ロシアのIT企業で働く約3万人が反戦の請願書に署名

専門職に従事するロシアの人々のウクライナ戦争反対の強い思いを示唆するように、2月24日の侵攻以来、ロシアのIT業界では、軍事侵略行為に抗議し平和を求める公開書簡が回覧され、自称ITワーカーから約3万筆の署名が集まった。

請願書のタイトルは「ウクライナ領土での軍事作戦に反対するロシアIT業界の代表からの公開書簡」だ。

名前と肩書きのリスト(一部の人は勤務先も明記)には、起業家、プロダクトマネージャー、顧客体験責任者、分析専門家、バックエンド開発者、プロダクトデザイナー、マーケティングスペシャリスト、デベロップエンジニア、iOSエンジニア、ゲーム開発者、システムアナリスト、IT採用担当者など、IT専門家が多数名を連ねている。

嘆願書のホストとして使用されているGoogleドキュメントは652ページにも及ぶ。

ロシア語で書かれた公開書簡の全文は、以下の通りだ(機械翻訳での訳)。

我々ロシアのIT産業の従業員は、ロシアの軍隊が開始したウクライナ領土での軍事行動に断固として反対する。

我々は、戦争勃発につながるあらゆる武力行使を不当とみなし、必然的に双方の人的犠牲をともなう可能性のある決定の中止を求める。我々の国は、常に互いに緊密な関係にある。そして今日、我々はウクライナの同僚、友人、親戚のことを心配している。今、ウクライナの街で起きていることを我々は懸念し、道徳的に胸塞がれる思いだ。

我々の仕事では、最高の製品、最高のサービスを作り、ロシアのITソリューションが誇れるよう誠実にすべてを行う。我々の国が戦争ではなく、平和と進歩に結びつくことを望む。

人間の利益となる技術の進歩や開発は、戦争、人々の命や健康への脅威がある状況では不可能であり、協力、視点の多様性、情報交換、オープンな対話がある状況でのみ可能だ。

国の指導者が我々の訴えに注意を払い、この状況を平和的に解決する方法を見つけ、人的被害を防ぐことを求める。

署名者として記載されているすべての名前が本物であるかどうかを確認することはできないが、この請願はNatalia Lukyanchikova(ナタリア・ルキャンチコワ)という女性によって始められたことをTechCrunchは確認し、自身は「IT専門家」だとルキャンチコワ氏は語っている。

同氏は、この書簡の最初の署名者でもあり、署名では求人サイトhh.ruの食品アナリストと称している。

TechCrunchがルキャンチコワ氏に電子メールで問い合わせたところ、同氏は先週、自身のFacebookページでこの平和の嘆願書を公開し、他のITワーカーにも署名と、この活動をメディアに取り上げてもらえるよう働きかけを呼びかけたと説明した。

また、TechCrunchは別のロシア人ITワーカーにも話を聞いたところ、彼らも請願書に署名し、勤務先のCEOを含むテック企業の関係者も多数署名したとのことだ。しかしこの人物は報復のリスクがあるために、行動への注意を集めることを回避すべく匿名を希望した。

ルキャンチコワ氏は、署名活動を開始するための最初のFacebook投稿で、次のように書いている(ロシア語からの翻訳)。「以下は、ITコミュニティからの公開書簡の文面です。これがうまくいくかどうかはわかりませんが、集団行動は時に役立ちます。これはまた、人々が自分たちは1人ではないことを理解する助けにもなります。今のところ、これは私が知る限り禁止されていない唯一の法的措置です。最初のコメントにあるリンクから署名できます」。

その後、Facebookページへの投稿では、署名の数が増えるにつれて、数日間の経過を追っている様子も見られた。

この署名活動は、ロシアによるウクライナ侵攻が進むにつれ、ロシアのIT業界の間で急速に盛り上がり、2月26日までに1万筆以上、2月27日には2万筆を超え、3万筆近くに達する前に署名活動が締め切られた。

この署名活動が影響を与える可能性があるかどうか尋ねると、ルキャンチコワ氏はこう語った。「私たちの声が届き、平和が取り戻されると信じたい」。

ロシア国内の一部のメディアは、この反戦の書簡について報じている。

例えば、テック系メディアvc.ruは現地時間2月26日にこれを取り上げ、その際、署名者は約1300人で、ロシアのテック大手YandexやVKontakteの従業員をはじめ、多くの異なる企業の従業員が含まれていると報じた。

また、教師、科学者、医師などロシア国内の他業界の代表者からも同様の反戦の書簡が出されていることも取り上げている。ただ、IT業界の書簡が最も多くの署名を集めたようだ。

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。