米国時間3月2日、Microsoft(マイクロソフト)が、Excel(エクセル)の数式からヒントを得た新しいローコード言語、Power Fx(パワーFx)を発表した。Power Fxは、Microsoft自身のローコード環境であるPower Platform(パワー・プラットフォーム)上でカスタムロジックを書くための標準手段となる。一方同社はこの言語をオープンソース化して、他者も同様に実装を行うことで、この種のユースケースのためのデファクトスタンダードになることも期待している。
Power Platform自体はプロの開発者よりもビジネスユーザーをターゲットにしているため、始めるに際してビジネスユーザー層のExcelの既存の知識とExcelの数式への親和度を活用することは、賢いやり方のように思える。
「私たちはこの15年ほどの間に、長いプログラミング言語の歴史と、真に興味深い出来事を目の当たりにしてきました。それは、プログラミング言語が無償となり、オープンソースとなり、コミュニティ主導型になったということです」と私に語ったのは、MicrosoftのPower Platformエンジニアリング担当CVPであるCharles Lamanna(チャールズ・ラマンナ)氏だ。彼はまた、C#(シーシャープ)やTypeScript(タイプスクリプト)、あるいはGoogle(グーグル)のGo(ゴー)のような内部言語でさえも、そうしたものの良い例となっていることを指摘した。
「それは現在進行形のトレンドなのです。そして興味深い点は、それらはすべてプロの開発者やコーダーのためのものだということです。振り返って、ローコード / ノーコード空間を眺めてみた場合にも、プログラミング言語が存在しています。例えばExcelのプログラミング言語のようなものがありますし、すべてのローコード / ノーコードプラットフォームもそれぞれ独自のプログラミング言語を持っています。しかし、それはオープンではありませんし、ポータブルでもなく、それぞれのコミュニティに閉じたものです」とラマンナ氏は説明する。
Microsoftによると、今回発表された言語はVijay Mital(ビジャイ・ミタル)氏、Robin Abraham(ロビン・アブラハム)氏、Shon Katzenberger(ショーン・カッツェンバーガー)氏、Darryl Rubin(ダリル・ルービン)氏らが率いるチームによって開発されたのだという。チームはExcel以外にも,Pascal(パスカル)、Mathematica(マセマティカ),1980年代に開発された関数型プログラミング言語であるMiranda(ミランダ)などの言語やツールからもインスピレーションを得ている。
Microsoftは、Power Fxを自身のローコードプラットフォームのすべてに導入する計画だが、コミュニティに焦点を当てていることから、Power Automate(パワー・オートメイト)やPower Virtual Agents(パワー・バーチャル・エージェント)などへの搭載がまず行われる予定だ。
しかし、チームは明らかにこの言語を他の場所でも採用して欲しいと考えている。ローコード開発者は、Power Apps Studio(パワー・アップス・スタジオ) のような製品の数式入力中にポップアップで表示されるのを目にすることになるだろう。しかし、より高度なユーザーは、Visual Studio Code(ビジュアル・スタジオ・コード)に移動して、より複雑なアプリケーションを構築するために使用することもできるようになる。
開発チームが指摘しているように、彼らは言語をただExcelのものに似せるだけではではなく、Excelのような振る舞いをさせることにも力を入れてきた、プログラム専門家ならREPLのようなものと言えば理解できるだろう。つまり数式は宣言的に書かれ、開発者がコードを更新すると同時に再計算が行われる。
最近のローコード / ノーコードツールの多くは、ユーザーがより洗練されたコードでアプリを拡張したり、ツールにコードベース全体をエクスポートさせたりするための脱出口を提供している。なぜなら結局のところ、こうしたツールたちには限界があるからだ。そうしたツールたちはデフォルトで幅広いシナリオをサポートするようになってはいるものの、どの企業も独自のやり方を持っているため、すべてのユースケースをカバーすることはできない。
「私たちは、おそらく開発者の大多数──私は『開発者』という言葉をPower Platformを使うコーダーとしてのビジネスユーザーを指しています──が、最後は何らかのかたちでこうした数式を書くことになると想像しています。基本的な想定として、Power Platformを使い始めた最初の日には、数式は書きませんよね?【略】そこで使われるのはマクロレコーダーだったりテンプレートです。Power Appsも同じです。純粋にビジュアルで、ドラッグ&ドロップを使い、数式は1つも書きません。でもPower Platformのすばらしい点は、これを使っていると2週目には、少しだけ洗練されたものを学んでいくことになるのです。そして少しずつ洗練された機能を使い始めることになります。そして、知らず知らずのうちに、さまざまな能力を身につけたPower Platformやローコード開発者のプロたちが手に入ることになるのです」。
カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Microsoft、ローコード、オープンソース、Microsoft Ignite 2021
画像クレジット:Stephen D Harper / Getty Images
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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)