世界最大級の自動車メーカーであるルノー・日産・三菱連合は、10億ドルのCVCファンドを立ち上げた。このCVCは、電化、自律運転システム、ネットワーク、人工知能など「ニュー・モビリティ」に関連する分野に投資する。
この 「Alliance Ventures」はすでに最初の投資を行っている。出資額は開示していないが、Ionic Materialsに出資し、エクイティーを取得した。Ionic Materialsは、バッテリー技術を開発する企業で、Bill Joy氏も投資している。
同ファンドは、スタートアップや「オープン・イノベーション・パートナーシップ」に対し、初年度で最大2億ドルを投資し、5年にかけ毎年同程度の投資行う予定だ。
これは戦略的投資であり、ポートフォリオ企業が開発する技術はアライアンスを形成する3つのブランドで活用できるようにする考えだ。また、同ファンドは起業家を養成し、企業のライフサイクルにおけるどの段階のスタートアップにでも投資するという。
最初の投資先がバッテリー技術を開発する企業であることは、直近において自動車メーカーがいかに電化に意識を向けているかを表している。初めてIonic Materialsが自社の技術を発表したとき、固体でコバルトを含まないバッテリー素材は「救世主バッテリー(Jesus Battery)」と一部で称された。3社連合は今回の投資で、この固体ポリマー電解質の製品化のため、マサチューセッツに拠点を置くIonic Materialsの研究開発を支援する。
ルノー・日産・三菱の約10億ドルという出資額は、CVCを持つ自動車メーカーとしては最大となる。 BMW iVenturesもGM Venturesも、ベンチャー・キャピタル運営の経歴が長いが、ファンド規模は彼らより小さい(BMWは、iVenturesの次の10年での投資総額を5億ドル以上に増やしている)。トヨタもロボティクスや人工知能の開発企業に投資するファンドを昨年立ち上げ、フォードもTechstarsと協力し、デトロイトでモビリティーに特化したアクセラレータープログラムを提供する予定だ。
3社連合と同じ規模でテクノロジー業界に資金を投じようとしているのは世界第2位の自動車メーカーであるVolkswagenだ。Volkswagenにはベンチャー投資の専門部署はないようだが、その代わり同社は直接、企業に投資を行ったり、他の自動車メーカーとジョイントベンチャーを立ち上げたりしている。
ルノー・日産・三菱は、他にも約85億ユーロを彼ら自身の研究開発のために投じているが、これは新しい企業への投資とはまた別だ。
今回立ち上げたCVCはFrançois Dossa氏が率いる。Dossa氏は、Nissan BrazilのCEOを務めた人物で、投資銀行での経験もある。
日産は、これまでにもスタートアップと協力したり、パートナーシップを組んだりしたことがある。彼らは失敗した電気自動車スタートアップBetter Placeの初期からの支援者でパートナーだった。Better Placeはクリーンテックバブルに乗じて85億ドルを調達したものの、2014年に倒産した。
この経験はルノーにとってショックだったかもしれないが、彼らもすでに立ち直っているようだ。ルノーは2022年までに純粋に電気で走る自動車を12種提供する計画だ。他にも40の自動運転車とロボティクスを活用した配車サービスも提供する予定でいる。
新ファンドのオフィスは、シリコンバレー、パリ、横浜、北京に開設する。これはアライアンスに資本を入れているメンバー企業のある場所と一致している。ルノーと日産は40%づつ、残りを三菱自動車がファンドに出資する。
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(翻訳:Nozomi Okuma / twitter)