなみにYahooは、後者もうまく行くはずであるという賭けだ。Microsoftの意見は違うようだ。

トップ画像提供:Vernon Chan

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi)


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。