AIが心に寄り添うメンタルケアアプリ「emol」(エモル。iOS版)を運営するemolは1月18日、「国内メンタルヘルステックカオスマップ 2021年版」を公開した。
emolは、国内メンタルヘルステックの傾向として、「コロナ禍におけるメンタルヘルスケアサービスへの需要の増加」「ニューノーマルにおける人々の行動の変化」の2点を挙げている。
emolによると、2020年版に比べ、一般向けサービスが増加かつ多様化が進んだという。この1年間で運用を終了したサービスもあったものの、特に「AI」「カウンセリング」「マインドフルネス」「CBD(CannaBiDiol。カンナビジオール)」の分野でサービスが多く立ち上がったとしている。
また、同カオスマップでは非医療領域のものが多数を占めているが、「ストレスと健康・全国調査2013-2015(世界精神保健日本調査セカンド)」によると心に悩みを抱えている中で専門機関に受診をしていない人は多く、気軽に利用できるサービスへの需要は高まっているとした。
世界精神保健調査(World Mental Health Surveys)は、世界保健機関(WHO)およびハーバード大学医学部が進める、世界28ヵ国のこころの健康についての疫学調査。2002年~2006年、日本において世界精神保健調査の一部となる世界精神保健日本調査(World Mental Health Japan Survey。ファースト)が実施され、この10年後の調査として世界精神保健日本調査セカンドが実施された。
人々の行動の変化としてemolは、コロナ禍においてオンラインシフトが進んだ影響から、メンタルヘルスケアの領域でも新たな体験が求められていることを予想。
従来は、医療機関への受診や対面でのカウンセリングなどオフラインでのメンタルヘルスケアのソリューションが主流となっていた。しかしオラクルによる調査では、78%の人がコロナ禍においてメンタルヘルスの悪影響を感じており、メンタルヘルスのサポートに関して人よりもロボットに頼りたいという回答は82%だったという。
オラクルは2020年10月8日、日本を含む11ヵ国(米国/英国/UAE/フランス/イタリア/ドイツ/インド/日本/中国/ブラジル/韓国)、1万2000人以上(日本での調査対象は1000人)の従業員、マネージャー、人事部門リーダー、経営幹部を対象とした調査結果を発表。
同調査では、コロナ禍によって職場でのストレス、不安、極度の疲労(燃え尽き症候群)が増加し、人々が人よりもロボットに支援を求めたいと考えていることが判明したと明かされている。国別では、インド(92%)、中国(89%)、韓国(87%)、UAE(86%)、ブラジル(86%)、日本(82%)、米国(75%)、イタリア(71%)、ドイツ(70%)、英国(69%)、フランス(68%)との結果となった。
その理由として、ロボットは「ジャッジメント・フリー・ゾーン」(無批判区域、決めつけのない環境)を与えてくれる(34%)、問題を共有する上で先入観のない感情のはけ口を提供してくれる(30%)、医療に関する質問に迅速に回答してくれる(29%)が挙げられている。
emolは2020年12月25日、メンタルヘルスケアアプリ「emol」の正式版リリースとともに、アプリ上でのデジタルセラピーの提供を開始。同サービスでは、個人のメンタルヘルスに関連する課題を、カウンセラーや産業医などの「人」ではなく、「AI」と会話することで解決していく。
サポートAIの「ロク」とチャットで会話をすることで、CBT(認知行動療法)やACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)に基づいた簡易のカウンセリングやコーチング、雑談などを行える。感情記録や睡眠時間記録などのライフログ機能も搭載しており、メンタルセルフケアのトータルサポートを行う。
同社によると、一般的なマインドフルネスアプリではオーディオガイダンスのみのものが多く、実施者の理解の促進が難しいという課題があるという。一方emolでは、しっかりした実践のため、実施者が自分の悩みを明確にしていけるようAIが一緒に、また導きつつ進行するという。これにより、「なぜ?」「どうやって?」「これって(自分が実践)できているの?」という疑問を解消しながら、心のケア方法の理解を深めつつプログラムを体験できるとしている。
専門家との連携によるメンタルヘルスケア機能拡充、会話AIの継続的な改善はじめ、医療機関向けの展開も進めており、クリニックに通われている方がAIとの会話を通じてカウンセリングの質の向上や症状の改善に活用してもらう機能などの導入も予定。
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