三菱重工業は12月13日、南フランスで建造中のトカマク型核融合実験炉「ITER」(イーター)で使われる「ダイバータ」の構成要素「外側垂直ターゲット」6基の製作を、日本国内での機器の調達活動を行う量子科学技術研究開発機構(QST)から受注したことを発表した。三菱重工が受注したのは、全54基のうち、初号機から6号機にあたる初回製作分。2024年度中に順次納品が予定されている。
ダイバータは、核融合反応で生成される炉心プラズマ内のヘリウム(He)、燃え残った燃料、不純物を排出するためのもの。プラズマを安定的に閉じ込めるための、トカマク型核融合炉の最重要部品のひとつだ。その主な構成要素は、外部垂直ターゲットの他に、内部垂直ターゲット、ドーム、カセットボディの4つ。内側垂直ターゲットとカセットボディは欧州が、ドームはロシアが製作を担当する。
ダイバータの熱負荷は、最大で20MW/m2に達するという。これは、小惑星探査機が大気圏突入の際に受ける熱負荷に匹敵し、スペースシャトルが受けるものの約30倍にものぼる。プラズマに直接接する外側垂直ターゲットは、熱負荷のほか粒子負荷にも晒されるため、複雑な形状をしており、高精度の加工技術が要求される。
三菱重工では、すでにITERのトロイダル磁場コイル(TFコイル)の全19基中5基の製作を受注し、これまでに4基を出荷している。そうした高難度製造物の量産化技術が評価されたものと同社では話している。
ITER計画は、核融合エネルギーの実現に向け、科学的・技術的な実証を行うことを目的とした大型国際プロジェクト。日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7極が参加しており、2035年の核融合燃焼による本格運転開始を目標に、ITERの建設をフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進めている。日本は、ダイバータやTFコイルをはじめ、ITERにおける主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、QSTがITER計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進している。