メルカリ2019年6月期の最終赤字は137億円、米国とメルペイへの積極投資は続行

メルカリは8月8日、2019年6月期(2018年7月〜2019年6月)の日本基準による連結業績を発表した。売上高は516億8300万円(前年同期比44.5%増)だが、広告宣伝費の使用や人件費の増加などに伴い営業損益はマイナス121億4900万円となった。当期純損益はマイナス137億6400万円の赤字で、7月25日に発表した業績予想を踏襲する結果だ。前年同期の2018年6月期のマイナス70億4100万円からさらに約67億円の損失拡大となる。

2019年6月期の自己資本比率は31.1%と前年同期の2018年6月期は46.2%からは低下しているものの、経営が不安定になるほどの数字ではない。赤字の要因は、人材の積極採用、米国事業とメルペイへの投資。

一方、メルカリ単体で見ると好調を維持。売上高は462億5400万円で前年同期の334億2400万円よりも130億円ほど増加。営業利益は71億3500万円で前期の74億1100万円を下回っているが堅調だ。当期純利益については特別損失を計上したため50億46000万円の赤字となるが、自己資本比率は47.9%と安定している。

メルカリの山田進太郎会長は去年のIPOの際と同様に「メルカリは世界的なマーケットプレイスを目指す。短期的でなく中長期の成長のために、人、テクノロジー、海外に投資をしてきた」と話す。優秀な人材の確保を積極的に進めており、現在は40カ国の従業員が働いているという。

同氏によると、今後もテクノロジーへの投資を進め、競合他社との差別化を図るため、AIによる画像検索、問題あるコメントの検出といった機能を強化する考えだ。

海外事業については、昨年10億円超の累計赤字を出した英国から撤退し、米国に集中的に投資していく。現在、サービスの改善、マーケティングに取り組んでおり、「これからの1年間が勝負の年」と位置付ける。前述のように、将来的には米国での成功をフックにして世界的なマーケットプレイス目指すとのこと。

小泉文明社長は、米国事業はMAUで200万人を突破しており「日本に比べるとまだ小さいが、テレビCMなどでテストマーケティングを実施したことで知名度拡大につながり、軌道に乗ってきた」と話す。現在は、さらに知名度を上げるフェーズに入っており、月間GMV(Gross Merchandise Value、総流通総額)は100億ドル(1兆600億円)を目標とする。こんまりの影響で、現在米国では片付けブームになっていることも追い風のようだ。

また、Jリーグの鹿島アントラーズへの経営参画については、顧客層の拡大を挙げた。アントラーズのサポーターには男性でシニアも多く、メルカリのコアユーザーである30〜40代の女性とは異なる。こういった層にメルカリのブランドを認知させる狙いがあるようだ。そのほか、鹿島地域を実証エリアとしたビジネスの創出も考えているという。

CFOを務める長澤 啓氏は、「今季は専門線の高いAIなどのエンジニアを積極的に採用していく」とコメント。国内でのメルカリのMAUは順調に伸びておりGMVは5307億円(前年比プラス43.2%)、売上高は516億円(前年比プラス44.5%)と収益性は大きく改善している。ただし、メルカリで流通している商品はアパレルが多いため、夏場の流通高が伸びにくいとのこと。今年の場合5月上旬の10連休などはマイナスの影響が出たそうだ。

同社の株価は昨年6月の初値を下回る状況を続いているが、底固い国内事業の利益を米国事業やメルペイに突っ込むという積極的姿勢は今後も続いていく。ここ半年あまりで、不採算の国内事業の廃止や子会社の吸収、英国事業の撤退といった大胆な選択と集中を進めてきたメルカリ。米国事業は強力なライバルがしのぎを削っている状態で、山田会長が言うようにこの1年が踏ん張りどころだろう。来年にはさらなる選択と集中が必要になるのか、波に乗ってそれぞれの事業を拡大するのか注目したいところだ。

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TechCrunch Japan

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