マイクロソフトが顔認証スタートアップから撤退、海外の顔認証技術への投資を終了

Microsoft(マイクロソフト)は、顔認証を研究・開発するスタートアップの株式の一部保有を取り止めるという大きな方針転換の一環として、イスラエルの顔認証技術を開発する企業への投資を引き上げることにしたと先週発表した。

顔認証技術を開発するイスラエルの企業であるAnyVision(エニービジョン)から投資を引き上げるという決断は、AnyVisionの技術がイスラエル政府によるヨルダン側西岸地区住民の監視に使われているという報道を調査したうえでのことだ。

元米国検事総長のEric Holder(エリック・ホルダー)氏が、法律事務所Covington & Burling(コビントン&バーリング)のチームと行ったこの調査で、AnyVisionの技術は、ヨルダン側西岸とイスラエルの境界を超える人間の監視に使われたことを確認したが、「ヨルダン側西岸での大規模監視には使われていない」という。

マイクロソフトのベンチャー投資部門M12は、2019年6月にクローズした7400万ドル(約80億円)の資金調達ラウンドのひとつとして、AnyVivisonを支援していた。今もAnyVisionを支援している企業には、DFJ Growth、OG Technology Partners、LightSpeed Venture Partners、Robert Bosch GmbH、Qualcomm Ventures、Eldridgeなどがある。

同社は、2018年、顔認証技術への取り組みに関して最初に立場を明らかにし、Brad Smith(ブラッド・スミス)社長は米政府に対して顔認証技術の明確な規制を求める声明を発表している。

昨年末、同社が顔認証に対する独自の立場を示す声明を発表すると、規制と監視の強化を求めるスミス社長の声はさらに大きくなった。

スミス社長は以下のように書いている

私たちも他のハイテク企業も、顔認証技術に対処する安全措置を講じる必要があります。この技術は、私たちのお客様に重要な形で、また幅広く貢献でき、単に可能性を示すだけでなく、私たちのお客様が展開する数多くの顔認証技術の応用製品から、ますます刺激を受けるようになるものと確信しています。しかし、他の技術にも増して、この技術の開発と利用には慎重さが求められます。非常にたくさんの論議と調査の末、私たちは、この問題に対処するためのMicrosoftの6つの原則を打ち立てました。ここにその原則を公開し、2019年第1四半期の末までにこれを実践することを約束し、計画を示します。

同社のその6つの原則では、公正、透明、説明責任、無差別、通知と同意、合法的な監視を優先させることとなっている。批評家たちは、マイクロソフトがAnyVisionによる監視活動に加担していると非難した。イスラエル政府に協力して大規模な監視を行う企業を支援することは、自ら打ち立てた原則に反するというのだ。そして今、株式の一部取得では顔認証技術の使い方まで口出しするのは難しいと判断し、この技術を持つ海外企業への投資を凍結したというわけだ。

「マイクロソフトにとって危険性をはらむ技術を販売する企業の株式の一部保有は、その技術の利用に関して同社による一定程度の監視や管理が及ばないことが一般的です。内部監査の強化に伴って投資を続けるのが困難となりました」と、M12 Venturesのウェブサイトに掲示された声明で同社は述べている。マイクロソフトは、危険をはらむ技術の利用に関して同社の監視と管理が大きく及ぶ商業的関係に重点を移しました」。

画像クレジット:Getty Images

 

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。